清水建設本社(東京・浜松町)
【スーパーゼネコンマンション 施工ミス3件】
11月以降、大手ゼネコン(総合建設業)、大手建築設計事務所、大手ディベロッパーなどが係るマンションで次々と施工ミスが判明している。
偽装でも、手抜きでもないだろうが、発覚しなければあとで大問題にもなりかねない。施工と設計・監理の現場が弛緩しているようだ。
1)清水建設ほかの共同企業体が千葉県市川市で施工中の超高層分譲マンション「ザ・タワーズ・ウエスト プレミアレジデンス」の鉄筋不足
建築主:特定建築者共同体(三井不動産レジデンシャル、野村不動産、清水建設)
設計者:日建設計/工事監理者:日建設計/施工者:共同企業体(清水建設ほか4社)
2)竹中工務店が東京都港区東麻布で施工中の超高層賃貸マンション「(仮称)東麻布1丁目プロジェクト」の鉄筋取り違え
建築主:アールインベストメント(三菱地所の特別目的会社)
設計者:都市コンサルタンツ アイ・ディー・シー、竹中工務店/工事監理者:不明/施工者:竹中工務店
3)竹中工務店が東京都世田谷区太子堂に施工中の分譲マンション「グランドヒルズ三軒茶屋B棟」のコンクリート強度間違え
建築主:住友不動産/設計者:竹中工務店/工事監理者:竹中工務店/施工者:竹中工務店
このうち、1)の超高層分譲マンション「ザ・タワーズ・ウエスト プレミアレジデンス」について考えてみたい。
【ザ・タワーズ・ウエスト プレミアレジデンス】
・
清水建設の超高層マンション、鉄筋不足 30階で工事停止 07/11/07 読売新聞
・
高層マンション、鉄筋128本不足で工事中断 07/11/07 朝日新聞
・
清水建設JV施工の超高層マンション、柱の鉄筋不足で工事が中断 07/11/09 Kenplatz ※JV:共同企業体
各紙記事を参考に概要をまとめる。
千葉県市川市のJR市川駅南口駅前の再開発地域に建設中の2棟のうち、西側の1棟「ザ・タワーズ・ウエスト プレミアレジデンス」。
高さ約160m、地下2階地上45階建て、延べ面積約8万6500m2の超高層マンション。
4〜44階が地権者住宅と分譲マンションで、住戸数573戸(うち販売戸数470戸)。住戸平均面積は約79m2、最多価格帯約5700万円。
05年8月に着工し、09年1月完成3月入居予定。既に完売しているが、問題が発覚後、約40戸の購入者が解約の意向を示している。
関係者
建築主(売主):特定建築者共同体(三井不動産レジデンシャル、野村不動産、清水建設)
※
特定建築者
施工者:共同企業体(清水建設、戸田建設、五洋建設、上條建設、京葉都市開発)
※
共同企業体制度
設計者:日建設計
工事監理者:日建設計
建築確認・検査、性能評価業務:財団法人・日本建築センター
設計・監理の契約関係
設計業務委託契約:市川市 対 日建設計
工事監理業務委託契約:特定建築者共同体 対 日建設計
【品確法「住宅性能表示制度」の検査で】
10月11日に日本建築センターが、品確法の「性能評価業務」の現場検査によって25階から30階までの柱310本のうち、64本の柱の主要な鉄筋が不足していることを発見し建築主3社に通報して、問題が表面化。現在、30階で工事停止中。
11月5日になって、特定建築者(三井不動産レジデンシャル、野村不動産、清水建設)は、再開発発注者の市川市に対し、「施工ミスによって鉄筋の量が設計図書で定めた量よりも少なくなったこと」などを報告。
11月7日、施工者でもある清水建設は同社のホームページで「鉄筋不足」を発表、遺憾の意を表した。市川市への報告書で、原因は「施工の担当者が設計図面との十分なチェックを怠った」などと説明。
