地元の碁盤店の倉庫に展示してある雛山は圧巻!(3月1日 宮崎県綾町にて筆者撮影)
宮崎県綾町は、「自然生態系農業」と呼ばれる独自の有機農業を町のブランドとして確立し、綾牛・綾豚・綾地鶏などは、関東・関西地区の百貨店などで、高級農産物として店頭に並べられている。
宮崎市から西へ約20km、宮崎県のほぼ中央に位置し、九州中央山地に連なる綾北川・綾南川に囲まれた地域には、わが国有数の照葉樹林帯が広がり、1982年に九州中央山地国定公園に指定された。
この綾町で、2月21日より「第9回綾雛山(ひなやま)まつり」(主催:綾町商工会女性部)が行われている。
この雛山は、江戸時代に始まったとされている。女性は昔より山の神とされ、山の神が住むにふさわしいものでお祝いをしてあげなければという住民の思いから、雛山がつくられたと言われている。
長女が生まれると親戚や近所の人たちが、粘土で土人形や木の枝で木製の人形などを作り、巨木や古木、奇岩、輝石を山や川で拾ってくる。土を盛って山を作り、山の神が住む風景を再現するのである。それが、雛山である。家々で雛山は違っているが、いずれも、長女のすこやかな成長と末永く幸せにとの願いが込められている。
地元の小学生がつくったかわいい手作りの雛人形たち(3月1日 宮崎県綾町にて筆者撮影)
この伝統ある桃の節句の行事を広く観光客に見てもらい、町の活性化を図るために、綾町商工会の女性部が立ち上がり、2001年から雛山まつりが始まった。第9回の今年は、町内の商店街に7か所、商店街以外の町内各地に11か所の雛山がつくられた。
1週間ぶりに晴れた3月1日、雛山まつりに出かけた。
日曜日ということもあり、雛山まつり会場は、県内外からの多くの見物客でにぎわっていた。綾町のメインストリートである中央通り商店街の店先に雛山が飾られ、店舗ごとに趣の違う雛山にシャッターを押す人も。
ある店先の雛壇には、ちょっと変わった雛人形が並んでいた。地元の小学2年生約70人の手作りの雛人形である。ずらっと並んだ雛人形は、どれもニコニコと笑い、「かわいいね」という声が聞かれた。案内板には「世界にひとつしかない雛人形です」と書かれていた。
18か所ある会場の中で、一番人気は、地元の碁盤店の倉庫に展示してある雛山である。毎年、園芸学部、環境造園学部などを有する南九州大学の庭園デザイン学研究室の学生も雛山づくりに参加している。今回は、2つのミニ雛山も展示されている。
山の神が住む風景が見事に再現された雛山で、もちろん、ドライフラワーなどの人工の花や木ではなく、山や川で拾ってきた本物の花や木などが飾られている。庭園づくりを学んでいる学生にとってこの雛山づくりは、格好の実践の場であろう。
南九州大学庭園デザイン学研究室の学生がつくった雛山(3月1日 宮崎県綾町にて筆者撮影)
「このような雛山を、初めて見ました。普通の雛壇飾りよりもいいですね」(50代女性)
「プラモデルのジオラマのようで、見ているだけで楽しくなりますね。あそこの会場の雛山はどんな形だろうと考えるだけも楽しいです」(30代男性)
「団地に住んでいるので雛飾りを置くスペースがないので、毎年、このお祭りに来ています」(30代女性)
会場ではスタンプラリーが行われていて、18会場のうち9会場でスタンプを押すと記念品がもらえるということもあり、見物客は次々と会場を回っていた。
イベント会場となっている公民館では、こども民謡や日本舞踊などが行われ、子ども達が日頃の練習の成果を披露していた。
最近では、少子高齢社会にあって、個人宅で雛山をつくることは減ってきたという。昔は、女の子が生まれたという情報が入ると、親戚や近所の人たちが手分けして材料を集めて雛山をつくっていた。ときには、よその地区の雛山の偵察に出掛け、飾り付けの参考にしていたようである。地区で雛山をつくることが、一つの楽しみでもあった。このころは、地域を挙げて子どもを育てていこうとする「地域力」が存在していた。
私が子どものころは、ちょっと悪いことをすると地域のおじさんから怒られたものだが、地域力が弱くなり、小うるさいおじさんがいなくなった現在、この祭りを通して、地域のつながりの大切さに気づかされた。
3月3日は、桃の節句。みなさんがお住まいの地域では、伝統的な桃の節句の行事がありますか。
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