北海道夕張市が財政再建団体になって1年になる。住民からは「医者がいなくなるのが心配」と懸念も聞こえるが、学校の生徒などは「自分たちが頑張っていこう」と再建に向けて前向きだ。財政破綻は市民の暮らしに何をもたらしたのか。
「本当に活気がないなあ」。夕張に来た私の率直な感想だ。通りを歩く人もまばらで、同行した夕張出身の友人は、若者を見かけると「夕張で若者を見かけるなんて、珍らしい」と言った。
道路の脇に、一時期マスコミで話題になった天井の崩落した夕張市民プールがあった。プールは、そのままの姿で放置されているように見えた。想像していた以上の破損具合に、少し衝撃を受けた。
天井の崩落した夕張市民プール
■図書館は縮小「郷土資料を眠らせたくない」
市営図書館は廃止され、今は「図書館コーナー」と呼ばれる保健福祉センターの一室で蔵書の一部が利用できるようになっている。廃止は市の財政再建団体化に伴い、老朽化による移転が予定されていた図書館の支出を抑えるための決定だった。
その時、偶然空いていた保健福祉センターの一室を借りうけ、本を移し、図書館コーナーとしたのが、図書館で働いていた夕張市教育委員会の平井由美子さん(47)だ。
「とにかく価値がある郷土資料を眠らせたくなかった。図書館廃止に関しては、全国から反対の声があがったし、支援も頂いた。また、市民によるボランティアなども増えました」と平井さんは話した。
利用者は、子供やお年寄りが多いという。それでも規模はもとの3分の1で、移せなかった残りの本は図書館に置いたままだ。
2年後に閉校になる夕張市立緑陽中学校
■学校祭の壁新聞に再建を目指す声
夕張市立緑陽中学校に出向いた。夕張の教育現場の現状について、橋本展晴教頭(以下:橋本)に話を聞いた。
――今後数年間で小学校・中学校の統廃合が進むが、財政破綻の影響か?
橋本:それについては様々な要因が複合している。財政破綻も大きな要因だが、少子化の流れもある。実際に破綻の前から閉鎖・統合が決まっていた中学校もある。しかし、マイナス一辺倒ではなく、この機会を学習・教育環境の整備のチャンスと捉えることも大事だ。
――教育の現場で働く者としては、統廃合をどう受け止める?
橋本:教職員としては、現在の夕張市の現状をしっかりと受け止めたい。その中で、子供たちに絶対に不幸な思いをさせないために、やれることをやっていきたい。いまは、全国から様々な支援を受けて、大変感謝している。
――具体的な統合への道筋は?
橋本:本校を含め、付近の3つの中学校が2年後の平成22年4月に統合し、小学校もその1年後の平成23年4月に統合する予定だ。校舎は新しく建てるのではなく、統合する中学校のうち1つを改修し、使用する。
――閉校した中学校・小学校の、その後の使用は?
橋本:住民の要望もあると思うが、未定だと思う。
――閉校に関して保護者等の意見は?
橋本:保護者の方に対しては、去年の10月に市教育委員会が説明会を開いた。バス停の設置などの具体的な要項に関しては、今後2年をかけて統合委員会が話し合っていく。
――生徒の反応は?
橋本:直接的にアンケートなどを採ったことはないが、おそらく寂しさや動揺を感じているかもしれない。しかし、生徒なりに考え、冷静に受け止めている。むしろ、学校祭で制作した壁新聞などからは、「夕張の再建のために、自分たちが頑張っていこう!」という前向きな意欲が感じられる。
■「第2の夕張」に反感
小・中学校の統廃合は何も夕張だけの話ではなく、周辺自治体でも頻繁に行われているそうだ。学校の統廃合は極端に否定的に見られがちだが、実際の現場の雰囲気は非常に明るかった。橋本教頭は「残りの2年間で、最高の教育パフォーマンスを発揮したい」という。また、現場の先生たちからも生き生きとした姿勢が伝わってきた。
ただ、生徒の中には、テレビの特集番組などで、「第2の夕張にならないために……」などの見出しやコメントを見聞きすると、反感を抱く子もいるそうだ。彼らは彼らなりに、夕張市民であることにプライドを持っているのだ。
「出来れば若い人に、夕張に残って欲しい」。中学校の付近で和菓子店を営んでいた藤井信江(61)さんはこう話す。夕張市が財政再建団体になってから藤井さんの生活に特に変化はないというが、「市から医者がいなくなるのが心配」など、医療・介護の面に不安を抱いている。また、夕張市の更なる人口流出に危機感を募らせているという。
夕張ファンタスティック国際映画祭で、上映を待つ列
■全国からの支援に光が
夕張には、市民プールの破損や図書館の廃止など、私たちが普段何気なく利用している公共施設が利用できなくなっているという現実がある。また、少子化も含め、市の人口流出も深刻な問題だろう。ある夕張在住の男性は「老人には、炭鉱年金があるが、若者には働く場所がない」という。
しかし、今回の取材で夕張の明るい面も見えた。まずは、全国からの支援が本当に多いこと。また、市に頼りきりであった市民が自ら積極的に動くようになったということだ。19〜23日まで開催されたゆうばり国際ファンタスティック映画祭にも、全国からの多くの支援があり、また多くの市民ボランティアが参加した。
夕張には、確かにマスコミで報じられる通りの面もある。しかし、市民の方はとても温かく、何事も前向きに生活しているように思えた。
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