トップ > 地域 > 二子玉川住民が再開発を意見交換
地域

二子玉川住民が再開発を意見交換

      東急の「営利」開発と住民の「快適」生活との衝突浮かび上がる

林田力2009/08/03
 東京都世田谷区の住民団体「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」による住民意見交換会が8月1日、玉川町会会館で開催された。

 協議会は2010年3月に事業認可が予定されている二子玉川東地区第1種市街地再開発事業(主に第2期工事)について周辺住民が自ら街づくりを考えて行政や事業者に提案することを目的として2009年7月に結成された。

 協議会では住民の意見を集めることを目的として住民意見交換会を3回開催する。1回目は7月29日に行われ、今回が2回目である。3回目は8月9日に開催される。曜日と時間帯を分けて開催することで、広汎な住民の意見を集約する。

二子玉川住民が再開発を意見交換 | 住民意見を整理した模造紙
住民意見を整理した模造紙
 この活動は早稲田大学卯月研究室(卯月盛夫教授)の協力により進められ、今回の意見交換会でも早稲田大学芸術学校の奥村玄氏らが出席した。奥村氏は「再開発は周辺住民に大きな影響を受けるが、これまで再開発計画に地権者以外の住民の意見が反映されることはほとんどなかった。協議会の試みは大きな挑戦であり、日本社会に求められていることでもある。皆さんの願いをお手伝いしたい」と挨拶した。意見集約にはKJ法を活用した。住民は再開発への意見をポストイットに記入する。それを模造紙に貼り付けることで整理していった。

 二子玉川東地区再開発事業は住環境を破壊するとして住民から反対運動が起き、再開発組合に対する事業差止訴訟や世田谷区に対する公金支出差止訴訟が裁判所に係属中であるが、第1期工事は進行中の状態である。一方で再開発地域の中央部に位置するII−a街区は具体化されていない。再開発地域の中心部分が具体化していないということ自体が再開発事業の無理を印象付けるが、そこに住民主導の計画を提言することが協議会の狙いである。

二子玉川住民が再開発を意見交換 | 「七月三〇日この道路封鎖」の看板が8月1日時点でも残っている道路
「七月三〇日この道路封鎖」の看板が8月1日時点でも残っている道路
 意見交換会の内容として注目すべきものを4点指摘する。

 第1に高層ビルへの嫌悪である。大規模地権者の東急電鉄及び東急不動産の基本計画ではII−a街区に31階建て(約137m)のオフィスビルを建設することになっている。これに対し、意見交換会では高層ビル不要論が噴出した。

 既に第1期工事での高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」建設で日照・眺望の妨げ、風害(ビル風)、電波障害などの被害が顕在化した。加えてビルの反射光により、変なところから変な時間帯に光が照射されるという想定外の被害も明らかになった。そのため、駅から離れた場所に盛り土で公園を造ることを止めて、II-a街区を公園にすればいいとの意見も出された。営利施設を建設しても、これからの経済情勢では採算は困難であり、建物を建てない方が経済面でも合理的と主張された。

 第2に住民への情報公開が不足する再開発事業への不信感である。I−b街区の商業棟は元々8階建てと説明されていた。それがいつの間にか16階建てとなり、階数が倍増してしまった。この変遷は東急電鉄・東急不動産の基本計画から確認できる。このような不誠実な説明が横行している状態に「おかしい」との声があがった。

 第3に住民無視で行われる建設工事である。二子玉川は町中が工事現場になり、工事現場の中を道路が通っているような感がある。工事の都合で道路が突然、通行止めになり、住民は毎週のようにルートを変えなくてはならない。夜間、自転車で走っていて通行止めのバーに衝突した人もいる。

 ここでは住民に事前に周知するという姿勢が施工会社や再開発組合に欠けていることが槍玉に挙げられた。工事担当者に意見を言った住民もいるが、工事の進行によって刻々と変わるから掲示板を出せないと開き直られたという。会場の玉川町会会館の道路も「7月30日この道路封鎖」の看板が8月1日時点でも残っており、紛らわしい状態である(写真参照)。

 この工事の問題は多くの住民が不満に思っており、1人が発言すると堰を切ったように発言が続いた。自分の感覚が過敏なのではなく、皆が我慢を強いられていると確認できたことは意見交換会の大きな成果である。

 第4に住民のバランス感覚の良さである。そもそも税金を投入する再開発で営利施設(ホテルやオフィスビル)を建設することに疑問が呈された。そのため、図書館などの公共施設が要望されたが、一方で「公共施設を入居した場合、税金で賃料を支払うのか」との意見も出された。

 他所の再開発事業では主要テナントの撤退の穴埋めとして公共施設を押し込むことで破綻を回避した例がある(NPO法人区画整理・再開発対策全国会議『区画整理・再開発の破綻』自治体研究社、2001年、98頁)。住民にとって図書館が歓迎できるとしても、区の財政や図書館整備計画と整合するかは検討しなければならない。再開発事業とは無関係に再開発地域外で図書館を建設することもでき、その方が安上がりということも考えられる。その意味で利便施設を求めるだけではなく、その維持コストにも目を配る意見が出たことは貴重である。

 意見交換会で浮かび上がったことは、大規模地権者の東急グループの営利目的の開発と住民の快適な生活の衝突である。現在の二子玉川は工事だらけで魅力的な町とはお世辞にも言えない。住民本意のまちづくりを進められるか、地域の力が試されている。


関連記事: 「これで良いのか二子玉川再開発」の集い開催
下のリストは、この記事をもとにJanJanのすべての記事の中から「連想検索」した結果10本を表示しています。
もっと見たい場合や、他のサイトでの検索結果もごらんになるには右のボタンをクリックしてください。