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国有林伐採でナキウサギ生息地を破壊

松田まゆみ2008/10/12
ナキウサギやクマゲラなどの希少動物、絶滅危惧種の生息地でこのような伐採を行ったら生物多様性に影響を与えることは言うまでもない。生物多様性保全を唱える林野庁はただちに伐採計画を見直すとともに、自然保護団体の要請に耳を傾けて生物多様性の保全に努めるべきだろう。
日本 環境 NA_テーマ2
国有林伐採でナキウサギ生息地を破壊 | 貯食:岩の下に集められた貯食(シダ)。冬眠しないナキウサギは、秋に植物を集めて冬の間の食糧にする。
貯食:岩の下に集められた貯食(シダ)。冬眠しないナキウサギは、秋に植物を集めて冬の間の食糧にする。
 日本森林生態系保護ネットワーク(河野昭一代表)は、10月8日に北海道の十勝東部森林管理署管内の国有天然林の調査を行い、足寄町の天然林で作業道や土場の造成、伐採によってナキウサギの生息地が破壊されていることを確認した。

 生息地の破壊が確認されたのは、足寄町の喜登牛山のナキウサギ生息地。ここにはナキウサギの生息地となる岩塊地が広範囲に分布し、当日もナキウサギの鳴声があちこちで聞かれたたほか、岩の隙間に引き込まれた貯食も確認された。クマゲラの食痕もある。

 しかし、貯食の確認されたところから10mほどのところでは岩塊地をブルドーザーで崩され土場と作業道が造られていた。また別の場所では生息地を破壊して作業道がつくられ、周囲で伐採が行われていた。

 森林管理署は注意していればナキウサギの生息地であることは十分把握できたはずであり、施業にあたり、ナキウサギなどの希少動物の生息調査を行っていないことは明らかである。

 岩塊地という特殊な環境がなければ生息できないナキウサギにとって、生息地破壊や生息環境の悪化は個体数の減少に直結する。 

国有林伐採でナキウサギ生息地を破壊 | 作業道:ナキウサギの生息地を破壊してつくられた作業道。大きな石はナキウサギの生息地であったことを物語っている。
作業道:ナキウサギの生息地を破壊してつくられた作業道。大きな石はナキウサギの生息地であったことを物語っている。
 北海道では天然林での施業が広く行われているが、十勝東部森林管理署の管轄地域は北海道でもとりわけ天然林での伐採量が多いところであり、北海道の自然保護団体はこれまでも視察を行っていた。

 足寄町にはナキウサギ生息地が点在しており、ナキウサギが好んで生息する風穴地も多数存在することが知られている。過去には伐採と林道の開削によって、きわめて特異で希少な風穴地が破壊されたのである。このような過ちを繰り返さないために、十勝自然保護協会は2006年8月22日に十勝東部森林管理署で伐採計画について説明を求めるとともに、ナキウサギ生息地や風穴地を破壊することのないよう口頭で申入れを行った経緯がある。

 同年の9月11日には、北海道の複数の自然保護団体などの連名で、北海道森林管理局と十勝東部森林管理署に対し生物多様性保全の観点から、伐採計画の見直し、絶滅危惧種・希少種の調査と保全、エゾマツの伐採の見直し、風穴地での伐採中止を求め、回答を要請した。

十勝東部森林管理署管内における伐採についての申入れ

 ところが、同森林管理署はこの申入れに対し「意見として受け止めるが、文書での回答はしない」と電話で伝えてきた。この対応に対し抗議と要望を行ったが、これにも回答はなかった。

十勝東部森林管理署の対応への抗議および要望
国有林伐採でナキウサギ生息地を破壊 | 破壊された風穴:過去に林道の開削と伐採によって破壊された風穴地。風穴地特有のミズゴケや地衣類が広範囲によって死滅し、貴重な生態系が破壊された。
破壊された風穴:過去に林道の開削と伐採によって破壊された風穴地。風穴地特有のミズゴケや地衣類が広範囲によって死滅し、貴重な生態系が破壊された。
 このような経緯から、十勝東部森林管理署は管轄地域に風穴が存在し、ナキウサギの生息地があることは十分に認識していたはずであるが、自然保護団体の要請を検討することなく調査もせずに施業を行って、ナキウサギ生息地を破壊したのである。

 北海道森林管理局は生物多様性検討委員会を設置している。しかし、実態は自然保護団体の要請を無視し、施業によってナキウサギの生息地を破壊しているのである。いったい何のために委員会を設置しているのだろうか。

 十勝東部森林管理署の平成16年から20年までの5ヵ年の伐採計画では、天然林で約43万立方mもの木材を収穫することになっている。針葉樹の場合、胸高直径(根本から1.3mの高さの直径)が36cm程度の木の材積がおよそ1立方mである。胸高直径36cmの木に換算し、43万本も伐採することになるのだ。この結果、毎年いたるところで作業道が造られて伐採が行われ、天然林が衰退しているのである。

 ナキウサギやクマゲラなどの希少動物、絶滅危惧種の生息地でこのような伐採を行ったら生物多様性に影響を与えることは言うまでもない。生物多様性保全を唱える林野庁はただちに伐採計画を見直すとともに、自然保護団体の要請に耳を傾けて生物多様性の保全に努めるべきだろう。
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