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コラム

韓国親日政権を反日に変える愚行―05年の「竹島の日」騒ぎを文科省が繰り返す

田中良太2008/05/24
文部科学省は竹島について、中学の新学習指導要領解説書に「我が国固有の領土」と明記する方針という。韓国による実効支配の現実は変わらないのに、これで何のメリットがあろう。「内向きの自己満足欲求」より韓国との友好の方が大切ではないか。05年に島根県の「竹島の日」制定で、「親日」の盧武鉉政権を「反日」に追いやった事態を想起させる。それに一切触れない新聞報道もまた、看板倒れではないか。
日本 外交 NA_テーマ2
 ◆指導要領解説書に「竹島領有」記述
 韓国・北朝鮮が領有権を主張、日本との争いになっている竹島について、文部科学省が中学校の新学習指導要領(12年度完全実施)の解説書に「我が国の固有の領土」と明記する方針を固めた。19日付朝刊で、どの新聞にも一斉にこうした記事が掲載されたのだから、文科省当局がかなりおおっぴらにリークしたのであろう。

 取材しているわけではないが、報道のされ方からみると「レクチャー」などと称する発表同然の行為があったと思われる。

 ◆文科省のレクチャーがあった?
 これまでの中学社会科の指導要領や解説書では、北方領土に触れた記述はあったが、日韓関係への配慮などから、竹島を巡る記述はなかった。このため、教科書会社の対応にばらつきがあった。

 竹島の記述については05年、中山成彬文科相(当時)が「指導要領に明記すべきだ」と国会で答弁。文科省が検討を重ねてきたが、新指導要領案公表が今年2月で、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領の就任時期などと重なったこともあり、指導要領に記述することは見送っていた……。

 どのメディアの報道にも共通して、こうした経過説明がついている。発表同然の行為がなければ、こうしたことにはならない。

 ◆韓国・李明博政権が反発
 韓国では李大統領がすぐに反応した。同日午前、柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商相に対し「早く日本に真相を確認し、事実なら是正を強く求めよ」と指示した。

 柳外相は重家俊範・駐韓日本大使を呼び、「事実なら、韓国固有の領土である独島(竹島の韓国名)の領有権を損ない、未来志向の我々の努力に逆行する」と、強い反発の意思を伝えた。重家大使は「方針を決めた事実はない」と述べた。この事実も20日付朝刊に、ソウル特派員電で掲載されている。

 いったい文科省のこうした行動に何のメリットがあるのだろうか。竹島が韓国の実効支配の下にあることは周知の事実であり、教科書で「日本の領土」と書いたところで、その事実を変えることにはつながらない。韓国大統領が日本の植民地支配にこだわっていた盧武鉉(ノ・ムヒョン)から、親日的な李明博にかわったばかりだというのに、良好な日韓関係を築く妨げになるばかりではないか。

 ◆大使にウソをつかせた!
 外務省が駐韓大使に「方針を決めた事実はない」と答えさせたのも大きな問題である。中学校新学習指導要領の解説書は、そのうちできるだろう。その内容を見ると、報道されたとおりの内容になっているはずだ。そのとき韓国側は「日本の大使がウソをついた」と受けとるに違いない。

 おそらく外務省は文科省に照会したはずだ。文科省が「方針を決めた事実はない」と回答したから、大使にそのまま言わせたのだろう。こういう場合は「それでは指導要領解説書の記述は、報道どおりにならないのか?」と畳みかけなければならない。文科省もさすがに「おそらく報道どおりになる」という程度の答はせざるを得ないだろう。こうしたやりとりを経て、せめて「いま検討中のようだ」程度の回答をさせるべきだろう。そうしなければ日本の大使は全員がウソつきの汚名を着ることになってしまう。

 日本の大使など、外務官僚のなれの果てにすぎないということは、日本人なら誰でも知っている。

 ◆内向き自己満足だけ求める
 国民の一部に、「北方四島も竹島も尖閣諸島も、みんな日本の領土」と信じている人たちがいるのは事実かもしれない。しかし、どの島も日本は実効支配していない。居住者がいるのは北方四島だけだが、現状ではロシア国籍の人しか住んでいない。こういう島について教科書で「日本領土」と書き、自己満足したいという欲求を持つ人たちもいる。

 しかし、その「内向きの自己満足欲求」と韓国との友好関係のどちらが大切なのか? 政府の一員なのにそんな判断もせず、独断で教科書の竹島記述を改めるようなことをやってしまう。

 ◆「竹島の日」で揺れた05年の日韓関係
 その文科省のレクチャーを受けただけで記事をつくってしまう「官庁記者」にも困ったものだ。竹島が出てくる記事だったら最低限、2005年の「竹島の日」騒ぎに触れなければ記事の体をなしていないと言うべきだろう。

