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「タゲリ」が飛来する豊かな田園地帯守りたい
都市近郊の田園風景が残る神奈川県茅ヶ崎市の西久保地区は、開発を抑制すべき市街化調整区域だが、新湘南バイパス、さがみ縦貫道路、病院建設などと開発が進む。生産者の後継者不足、高齢化もあり、水田が減り、どんどん細切れになっている。
それでも、まだ、茅ヶ崎市の西部を流れる小出川の左岸に広がる水田に、秋になると頭に飾りの羽がある美しいタゲリ(体長約30cm)がシベリアから渡ってくる。茅ヶ崎周辺への飛来数は、「タゲリ一斉調査会」のデータによると、2000年には65羽が確認されており、以降、50羽(01年)、25羽(02年)、36羽(03年)、32羽(04年)、26羽(05年)、18羽(06年)となっている。
小西利章さん
水田の減少を食い止めタゲリの飛来地を守ろうと、自然保護グループ「三翠会」(森上義孝代表)は、2001年からこの地区で生産した米を農家から高く買い上げ「湘南タゲリ米」のブランドで販売している。「湘南タゲリ米」に協力、観光農園を中心に農業を営む小西利章さん(57歳)に、農家の立場としての考えを聞いた。
「耕作を続けられなくなった田んぼがあれば、借りて、米を作っていきたい」と小西さんは意欲を示す。現在も、西久保祭囃子保存会や地元農家の昔からの親睦会が、郷土芸能大会や文化祭などでの投げもちや餅つき用に、耕作できなくなった田んぼで、もち米を作っているという。「三翠会」でも同様に体験用の田んぼとして耕作している。田んぼが荒れると困るからだ。
灌漑用水は、高いところから低いところへ流れる。高い位置の田んぼが荒れると、草の種が自分の田んぼに流れてくる。低い位置の田んぼが耕作されなくなると、その田んぼの地面が高くなり、水はけが悪くなる。機械で作業するので10aも1ha(100a)も大して変わらず、既に投資した機械設備の減価償却ができる。
「体力的にきつくなった、田植え機・稲刈り機などが壊れたなどの理由で、水田の集約がゆっくり進むだろう」と見ている小西さん。「田んぼが駐車場や資材置き場などに農外転用されるのが怖い」という。しかし、小西さんは田んぼが売りに出ても買うつもりはない。10a(約1反・1,000m
2)の田んぼの値段は、数千万円とも言われている。しかし、10aで収穫される米の収入は約10万円で、ここから経費を差し引く。これでは、投資は無理というわけだ。ちなみに、小西さんの果樹園の面積は約40a。ブドウ・ナシ・カキの果樹園10a当りの収入は10倍以上だという。
コンバインの扱い方を次男・恭平さん(高校3年)に指導する小西さん。後方に、父の且治さん(右)と妻の節子さん=9月19日、茅ヶ崎市西久保で
湘南タゲリ米は5kgで3,500円(送料込み)と値段は安くはないが、なかなかの人気だそうだ。地元農家が積極的に関わり、「湘南タゲリ米」のブランドを大きく売り出してみてはどうかと聞いてみたところ、「いずれにしても、生活費を稼げるわけではない」というのが小西さんの返事。稲刈りが終わると、本業の果樹の堆肥づくりや剪定が待っているので「湘南タゲリ米」の受注・発送まで手が回らないという。
小出川沿いのこの地区の水田は、集中豪雨のときに遊水池の役割を果たす。5月には、田植え前の広い水田で凧揚げ大会が行われる。「できるだけ保全したいとは、思っているが……」と小西さん。「タゲリの好物のミミズの仲間“ぼった”が増えればいいな」と思いながら、タゲリが渡って来る時期に合わせて糠をまいて田をおこし、堆肥化の促進をしているという。
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