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「新しい公共」を創造する協同労働の可能性を考える

長岡素彦2008/07/02
「新しい公共」を創造するにはどうすれば良いかを考えるシンポジウムが開かれた。もし生まれるとしたら、今まで官が見捨ててきた社会的な緊急の課題と向き合っているワーカーズコープの現場からだろう。
東京 公共 NA_テーマ2
「新しい公共」を創造する協同労働の可能性を考える | シンポジウム“「新しい公共」を創造する協同労働の可能性を考える”
シンポジウム“「新しい公共」を創造する協同労働の可能性を考える”
 6月28日、シンポジウム「「新しい公共」を創造する協同労働の可能性を考える」(主催 協同総合研究所)が東京の明治大学で行われた。

 協同総合研究所は「日本における労働者協同組合(ワーカーズコープ)運動の先駆をなした日本労働者協同組合連合会の呼びかけで、学者、研究者、協同組合の実践家や活動家らが、労働者協同組合の研究と普及を目的に創設したもの」(同サイトより)である。

 挨拶に続き、実践報告としてワーカーズコープ・協同組合から地域の協同労働事業報告がされた。

 まず、玉木信博氏(FUSSA地域福祉事業所所長)は、福生市の全児童館を指定管理者として運営しているが、単なるサービスではなく、利用者との協同、地域との協同、働くもの同士の協同によって、こどもたちへの支援や東京農工大学大学との「地域連携型コミュニティ支援事業のあり方」の調査も行っていると述べた。

 次に、上田留美子氏(もえぎ地域福祉事業所所長)は、文京区目白台総合センターを指定管理者として運営しているが、単に併設されている児童館や高齢者交流施設を管理するのではなく、総合センターの特色を生かした「多世代交流」を利用者を中心とする区民の実行委員とともに運営していると語った。

 北山和代氏(足立地域福祉事業所おひさまの家所長)は、子育てホームサポート事業という家庭支援サービスを足立区より委託されて行っているが、単なる親に都合のいいお手伝いではなく、こどもたち主体の支援を行っていると述べた。

 宮政治氏(文京緑化事業所所長)は、東京都よりホームレス就業支援事業、特別就労対策事業を委託されているが、就業支援・就労対策にとどまらない人としての自立支援を行っていると語った。

 コメントとして朝岡幸彦氏(東京農工大学大学院准教授)は、報告へのコメントと「地域連携型コミュニティ支援事業のあり方」の調査について述べ、菅原敏夫氏(財団法人地方自治総合研究所研究員)は指定管理制度の調査報告とその問題点を語り、西村裕生氏(全日本自治団体労働組合 自治研中央推進委員)は、自治労としての取り組みを述べた。

 このシンポジウムは「新しい公共を創る協同労働の可能性を考える」ことが大きな目的であったが、「社会的な緊急の課題としての子育てや高齢者の問題」が浮き彫りにされた。

 ワーカーズコープは運営している児童館や子育てホームサポートの現場では食事も得られない多くのこどもたちや虐待などの被害を被っているこどもたち、その親たちに向き合い、総合センターでは様々な困難を抱える高齢者と「多世代交流」を阻むものと向き合い、ホームレス就業支援事業では社会的に排除された人々と向き合いながら、委託された事業を行っている現状が語られた。

 ここで見えてきたのは、今まで官が見捨ててきた社会的な緊急の課題と現場で向き合い、利用者との協同、地域との協同、働くもの同士の協同によってその課題の解決を図ろうとして悪戦苦闘としているワーカーズコープの姿だ。

 既に、ヨーロッパを始めとする多くの国では、協同組合・ワーカーズコープが社会的な事業を行っている例が豊富で、イタリアでは社会福祉サービスや教育を提供するだけではなく、障がい者や社会的弱者が自ら働く主体となる社会協同組合も存在し、法によって制度化されている。

 しかしながら、日本では未だ法制化されず、前の国会に超党派で提出された「協同出資・協同経営で働く協同組合法」の制定は次の国会に持ち越された。

 現在「新しい公共」については、官に都合のいい定義から学者の定義まで、多様な定義がある。

 もし、「新しい公共」が創造されるとしたら、それは政府見解や学者の論議から生まれるのではなく、「社会的な緊急の課題としての多くの問題」に向き合いながら公共の事業を行っている現場からだろう。
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