なお、読売新聞の記事には、「……住宅の品質確保を目指す住宅性能表示制度による
任意の中間検査の対象になっており、……」とあるが、それは誤り。
「……住宅の品質確保を目指す住宅性能表示制度
(採用は任意)を利用しており、……」が正しい。
検査は性能評価機関がするもので任意ではない。不備だらけとはいえ、検査は国が定めた評価マニュアルに沿って行われる。
誤解しないでほしいのは、この施工ミスは「住宅性能表示制度の検査」をきっかけに判明したとはいえ、
「住宅性能表示制度の検査」だから発見できたわけではない。国交省と読売新聞はそうしたいらしいが、全く違う。しつこく指摘しておく。
建築確認・検査での中間検査も、性能表示制度による中間検査も、ともに
限定された回数と、限定された密度で行われる。
性能表示制度の中間検査の場合を、当該建築にあてはめてみよう。杭工事は施工報告書の書類検査のみ、現場の配筋検査は地下1階、地上8階、15階、22階、29階、36階、43階と飛びとびに行うだけだ。
そのなかで、今回は
29階の検査で“タマタマ”、“運良く” 見つかったというわけだ。
杭工事のほか、地下2階、1階〜7階、9階〜……と、目視検査していない階のほうが多い。
だからこそ、施工者の自主検査と監理者の目視検査の品質こそが重要なのだ。
建築主は検査機関の検査に過大に期待する傾向が強いが、大切なのは現場(施工者、工事監理者)の姿勢(技術者の良識と法令遵守)なのだ。
【設計事務所の行う正当な配筋検査とは 】
特定行政庁や検査機関がする中間検査とは違って、設計事務所が行う配筋検査は
普通、各階毎に目視と計測で行う。
サブコン(協力業者)と呼ばれる鉄筋工事業者が、設計図に基づいて鉄筋の施工図(加工図等)を作成する。それを元請けゼネコンの現場管理者がチェックする。さらに工事監理者が確認した後、施工にとりかかるというのが一般的な段取りだ。
施工者に所属する現場管理者は鉄筋工事が施工されている途中も適宜検査する。鉄筋の組み立て完了後の現場管理者による検査で問題がなければ、最後に工事監理者(設計事務所)が検査する。
この工事監理者による検査は、重要なポイントつまり柱やはりなどの主要な鉄筋(主筋)を中心に、鉄筋の間隔や定着具合などを目視し、計測しながら行う。
それが常識だと思っていたのだが(念のため周辺にも確認した)、日建設計の今回の?やり方は契約上そうではないというのだ。
【スーパーゼネコンの施工ミス 工事監理者(大手設計事務所)が見逃すワケ】
「建築確認」上の設計者、工事監理者である
日建設計は世界最大級の建築設計事務所として著名な組織だ。しかし、その契約は不可解だ。
日建設計は、施工者から提出された「自主品質管理記録」を書面検査(目視は抜き取り検査のみ)することでよしとする「工事監理委託契約」を建築主(特定建築者)と結んでいるという。
「書類を審査」するだけで、工事監理者の務めを果たせるのなら、こんなオイシイ仕事はない。
「設計業務委託契約」は市川市と結び、
「工事監理業務委託契約」は特定建築者共同体と締結している。その特定建築者共同体には施工者でもある清水建設も加わっているからこれも複雑だ。
当初、清水建設がこのミスについて「鉄筋業者側のミスに加え、施工担当者も十分なチェックを怠った」と説明しており、奥歯にものがはさまったように感じたのだが、こんな事情があったのだ。
ひょっとすると日建設計クラスの大手設計事務所の工事監理は、このやり方が普通なのだろうか。いや、事実そうらしいのだ。
それなら、
建築主(売主)は、日建設計の工事監理者としての“実態”ではなく、購入者向けに“ネームバリューを買った”ということだろうか?
