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トヨタ系「ジェイテクト」で団交拒絶続発

酒井徹2009/03/27
ユニオンみえはジェイテクトに対して再度、団体交渉の申し入れを行なった。トヨタ自動車グループ・ジェイテクトにおいてはコンプライアンス(法令遵守)を徹底し、速やかに労組と団体交渉を行なって諸問題の早期解決を図ることが求められている。
愛知 雇用 NA_テーマ2
■ユニオンみえの団体交渉申し入れを拒絶
 トヨタ自動車グループの機械・自動車メーカーであるジェイテクト(旧豊田工機)が、直接雇用する「期間従業員」4名の雇用問題に関する労働組合の団体交渉申し入れを違法に拒絶したことに対し、三重県の個人加盟制労働組合・ユニオンみえ(三重一般労働組合)は25日、強く抗議して再度団体交渉の申し入れを行なった。ジェイテクトは現在、同じく東海地域の個人加盟制労働組合・管理職ユニオン東海や全トヨタ労働組合の団体交渉申し入れに対しても「団体交渉になじまない」などとして拒絶の姿勢を取っているという。また、筆者が運営委員長を務める名古屋ふれあいユニオンに対しても、かつてジェイテクトは期間従業員の雇用問題に関する団体交渉開催を引き延ばし、計4回の申し入れと本社前での抗議行動の末ようやく団体交渉が開催されたという過去がある。

■期間工の「雇い止め」は団体交渉の必要なし!?
 ジェイテクトは3月12日付のユニオンみえ宛「回答書」の中で、組合員の雇用継続を求めたユニオンみえの団体交渉申し入れに対し、本件は「適正な雇い止めである」ので「労使協議が必要な事項にはあたりません」との認識を示した後、「よって、今回の団体交渉開催はお受け致しません」と明確に団交拒絶を宣言した。

■「適正な雇い止め」なら団体交渉しなくていいのか
 「適正な雇い止め」であれば「労使協議が必要な事項にはあたらない」というジェイテクトの主張は、有期雇用の非正規雇用労働者を多数組織するコミュニティユニオンにとってまさに驚くべき見解である。我が国の労働組合法は第6条にて、「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けたものは、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する」とはっきりと定めている。

 さらに労働組合法は第7条にて、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉することを正当な理由が無くて拒む」ことを明確に禁じており、使用者側の団体交渉拒絶に対しては、労働組合側に労働委員会への不当労働行為救済申立などの権利を保障している(労働組合法第27条)。そして、「労働組合法第7条2号の趣旨に照らすと、義務的団交事項とは、団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇、当該団体と使用者との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」とされているのである(根岸病院事件平成19年7月31日東京高裁判決)。

■特異な主張を続けるジェイテクト
 ユニオンみえ組合員4名の雇用契約は、確かに有期労働契約ではあったが、あらかじめ契約を更新しない旨の明示がなされていたものなどではない。契約の「更新」・雇用の維持はジェイテクトの裁量によって行ない、あるいは行なわない事項とされており、ジェイテクトに「処分可能なもの」であるはずである。また、雇用継続の有無は組合員4名にとって重大な「労働条件その他の待遇」そのものであり、ユニオンみえとジェイテクトとの間の「義務的団交事項」であることには疑いの余地がない。「適正な雇い止め」であれば「労使協議が必要な事項にはあたらない」というジェイテクトの他に例をみない特異な主張は一体どのような根拠に基づくものなのだろうか。

■事実認識の違いは団交拒絶理由にならず
 ジェイテクト側はユニオンみえの「申入書記載内容には、事実認識に誤りがあり……主張は的をえて(原文ママ)おりません」と主張している。しかし、ユニオンみえの「事実認識に誤りがあ」るとジェイテクトが考えているのなら、正々堂々と団体交渉を開催し、その席上において鋭くユニオン側の誤りを突き、論破すればよいまでの話だ。ユニオン側は決して自らの事実認識を完全なものだとは考えていない。なるほどジェイテクトの指摘通り、組合員・Iさんだけは他の組合員と違って「雇用開始」が2007年9月となっていることは事実であるし、これを基準にするならば雇用期間が1年6ヶ月であることも事実である。Iさんだけは契約更新が5回であることも事実であろう。

