スイス製のチップボイラー。右壁の外部に設置されたサイロ(燃料庫)からチップが送られてくる。同公園が導入したボイラーは乾燥チップ対応型だが、生チップを燃やせるタイプもある(写真はいずれも3月4日、県立茅ヶ崎里山公園・パークセンターで、筆者撮影)
神奈川県茅ヶ崎市の県立茅ヶ崎里山公園に昨年3月完成したパークセンターの暖房は、チップボイラー(木質バイオマスボイラー)で行っている。公園内の樹林を管理するときに出る間伐材をチップにして燃やし、水を沸かす。その温水で温めた空気を室内に送るというシステムだ。燃焼制御技術により、チップの供給から室温管理まで自動運転で行われる。
木を伐採し薪や炭にして植林、という循環で維持されてきたのが里山林だ。しかし、家庭用燃料が石油やガスなどの化石燃料に変わったことから、里山林は放置され荒廃していったのだが、現代の技術を搭載したチップボイラーで、その循環を取り戻すことができる。
今回導入されたボイラーはスイス製で、出力110kw。本体価格は約700万円、工事費が約300万円。ボイラーに使用する5cm以下の木片を作るチッパーは国産で約220万円だ。
同程度の出力の重油ボイラーは250万円ぐらいだが、地元住民団体や自然保護・体育・福祉関係の市民団体、公園を管理する(財)神奈川県公園協会、茅ヶ崎市、県の行政機関が参加する「茅ヶ崎里山公園協議会」が、「里山の象徴としてバイオマスエネルギー設備の導入」を決定し、チップボイラーが設置された。神奈川県内では、秦野市の表丹沢野外活動センターに次いで2例目になる。
サイロに入れられたチップ。右の丸い模様の位置がボイラーへの供給口
今年度の燃料は、昨年度、生物多様性の保全のために伐採した外来種のニセアカシアだ。伐採した木材の太いものはベンチや橋などに利用し、枝葉は堆肥化して公園内の畑などで使う。公園が開催するクラフト教室の材料としても利用している。
昨年12月には、大きな滑り台がある「風の広場」に隣接する、うっそうと茂った樹林(約3,000m
2)を、ヤマザクラを生かす形で整備。スギやアカガシなどを伐採した。こちらは来年度以降の燃料になる。
チップボイラーは、地球温暖化防止にもつながる。チップを燃やすときに二酸化炭素が発生するが、樹木が生長するときに二酸化炭素を吸収するので、適切に循環させれば二酸化炭素は増加しない。持続可能なエネルギーだ。
同公園では、12月から3月までの土日・祝日の約37日間に1日5時間使用すると、約30m
3のチップ材が燃やされると想定していて、A重油に換算すると1,665lになる。チップボイラーを使うことで1年間に約4.6tの二酸化炭素を排出しないですむ計算になるという。いま話題の排出権取引の価格にすると、11,860円(1t=16ユーロとして計算)。
「水源の環境整備のために山の木を切っても使い道がなく、チップを作っても畑や公園などに敷くぐらいしか用途がありませんでした。処分に困るというのが現実でしたが、石油の代わりになるなら、国内で生産できる大切なエネルギーです」と、昨年3月まで県職員(林業職)だった茅ヶ崎里山公園園長の田口良三さん(61)は嬉しそうだ。
原油高でもある。チップボイラーの普及に期待したい。
管理された林。昨年は、ヤマザクラは4月上旬に咲き始め、満開は中旬だった。手前が「風の広場」
【
神奈川県立茅ヶ崎里山公園】(所在地 茅ヶ崎市芹沢1030)
茅ヶ崎市の緑豊かな北部丘陵に、2001年から一部開園。現在の開園面積は約19.7ha。総面積36.8haの全面開園は2014年の予定。樹林地の面積は約12.5ha。公園内にある「柳谷(やなぎやと)」の斜面林や畑地、谷戸低地を生かした整備が進められている。
【谷戸(やと)】
丘陵地の谷あいの低湿地。小川の源流域で、豊かな生態系を持つ。
【A重油】
重油とは、原油からガス、灯油、軽油などを分留した後の、黒く、粘度・比重が大きいもの。品質により、JIS(日本工業規格)などでA・B・Cの3種類に分けられている。A重油は工業・農業・漁業用の燃料として使われている。