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堀田力のズバリ直言(16)後期高齢者医療制度〜何が問題か(2)

大和修2008/05/24
一番の問題は制度の仕組みではない。社会保障費を毎年2,200億円削ろうという財政で、それが冷たさになって表れている。 今一番不満が噴き出しているのは保険料の高齢者の負担の仕方の問題だ。現役世代と同じようにまず均等負担が原則という考え方自体が違う。人間的な生活を維持するうえで払えないという人は、ほとんどゼロで良い。
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堀田力のズバリ直言(16)後期高齢者医療制度〜何が問題か(2) | 堀田力さん(5月15日、さわやか福祉財団で)
堀田力さん(5月15日、さわやか福祉財団で)
前回記事: 後期高齢者医療制度〜何が問題か(1)

 肝心の後期高齢者の負担のあり方について、議論も説明もきわめて不十分なままいきなり実施に移したのが大混乱の元だった。高齢者がどんどん増えるとき、社会保障費を大幅削減するひずみが冷たさとなって背景に表れている、と堀田さんは話を続ける。

―これまでの議論の過程はどうだったのか

 国民健康保険と被用者保険とは、これは分けるという点は、一緒にしようということは民主党なども言っていたし、私も理想はそれは一番良いと思うが、現実にはできない。そこはあまり議論されていない。

 それで、後期高齢者を別立てにして税金を入れると。これはもう2年前に国会で決まっているが、そのときは野党側もそこをそんなに文句を言っていない。

 野党側があのとき文句を言って強行採決されたのは、むしろ前期高齢者の65歳から75歳の層について、診療を受けたときの自己負担を2割にするのか1割にするのか。彼らは1割にするよう言ったのだが、そこでもめて強行採決になった。

 ▼議論不足、説明不足のまま実施

 今のこの負担の問題はあまり議論されていない、国会でも。そのまま法律ができて高齢者の負担分をどういうふうにするかというのは技術的な問題だというので、国会での議論ではなしに厚生労働省に任されて、厚生労働省があちこちの意見聞いたりして決まったのが結構ぎりぎりだった。そこのところがあまり周知徹底もされていない。70万枚ビラをつくったというが、その程度ではわからない。

 もっと後期高齢者にどういうふうに負担してもらうのか。そこのところをしっかり高齢者の中に入って、介護保険制度のときはそれをやったから、各市区町村が入っていって集会いっぱいやっていろんな意見を聞いて、やっていればわかったのだが。それを全然やっていないからまるっきりわかっていない。なんで、こういうことになったかという、そのいきさつがまるきりわからない。

 いきさつもわからずに、年金から引き落とされたら怒るに決まっている。あまりに乱暴だ。しかも基本の考え方も厳しすぎると私は思う。

 それも議論をしていればそういう意見が出て、まあ納得でき、しょうがないよねえ、あるいはそのくらいは負担しなくては、というところまできたと思う。が、そのためには2年、3年、4年かけて議論を提示して、入っていってやらないといけない。それもほとんどやらずにいきなりやってしまったので、そこがよくない。

―なぜ「75歳以上」なのか

 65歳からかなり医療に触れる、医療にかかる率が上がってきて、もう75歳を過ぎれば医者にかからない人はあまりいないだろう。医療費も断然高くなるから、やっぱり実態から見れば一番お金のかかる層である。そういう意味で保険料のあり方、税金の入れ方だ。どこを助けようか、ここを一番税金を入れて助けるべきだという区切り方としては、合理的だと思う。65歳以上だと、もうちょっと保険でがんばってよ、という感じだ。

 医療の仕方も、現役、あるいは65歳から74歳でもまだ病気になったら治して、ガンになってもそれを治して立ち直ってもらうということになるだろう。が、75歳過ぎるともちろんこれは一般的に多いかどうか類型としての話だが、ガンで手術して切り取っても体力が持たない。むしろガンと共存してもらいながら良い人生をなるべく安らかな人生を送っていただく。治療方法も目的が変わってくる。

 基本目的は一緒だろうが、若い頃だとガンマで切り取るか、放射線か、ともかくガンをつぶせるだろうが、75歳を過ぎるとガンをつぶして良いかどうか。そっちのマイナスの方がむしろ大きいという面が出てくるから、医療の考え方、仕方が変わってくる、類型的に。

 ▼社会保障費削減のひずみが冷たさになって表れている

 もちろん人によるが、制度をつくるときに類型化するには、これは65歳以上を高齢者というのと同じだ。俺は高齢者じゃないという人もいるし、俺は高齢者で年金もらいたいよという人もいる。それは人それぞれ個別にやりだしたら制度は成り立たない。ひとつの大きな類型としては75歳というのは合理的で、それで別に切り離すわけでも何でもない。