 この点で、4人の組合員を十把一絡げに「貴社は過去、派遣会社から派遣されてきた上記(筆者注:4名の)組合員を2年前に直接雇用に切り替えました……契約書は3ヶ月間の契約で労働契約法にも抵触する『細切れ雇用』を7回も繰り返してきました」としたユニオンみえの申入書は正確性を欠くものであった。ユニオンみえはこの点で、誤りは誤りとして率直に認めている。しかし、この種の「事実認識」の「誤り」を理由に団体交渉拒絶が正当化されるとジェイテクトが考えているのなら、大間違いであると指摘しなければならない。

■法解釈や主張の違いは「事実認識の誤り」か
 また、ジェイテクト3月12日の「回答書」を読むと、ユニオン側との法解釈や主張の違いにすぎないものまでジェイテクトは一方的に「事実認識」の「誤」りとして片付けようとしていると思われる部分が散見される。

■期間工でも反復更新で「期間の定めなし」に
 3月6日の団体交渉申入書でユニオンみえが、組合員4人が「既に社員として期間の定めのない雇用に転化してい」ると主張したことについて、ジェイテクトは「法的根拠のない主張であると判断します」という一言で切り捨てている。しかし、期間の定めのある労働契約であっても、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められることがありうることは、例えばパートタイム労働法第8条の2に次のように記されていることからも明らかである。

 《期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むものとする。(パートタイム労働法第8条の2)》

■「法解釈の溝」は団体交渉で埋める努力を
 ユニオンみえの主張は決して「法的根拠のない主張」ではない。ジェイテクトがあくまで、組合員4名の労働契約が、「反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる」ものとはなっていないと考えるというのは、それは現時点でのジェイテクト側の法解釈でしかない。そしてこの「法解釈の溝」は、まずは労使が団体交渉のテーブルにつき、双方が主張や証拠を付き合わせあう真摯な話し合いの中でのみ埋める努力が可能なものではないのだろうか。

■立場の違いを踏まえてテーブルに着け
 ユニオンみえが、組合員4名に対するジェイテクトの「雇用契約終了」について、「これは解雇通告に他ならず、整理解雇の4要件を満たさない不当な解雇であ」るとしたことについて、ジェイテクトは「事実及び法的根拠のない主張である」としているが、これも「事実」というよりは「法解釈あるいは主張」の違いとみるべきだ。上記のようにユニオンみえとしては、組合員4名は社員として期間の定めのない雇用に転化していると考える以上、「雇用契約終了の予告通知」は解雇通知に他ならないと判断せざるをえないからである。現段階でジェイテクトが、ジェイテクトの立場としてこれをあくまで「雇用契約終了」であると主張すること自体は結構だ。あとは、双方の立場の違いを踏まえた上で団体交渉を行ない、その違いを埋め行く努力を尽くすしかない。この種の「主張の違い」・「法解釈の違い」を「事実認識」の「誤り」と一方的に断じるのは乱暴である。

■本当に「やむを得ない事由」があるのか
 なお、ジェイテクトは組合員4名の雇用契約を「更新しない理由」として、「期間員労働契約書4.5/事業縮小等経営上やむを得ない事由による」としているが、労働契約法では、「やむを得ない事由がある場合」とは、期間の定めのない労働者の解雇の際に必要とされる「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」、すなわち解雇4要件よりさらに厳しい要件であると解されている。

 ジェイテクトは、「本主張とは別に、当社としては、雇用継続の努力、および会社状況の説明を実施した」と主張するが、それは、解雇4要件よりも厳しい、「やむを得ない事由」であることの立証に充分なものであったのだろうか。また、仮にそれを労働者個々人に行ない得たのであれば、どうしてそれが労働組合に対しては行なえないのか。いわゆる「雇用契約終了」にあたって、全社的に希望退職の募集は行なったのか。役員はどの程度減らして報酬はどの程度カットしたのか。新規採用は完全に停止しているのか。配転や出向などの手段は試みたのか。労組側が会社側に当然質問するであろうこれらの事項をジェイテクトが当人たちにきちんと「説明」していないのであれば、本件「雇用契約終了」が本当に「事業縮小等経営上やむを得ない事由による」ことをジェイテクトは到底立証していないというべきである。

■細切れ雇用は労働契約法に反する
 さらに、ユニオンみえがジェイテクトの期間雇用契約を「労働契約法にも抵触する『細切れ雇用』」と主張したことについて、「これをもって、直ちに、労働契約法違反となるものではありません」とだけジェイテクトが主張しているのも、法解釈・主張の違いではあっても、ユニオン側の事実認識の誤りとは言い切れないと考えられる。労働契約法はその17条の2ではっきりと、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない」と謳っているのであり、ジェイテクトが「3ヶ月契約7回更新」を「労働契約法違反となるものではありません」と言いきるのであれば、ジェイテクトにはユニオンみえとの団体交渉において、この労働契約の「労働者を使用する目的」を説明する責務があると考えられる。また、労働基準法に基づく指針でも、実態にあわせた契約期間にするよう求めていることも付け加えたい。

