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東京都の「公園対策」から浮かぶホームレス像
2006/07/06

 ここは東京の新宿中央公園。ご覧のように(写真参照)、いたるところに工事用の柵やロープが張ってあり、公園利用者の立ち入りが制限されている。これはホームレス(注)がテントを張って、都民の公園利用を妨げないようにと、東京都が張り巡らしたものだ。しかし、これでは東京都が都民の公園利用を妨げているようにも見える。

 ホームレス対策の実情はどのようになっているのだろうか。



新宿中央公園の「じゃぶじゃぶ池」付近。工事用のオレンジ色の柵が池の周囲に張り廻らされている。



藤棚の下にも工事用の柵が設置されている。



ベンチの真ん中には「肘掛け」がついており、横になることができない。



かつてこの付近には、テントが並んでいた。手前の柵に付けられた看板を見てみると…(→)



公園内で新たにテントを張ることを禁止する文言が書かれている。公園対策を象徴する看板である。



ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(PDFファイル)」の40ページに掲載されている「ホームレス地域生活移行支援事業」の概略図。(クリックで拡大)



 東京都福祉保健局は04年7月、「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画」を策定している。この計画の策定に当たって、福祉保健局はホームレスの問題は大きく分けて2点ある、としている。

 第一はホームレス自身が、生活の基礎となる住居がなく、日々の食事を確保することも厳しい生活状況に置かれていること。第二に、ホームレスが公園等の公共施設を占拠していることにより、地域社会との軋轢(あつれき)を生んでいることだ、という。

 東京都はそれまでに、01年の自立支援事業や生活保護事業などの施策を行ってきた。自立支援事業では、緊急一時保護センターや自立支援センターなどの施設に、01年から年間600人の就労自立を支援した。生活保護事業では、定員6200人の保護施設や民間宿泊所から、年間1200人を一般居宅へ移行した。

 それでも公園のブルーテントは減らない。日雇い労働などで生活費は賄えているものの、居住費の負担は困難、という人たちがいるという。

 ホームレスの就労状況は、どうなのだろうか。

 ホームレスの支援団体の活動を通して、ホームレスの人たちにお話を伺ってみた。伺ったのは、今も公園に残る人や周辺の路上で暮らす人たちである。

 何人かのお話を総合すると、1つの典型例として以下のような姿が見えてきた。もちろん、これがすべてではない。ホームレス各人が置かれている状況は十人十色である。

 「収入の中心となるのは、工場労働などの日雇いの仕事である。1か月の収入が5万円程度では、食費は賄えてもアパートは借りられない。収入が月10万円程度になると、公園での生活を続けながら、月5万円程度の貯金もできる。

 しかし、アパートを借りるためには敷金・礼金などを含め、20〜30万円が必要となる。ところが日雇いの仕事は不安定で、月10万の収入が何ヵ月も続くことはない。仕事がなくなったとき、折角の貯金を切り崩して生活する羽目になる。」
 公園での生活から自力で抜け出すことは、難しいようだ。

 こうした人たちに向けての新たな取り組みが必要になった東京都は、04年度から「ホームレス地域生活移行支援事業」を実施している。

 支援事業では、都は公園でのテント生活者に、借上げアパートを1か月3千円という低家賃で2年間、提供する。その間に都の職員がアパートを訪問し、都立施設の清掃などの就労の機会を提供し、自立した生活へ向けての支援をするという。
 事業計画によると、事業は4つのステップを踏んで行うとされている。

 第1に、公園で都の職員が、ホームレスに面接・相談する。
 第2に、テントをたたんで簡易宿泊所と呼ばれる施設へ移行し、健康診断などを受ける。同時に公園に新たなテントが建てられることを防止する。
 第3に、借上げアパートに入居し、巡回による生活相談や就労対策を行う。
 第4に、一般生活への移行。この間に公園本来の機能を回復する、という段取りである。

 この事業は、都内の5つの大規模公園を中心に行われたため「公園対策」とも呼ばれている。新宿中央公園や戸山公園(以上、新宿区)、隅田川テラス(台東区、墨田区)などで面接・相談が行われ、多くのホームレスが簡易宿泊所へ移行していった。

 ホームレスが移行した後の公園は、新たにテントを張ることが禁じられ、冒頭に述べたような工事用ロープが張られた状態となった。

 事業の実施からまもなく2年。工事用ロープが張り巡らされた新宿中央公園に、ホームレスの姿はまばらである。彼ら(もうホームレスではない)の地域での新しい生活の成功を祈りたい。公園のロープも間もなく撤収され、公園は都民のもとに返って来ることだろう。


(注)
 本稿では、一般的に広まっている用語として「ホームレス」という表現を使用している。しかしこの表現は必ずしも適切とはいえない。

 「ホームレス」というのは、文字通り「家を持たない」という一つの状態を指しているのであり、「ホームレス」という立場の人間がいるわけではない。

 いわゆる「ホームレス」支援の団体では「野宿者」「路上生活者」「当事者」などの表現が使われている。「当事者」というのは支援者に対比する言葉で、かつ当事者も支援者も対等な仲間であるという意味合いが含まれている。

 たとえ住む家を持っていても老朽化していたり、構造上問題があったり、立ち退きを迫られているなど、安心して暮らせる状態ではない人もいる。

 また現在の就労状況では、より家賃の高い部屋に移ることができない、あるいは転居・再契約する費用を出せないなど、生活の改善を図れない状態から抜け出せずにいる人もいる。こうした人々も含めて「ホームレス」である、とする見方もある。

(森田鉄平)


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