消費者を欺くことにはならないのかと考えてしまうが、そうはならないのだろう。一流企業に法律上の抜かりはないはずだから。
ともかく、このようなものを工事監理と言えるのか。
建築士法第18条4項に反するのではないか、という声も強い。
タイトル中の「監理者が見逃すワケ」は、「監理者は現場を見ていなかった」と言うべきだろう。
【建築士法第18条4項】
(引用)「建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない」(引用終り)
「施工者から提出された『自主品質管理記録』が間違っているのだから、『工事が設計図書のとおりに実施されていないと認め』ることができないのは仕方がない」ということだろうか。でもそれは通らないだろう。
建築主はこの問題を機に、第三者検査を導入する意向というのだが、
どれほど無意味な「屋上屋を架せば」気が済むのだろうか。
これを『国交省型・屋上屋架方式』と名付けたい。
・
鉄筋不足マンション工事現場に第三者検査を導入へ、三井不動産レジデンシャル 2007/11/14
【読者のコメント】
当然だが、KenPlatzの記事に寄せられた読者からのコメントは厳しい(下記の紹介は、若干、内容を省略させていただいている)。
●いまだに、
監理者である日建設計の説明がありません。このまま握りつぶす?のでしょうか。1130
● 私どもの設計事務所では、施工者が配筋チェックした後に、柱・壁なら返し型枠施工前に梁・スラブも含め各工程ごと全箇所全数チェックが標準監理検査です。大手有名設計事務所が地方の大きな公共プロジェクトを高い設計監理料で受注しているが、
現場の監督いわく「全然監理にきませんわ」。税金である監理費が無駄に使われている。1112
●いつから、
主筋の数すら数えない人間が監理者を名乗れる様になったのでしょうか。1112
●
契約に含まれない自主的な監理ってなんでしょうか?1113
●
「施工者の品質管理記録に基づく監理」とは書類に印を押すだけでいいのですね。
この工事で、日建設計が建築主と取り交わした「工事監理契約」はそんな程度のものなのですか?裏の怪しい構図を想像されてしまいますよ。契約上の責任はないとしましょう。では、
建築士法の工事監理者責任はどうなのですか?検査機関に問いただしてください。書類を見るだけの工事監理が法的に成立するのかを。
・・・これは、経営者が辞任するほどの大問題なのですよ!1113
●
鉄筋コンクリート建築で配筋検査をしない監理業務ってあるのですか?1113
● 書類のチェックで済む工事監理ってあるのですか。・・・木造住宅でも、(工務店の下請けの仕事で、設計者が)申請書の監理者欄に記名した(事実上の監理はしなくてよいとの約束で)ばかりに、建て主から工事費を上回る損害賠償をされたという、過去記事があったはずです。
消費者を欺き、大手だけがぬくぬくと生き延びて、弱小が淘汰されるのは許せません。1119
コメントは補修方法に対しても寄せられている。
●コンクリートをはつり、鉄筋を正規に入れて安全な物にするとのことですが、コンクリートの建物でこんな事できるのでしょうか、それでいいんでしょうか?
それだったら姉歯物件は、何とかできなかったのでしょうか。(購入した住民方はどのように思われたでしょうか)1112
・
コンクリート強度を間違えて計画変更、竹中工務店が施工する世田谷区のマンション 2007/12/10 Kenplatz
・
竹中が鉄筋取り違えた東麻布のマンション、8〜9階を再施工 2007/12/04 Kenplatz
・
マンション鉄筋、強度不足で一部解体へ 東京・港区 2007/11/20 朝日
【空白の時間に潜む?・・・/小嶋裁判が結審】
10月11日の表面化から、11月5日の市川市へ報告するまでの間、販売・契約、工事はストップしたのだろうか。
いま、
この25日間の空白に疑念を持つ向きもある。
さて、12月17日
ヒューザー元社長小嶋進氏の裁判が結審した。08年3月25日に判決がおりる。
この裁判で小嶋被告は、「グランドステージ藤沢」の耐震強度が不足していることを
知りながら販売したとして、詐欺罪で懲役5年を求刑されている。
イーホームズ社長の藤田東吾氏が、「『グランドステージ藤沢』の名称を小嶋氏に話した」として、それが検察側の重要な証拠になり小嶋氏は逮捕されたわけだが、藤田氏はそれを否定(小嶋裁判で証言)している。裁判官は果たして有罪にするのだろうか。
さて、市川の件も、
10月11日の表面化以降に販売・契約したものは一つもないのだろうか。
・
ヒューザー、小嶋被告の公判結審 毎日新聞 07/12/17
・
ヒューザー小嶋被告、無罪主張し結審 朝日新聞 07/12/17
・
検証・耐震偽装 悪いのは誰か?何か?(12)藤田東吾氏 小嶋進氏裁判で証人に
ヒューザー元社長小嶋進氏の裁判については、長く傍聴記録を掲載している「小太郎とカラスウリと」というブログがある。17日の結審の様子もわかる。
・
小太郎とカラスウリと
この件は、
辛口の建築雑誌>
「建築ジャーナル」が1月号(1月1日発売)
「2008年、建築設計者としての生き方」で追いかけているという。
関心をお持ちの方はお読みいただきたい。