■会社寮問題は労働問題だ!
 また、ユニオンみえ組合員・Iさんの会社寮に関する問題は、まさに3月6日の団交申し入れの議題の一つである。(3月6日団交申入書には「団交事項」について、本件アパート問題を含む「上記申し入れ事項について」とあるはずだ)。ジェイテクトはこれを一方的に、「本申入とは関係のない内容」である決めつけて回答を避けたのであるが、理解に苦しむ。会社寮に関する問題は、労働者の福利厚生に関わる重要な問題であり、言うまでもなく義務的団交事項である。(3月6日申し入れ時点において、Iさんはジェイテクト側主張においてもジェイテクト従業員の地位にあった)。

■生産調整で有給休暇を強制消化!
 またジェイテクトは、1月17日以降の休業について、有給休暇が強制的に消化させられている問題について、「当社として、労働基準法第39条による年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定を締結し、適法に実施しております」とのみ回答している。

■有給の計画的付与制度の趣旨とは何か
 しかしそもそも年次有給休暇の労使協定による計画的付与は、昭和63年、労働基準法の改正によって、「我が国における年次有給休暇の取得率が、完全取得が原則である欧米諸国と比べてきわめて低い水準にとどまっていることにかんがみ、年次有給休暇の取得率を向上させ、労働時間短縮を推進するためには、職場において、労働者が自己の業務を調整しながら、気がねなく年次有給休暇を取得できることとすることが有効であることから、労働者の個人的事由による取得のために一定の日数を留保しつつ、これを超える日数については、労使協定による計画的付与を認めることとしたものであ」る(行政通達「改正労働基準法の施行について」昭和63年1月1日 基発第1号)。

 この趣旨に鑑みれば、ジェイテクトの今回の処置は生産調整のための会社都合の休日に際し、年次有給休暇の労使協定による計画的付与の趣旨に反して脱法的にこの制度を流用したものと言わざるを得ない。少なくとも、ジェイテクトは労働者代表との労使協定の締結の際に、この年次有給休暇の計画的付与の趣旨説明と協議とを行なっているはずである。なぜそれと同じことがユニオンみえに対しては行なえないというのだろうか。ユニオンみえ組合員4名は期間従業員であったため、ジェイテクトが労使協定を締結した多数派正社員労組には参加したくともできない立場にあったのだ。にもかかわらずその労使協定がユニオンみえ組合員まで拘束するというのであれば、せめてユニオンみえに対しても団体交渉を開催し、趣旨説明を行なうというのが筋というものではないだろうか。ジェイテクトの団体交渉拒絶には一片の道理もないのである。

■血友病患者に創傷危険作業を強制
 さらにジェイテクトは、ユニオンみえ組合員・Tさんの就業作業問題についても団体交渉を拒否している。組合員・Tさんは血友病の患者であって血が止まりにくく、また血液製剤の薬害のためにヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し、免疫機能障害(AIDS)で2級障害者の認定を受けいる。検査等の創傷の可能性が低い作業には従事できるが、研磨作業等傷が生じる作業には不都合があると主治医から診断を受けている。ジェイテクトで面接を受けた際及び入社時の健康診断で、「巻き込まれや挟まれ等、創傷の可能性のある作業には従事できない」と申していたということですし、御社の産業医にも診断書を提出し、就業可能として採用されたという経緯があるそうだ。

■これは法律以前の人道問題
 にもかかわらずTさんは、2007年2月ごろから約半年間にわたり、ジェイテクトN0.44ラインで内輪・外輪の研磨機による研磨作業を指示され、研磨作業から外して欲しいと申し上げたにもかかわらず、所属する白組の上司である班長から業務命令で却下されたというのである。Tさんは、「ちゃんとやれるかと恐怖を感じましたが、細心の注意を払い、今まで何とか無事故で努めてまいりました。しかしながら、障害に対するジェイテクトの配慮の無さに憤りを感じており、ジェイテクトは、日本一の会社であるトヨタの子会社でありながら、このような障害者への配慮のない、危険な業務に従事させるのでしょうか」と訴えている。これは法律云々以前の人道問題ではないだろうか。