 ご存じのとおり、この年3月16日、島根県議会が2月22日を「竹島の日」と定める条例を可決したのである。韓国政府は即日、駐韓日本公使を呼んで日本政府に抗議した。さらに翌17日、盧武鉉政権の新たな対日政策を発表した。盧政権の対日政策はそれまで「歴史問題を外交問題化しない」ことを基本に置いていたが、それを180度転換させ、歴史問題と領土問題を日本に正面から提起する姿勢を強調するものとなった。

 ◆盧武鉉政権、「歴史問題」姿勢を180度転換
 この新対日政策は、国家安保会議(NSC)常任委員会で確認され、委員長の鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相が声明として発表した。声明は、竹島問題や教科書検定をめぐる日本の動きに「隣国と共存する意思があるのか根本的に疑問」と提起し、竹島の領有権主張と植民地支配を正当化する動きに「断固対処する」との基本的立場を強調した。

 歴史問題の解決では、植民地支配の被害に対し日本が「真相究明、謝罪と反省」を行い、韓国が「許し、和解」する形が「世界史の普遍的方式」と指摘。具体的には慰安婦や被爆者、サハリン在住韓国人問題など「65年の日韓条約で協議対象から外れた事案」について、日本が人道的な解決策を示すよう強く促した。「日本は隣国の信頼獲得が国連など国際社会で指導的国家として尊敬される第一歩と認識すべきだ」とも述べ、日本の国連安保理常任理事国入りへの賛否の判断基準の一つとして、歴史問題の対応を注視する姿勢を示した。

 ◆「未来志向の日韓関係」目指していたのに……
 盧武鉉大統領は1946年8月生まれ、つまり日本の植民地支配を知らない世代である。儒教の倫理が生きている韓国では、選挙の投票のさいも「子は父に従う」のが当然とされ、「三金」(金大中、金泳三、金鍾泌氏)時代が30年以上も続くことになった。盧陣営は新しい「ネット選挙」を展開して若者の支持を獲得、奇跡の世代交代を実現させたと言われた。

 大統領就任後の初来日(03年6月)のさいには、天皇陛下の「お言葉」についても、植民地支配に触れて謝罪を求めることはなく、日本としては日韓関係を「未来志向」に一転させるチャンスだったのである。

 ◆植民地支配への一里塚を選ぶ
 そのチャンスをぶち壊し、逆転させてしまったのが、「竹島の日」制定だった。「竹島の日」とされた2月22日は、1905(明治38)年、島根県が竹島を「県土に編入する」と告示した日である。その背景には同年1月28日、当時の桂太郎内閣による「竹島と命名し、島根県隠岐島司の所管とする」という閣議決定がある。

 このころ日本は、日露戦争(04年2月−05年9月)の真っ最中だった。10年前の日清戦争(1894年8月−95年4月)と併せて、明治期の2つの戦争は、朝鮮半島の宗主権・領有権と深く関わるものだったことはよく知られている。日清戦争の勝利により日本は当時の朝鮮を属国扱いし、1910年には韓国併合を完成させてしまった。「竹島の日」=2月22日は、日本による韓国植民地化の一里塚といえる「記念日」だった。

 ◆「国は何もしてくれない」という漁業者の思い
 島根県議会が条例を制定した背景には、韓国に実効支配されているため、漁船が周辺水域で操業することができないという問題がある。その点について国に対応を求め続けて30年以上も経過しているのに、国は何もしてくれない……。漁業者を中心としたこの思いが、条例制定となったようだ。

 このときも、島根県の漁船に何かメリットがあったわけではない。日韓関係の悪化というデメリットがあっただけである。盧武鉉政権が一転して「反日」となっただけではない。姉妹都市交流や、高校、大学などの修学旅行交流もストップという、国民レベルの交流も止まってしまった。

 ◆文科省レクチャーのまま紙面化にびっくり
 発足のときは「親日」だった盧武鉉政権を「反日」に追い込んでしまったのは、「竹島の日」と小泉純一郎首相の靖国参拝であろう。小泉首相は05年11月訪韓したが、首脳会談はわずか30分で終わり、次回会談の約束もできなかった。

 文科省のレクチャーどおり原稿を書くにしても、竹島問題なら、この経過に触れることが最低限必要だろう。こんなことも書かずに、文科省の言い分だけで記事にしてしまう。デスクが原稿をチェックし、ゲラ刷りになった段階では編集局の幹部も見るはずなのに、誰からも注文がつかず、文科省レクチャーそのままの紙面ができあがってしまう。こんなことでは、新聞社の看板が泣くのではなかろうか。

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