 そこにこっちの現役の保険料が4割入るわけだから。本当は全部保険料でやりたいのだが、税金かけて入れたいからそこの部分を税金を入れてもらうことにしたわけで、保険としてはつながっているわけだ。ましてやそこを冷たくするわけでは決してなくて、その特性に応じて一番良い医療体系にしたいというだけのことだけで、基本は良いと思う。

 高齢者の負担の部分のところが冷たい。なるべく取るような方向で気持ちが強いから配慮が非常に行き届いていない。医療の自己負担についても診療のあり方についても、もっとそこにお金を注いでも良い。

 だから一番の基本は制度の仕組みの問題ではなくて、お金を削ろうという財政だ。一番の基本は、社会保障費を毎年2,200億削るという。このどんどん高齢者がふえるときに、この一番基本のところがいろんなひずみになって現れてきている。それが冷たさになって現れてきている。そこが基本問題だと思う。

―「生存権」の侵害という意見があるが

 なんとか保険制度が成り立ち、医療制度が今の財政状態のなかで成り立つように考えられているわけだから、むしろ制度としては生存権を保障する方向でつくられている。ただそこに、お金の負担のしてもらい方、そして、税金を入れたり、診療報酬をつけたりする、そこのところが厳しくなっているから、お金の面でかかれない人、厳しい人が出てくるという話なので、お金の配分の話だ

―医療の質の面も問われているが

 今一番不満が噴き出しているのは保険料の高齢者の負担の仕方の問題だ。これが払えない人は厳し過ぎるのではないか。それはそれで正しいと思う。

 でも、一方で医療で定額制などについて、これは高齢者の切り捨てではないかと言っている。これも別に定額制というのは後期高齢者について入れたわけではなくて、現役世代についても定型的に、今年の風邪はだいたいこれだけのお金を入れれば治るとか、だいたい決まっている病気があるからそれについては定額制をずっと入れてきている。高齢者の場合には比較的慢性化した対応が必要だから、だいたいこの症状だったらこれぐらいの額でだいたい治められるだろうという部分が多くなって、かなり定額制が入っている。

 これはいろんな見方があるが、(もちろん)良いお医者さんはたくさんいる。(そういう)患者のためになるお医者さんは別として、そうでないお医者さんもいるから、これは病人が来たらどんどん薬出す、対策も引き延ばしていく。そういうことで医療費が非常に高くなってしまって、医療費を払う側の保険料がどんどん高くなっていくから、ここを何とか合理的にしたい。

 そうすると(たとえば)この歯はこういう状態だったらこれだけのお金があれば治せるはずだというので、そういうふうに言えるものは定額制にしていってるわけだ。そうすると、お医者さんとしてはそのお金の範囲内で早く治そうとするから、無駄なことをしなくなって良い治療が行われるようになるのではないか。だから定額制そのものは悪いものではない。

 ただこの定額の額を低くしすぎると、しなきゃいけないことができなくなってしまう。そうなると大問題だ。そこはしっかりそうならないように上限まで全部使ってしっかり治療できるような額を定めるという、そこらはしっかり見なくてはいけない。一般的に定額だから冷たい切り捨てだとかいうのは違うと思う。

―高齢者の負担のあり方をどう考えるか?

 この制度の基本問題は高齢者の負担のあり方の問題だ。それは具体的には75歳以上の後期高齢者の医療費のうち1割を高齢者が負担することにした。そのこと自体は当然だが、その1割を個々の高齢者に応じてどう負担するかを分けるときに、半分は個々人、均等に負担するのが当たり前だという考え方に立って調整しているが、そこが違うのではないか。

 ▼高齢者が能力に応じて負担する仕組みをいかにつくるか

 後期高齢者になると均等割りに負担するといっても、もう収入がない、資産もない。収入を得ようとしても、もう体力的に不可能だという人が圧倒的に多くなるわけだから、現役世代と同じように保険だからまず均等負担が原則という考え方を持ち込むこと自体が違うのではないか。

 若いころには払っているわけだから、その段階に来たら払える人には払ってもらう。しかし人間的な生活を維持するうえでも払えない、そういう人にはほとんどゼロに近い、それで良いのではないか。まず基本をそこから改めて、そしてその上で、払える能力に応じて1割分をうまく合理的に分担するように作り直すということが必要だと思う。

 そいうふうに、どのようにしてそうするかが問題で、そのことをもっともっと議論しなくてはいけない。制度をやめるとかやめないとかはあまりに荒っぽい議論だ。やめたらまた若い人が大変なことになる。そこまで議論を乱暴にしてはいけない。焦点は。高齢者がどのように能力に応じて負担するか、その仕組みをいかにつくるかだと思う。

※このシリーズは堀田さんへのインタビューの話をまとめる形でつくっている。
今回の分は5月15日に収録。映像制作はstudio LENTO(撮影・編集 鶴崎燃)
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