■「法律上適正」では済まされない
 ジェイテクトは本件について、「行政機関にも確認しており、T組合員について、そのような就業制限はなく、当社として、安全衛生関係法令等に基づき、適正に対応しております」とのみ回答しているが、ユニオンみえは「全く受け入れることができない」と反発している。「行政機関にも確認し……就業制限」が「な」ければ、血友病患者を失血死の恐怖の中で研磨作業に従事させてもかまわないというような姿勢は、およそ「人間尊重を基本に、明るく活力ある企業風土をつくる」とするジェイテクトの企業理念にふさわしいものとは思えない。

■違法でなければ話し合いにも応じないのか
 ジェイテクトは労働組合の団体交渉申し入れに対し、しきりに「法違反となるものではありません」、「法的根拠のない主張であると判断します」、「適法に実施しております」、「適正に対応しております」などと主張し、『だから問題はない』とでもいうかのような態度をとり続けている。しかしユニオンみえは労働組合であって法律屋ではない。「法的根拠」があるかないか、「適法に実施し」ているかどうかなど、労働組合にとっては本質的に言って二義的な問題にすぎない。

 労働組合は労働者の要求のあるところ、法的根拠があろうがなかろうが、職場の内外の働くものの団結を武器に使用者と団体交渉に臨むのだ。ひとたび労働者の間に賃上げの要求が巻き起こるならば、労働組合は賃上げ交渉に臨むだろう。『法的には』、使用者は最低賃金を払ってさえいれば何ら「違法」な部分などないのであるが、それでも使用者は労働組合との賃上げ交渉を拒むことはできず、誠実に対応しなければならない。「適法」であるから問題がないという態度は、労使交渉の性質を踏まえない居直りであると断じざるを得ない。

■労働組合は「法律最低限」を求める機関ではない
 労働組合は、労働者の要求を実現し、経営者の横暴を規制するための組織である。弁護士や行政機関などとは違い、「法律最低限」の履行を求める機関ではない。自らの組合に加盟する労働者の筋の通った要求については、法律上の根拠があろうとなかろうと、労組は堂々と、企業に、社会に要求を突きつけ、情理を尽くして闘うのである。もしジェイテクトに、その「法律最低限」すら守れていない部分があるのだとすれば、それは労働組合以前の問題である。労組などからの指摘を待つ前に、自ら襟を正してゆくのが筋というものではないだろうか。

■ジェイテクトは団結権に無理解
 また、「(組合員個々人には)会社状況の説明を実施した」、「組合員には提案済み」などとして団体交渉の必要無しとするジェイテクトには、労働者の団結権に関する基本的な理解が根本的に欠如しているとしか思えない。そもそもジェイテクトの正社員には、ジェイテクト労働組合などの立派な労働組合が存在する。このことは、世界のトヨタグループ企業における期間の定めのない(身分の安定した)正社員においてすら、労働組合を結成し、徒党を組んで集団でモノを申さなければ、使用者側と対等な形で労働条件を決定することは不可能であることを示している。

■労働者の労働条件は労組との話し合いで
 まして、立場の弱い非正規労働者が自らの雇用をまもり、使用者側と対等な交渉を行なうためには、労働者自身が使用者側と対抗できる力量を職場の内外で確立すること、すなわち、団結権・団体交渉権・団体行動権を持つ労働組合を組織し、職場内外の仲間とともに使用者側と対峙し、相手と対等な交渉力を築いた上で成果を勝ち取る以外にはない。だからこそ、特に立場の弱い非正規雇用労働者の労働条件は会社と労組との間での対等な交渉で決めねばならず、会社と個人との間での個別取引で決定させてはならないのである。
■ユニオン「争議、労働委員会申し立て辞さず」
 コミュニティユニオンは組合員に関する労使間の紛争を、労使の話し合いによって解決することを本分としている。それだけに、団体交渉開催の拒絶に対しては、不当労働行為の最たるものとして特に厳しい姿勢で臨んでいるのだ。ジェイテクトがあくまで団交拒否に終始するなら、ユニオンみえはその争議権を行使してジェイテクトの業務の正常な運営を阻害し、あるいは三重県労働委員会への不当労働行為救済申立をもって、ジェイテクトが団体交渉の席に着くことを強制せざるを得なくなってしまう。

■団体交渉の開催で諸問題の早期解決を
 ユニオンみえはジェイテクトに対して再度、団体交渉の申し入れを行なった。トヨタ自動車グループ・ジェイテクトにおいてはコンプライアンス(法令遵守)を徹底し、速やかに労組と団体交渉を行なって諸問題の早期解決を図ることが求められている。

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