コーネル・ウェスト氏の著書とCD
アフリカン・アメリカンの哲学者コーネル・ウェスト氏の来日を歓迎する「合意してないプロジェクト・ミーツ・コーネルウェスト(meets Dr. Cornel West)」が、5月11日沖縄県宜野湾市琉球大学付近のライブハウスG-Shelterで開かれた。コーネル・ウェスト氏は今回が初来日で、東京・広島・沖縄の3ヵ所をまわる予定だ。
市民団体「合意してないプロジェクト(日米軍再編成をめぐる日米合意に対する抗議行動を中心に活動)」が主催するこのパーティーには、特別ゲストに沖縄県を中心に活動するミュージシャン、カクマクシャカが招かれ、小さな会場には若者を中心に40名程が集まった。
熱弁するコーネル氏
コーネル・ウェスト氏は現在、プリンストン大学宗教学部兼アフリカ系アメリカ人研究センター教授をつとめ、人種問題を歴史学的分析を用いて論じ、映画や音楽、テレビやラジオの世界でも活躍、アメリカを代表するパブリック・スピーカーとしても知られている。著作には、全米で35万部のベストセラーになった、アメリカにおける黒人問題を経済史、政治史、宗教史、倫理学の視点から論じた代表作「人種の本質("Race Matters")」がある。
沖縄の集会では、まず初めにカクマクシャカのミニライブが行われた。キャップを斜めにかぶり、だぼだぼのズボンでラップ歌うカクマクシャカは1980年生まれのミュージシャン。2004年8月に弟が通う沖縄国際大学で起こった米軍ヘリ墜落事故から着想して作曲した「タミノドミノ」以来、社会に対するメッセージを積極的に歌っている。この日も「タミノドミノ」含む5曲を演奏した彼は「みんなの未来をはなせる場所が大切。思っていることを外に出して一緒に話そう。人種差別、戦争、基地に運ばれる危険な兵器、タブーの話をもっと話そうぜ」とラップ調で歌い、観客を沸かせた。
続いて、琉球大学准教授の阿部小涼氏が、1970年12月20日に起きた「コザ事件」の映像を紹介した。コザ事件とは、琉球政府統治下のコザ市(現在の沖縄県沖縄市)で交通事故を契機に発生した車両焼き討ち事件である。当時の沖縄は、米国民政府によるアメリカ合衆国の施政権下にあり、米軍人や軍属などが沖縄住民に対して行なった犯罪や事故に対して下される処罰が軽微であるとして、群衆の間に不満があったことがその背景にあるとされている。
阿部氏は、1971年2月7日付けの沖縄タイムスが沖縄の住民と黒人兵士の共通点について書いた記事を紹介した。そこには「人種差別」を受けてきた黒人兵士達が、不当な扱いに不満を持っていた沖縄住民を支援する様子や、人間として生きる権利を求め、共闘しようとする姿勢が描かれていた。
集会の最後に登場したコーネル・ウェスト氏は、通訳を交えながら20分ほど講演した。その中でコーネル氏は、アメリカ合州国に住む黒人を、ブルース・ピープルとして紹介し、その心の歌として「すべての声をあげよ(そして歌え)(Lift Every Voice [and Sing].)を紹介した。そして、沖縄の人々、アイヌの人々、在日のコリアンの人々、主流でありながら苦しんでいる人とともに闘っていこうとする日本人も、ブルース・ピープルだと語り、そのすべての人々が連帯し、不正に対し戦っていくことが大切だと話した。
終了後、コーネル氏を若者が取り囲む
今回のパーティーに参加した、広島で大学職員を勤める女性は「アフリカン・アメリカンの人たちと沖縄の人たちが協力する姿に、ヒューマニティを感じた。自分がアウトサイダーとして、何ができるのか、どうやって一緒に生きていけるのかを考えさせられた」と話した。また、琉球大学3年の下地寛尚さんは「社会問題をライブハウスで音楽と映像を使って考えることは、新鮮だった。コーネル氏は言葉が通じなくても思いやりがある人だと分かった。政治を第一線で研究している人たちは、情熱的な心を持っていて、この心に秘める思いをみんなが共有できたらと思った」と話した。
パーティーが終わった後も、コーネル氏を取り囲む学生で熱気が溢れ、参加者同士の交流がしばらく続いた。
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合意していないプロジェクト