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コラム

普天間爆音訴訟判決「現実の被害救済にならぬ」宜野湾市の山内繁雄・基地政策部長に聞く

比嘉康文2008/07/09
山内部長は言葉を選びながら慎重に答えていたが、判決で国に騒音を軽減する責任がないというのに、どうも納得がいかない様子。普天間飛行場は国が米軍に提供している施設である。だから、憲法で保障されている国民の生命・財産を守るため、宜野湾市は騒音被害や危険性の除去を国に要求しているのだ。
沖縄 軍事 NA_テーマ2
 米海兵隊基地・普天間飛行場の「10年以内の返還」の約束期限は2年前に過ぎたが、いっこうに閉鎖や返還が行われていない。これは、単に辺野古基地ができないからという問題だけではない。辺野古は住民が、移設反対決議をしたままの状態が続いている。一度は賛成したが、条件が受け入れられなかったので、反対決議がそのままになっているのだ。これは報道も指摘していない。

 住宅地の真ん中にある普天間飛行場から派生する騒音被害に耐えられず、周辺住民・392人が健康被害と夜間と早朝の飛行差止めと、合計4億5千5百40万円を求めた損害賠償訴訟。6月26日、河合芳光・裁判長(那覇地裁沖縄支部)は、睡眠妨害に伴う精神的被害を認め、国に総額1億4千6百70万円の支払いを命じた。

 判決は米軍ヘリコウターの墜落の危険性を認めながらも夜間・早朝の飛行差止めは認めなかったなど、理解に首をかしげざるを得ない文言もある。判決には、原告の住民側から「飛行差止めがなければ、こんごも騒音被害は続き、墜落の危険性におびえながら、生活をせざるを得ない」などとする批判が相次ぐ。

 7月1日に行われた原告団の幹事会では、一審判決は騒音被害を認めながらも、国にその騒音軽減の義務がないとしていることを問題視、福岡高裁那覇支部に控訴することを決めた。記者会見した弁護団長の新垣勉・弁護士は「国に軽減義務がないと言い切っているのは、今後大きな問題になる。どういう理屈なのか全く理解できない」(7月27日『沖縄タイムス』)と語った。

 市民の苦情を受け付け、普天間飛行場の危険性除去・閉鎖に奔走している宜野湾市の基地政策部の山内繁雄部長に今回の判決内容について聞いてみた。

普天間爆音訴訟判決「現実の被害救済にならぬ」宜野湾市の山内繁雄・基地政策部長に聞く | <center>山内繁雄部長・7月1日午前、宜野湾市役所の基地政策部の部長室で</center>
山内繁雄部長・7月1日午前、宜野湾市役所の基地政策部の部長室で
Q 判決は騒音被害を認めているが―。
A 当然のことでしょうね。日常的に騒音被害の訴えが役所には相次いできていますので、それを否定することは現実的にできないでしょう。もし、認めなければ、裁判に対する不信感が生まれ、法治国家としての体制が崩れかねないだろう。そう思いますよ。

Q 現在、どのような被害実態ですか。その実例は――。
A 平成19年度の苦情電話及び基地被害110番に寄せられたのは195件。実際にはもっと多いでしょう。騒音被害に悩み、怒っている市民ても苦情電話をしない方々が多いでしょうから、市民の声なき声はその数10倍にのぼると見ています。

Q 住民がこれまで訴えてきた被害の内容は――。
A 役所の近くの野嵩(のだけ)の方は、朝は輸送機が屋根すれすれに飛行訓練をして、いやというほど痛めつけられています。夜は上空でヘリコプターの訓練が行われ、これも屋根すれすれです。テレビの画像は乱れ、電話もできない。これではたまらないですよ。心臓まで押しつぶされそう。早く普天間基地を閉鎖、撤去させてください。そのほかにも深刻な訴えが多い。「低空飛行しているので、いつ墜落するのか不安で堪らず、携帯電話を持ち洋服を着たまま寝ています」というのもあった。とにかく、市民生活は乱され、とても深刻ですよ。

Q 判決は墜落の危険を認めていますが、飛行差止めはしなかった。矛盾を感じますが――。
A 新聞報道をみるかぎり、そですね。2004年に沖縄国際大学に米軍ヘリが実際に墜落しております。その他にも上空から部品などが落ちてきている。常に危険な状況にあることは確かですよ。その事実があるので、これも認めざるを得なかったでしょう。おっしゃるとおり、墜落の危険性があれば、当然その危険性を回避するため飛行を差し止めるべきだが、それをしなかった。そこが理解に苦しみます。

Q さらに、「国には騒音軽減の義務がない」とまで言っている。とてもおかしいと思うのですが――。
A その件については弁護団長の新垣勉・弁護士も問題視していますね。国が提供している施設ですから、当然その提供者である国には騒音軽減の義務があるものと思っています。だから、私たちは普天間飛行場の早期閉鎖、返還を要求しているのです。米軍ヘリは住宅上空を低空で飛ぶので、極めて危険な飛行場であることは来沖したラムズウエル国防長官さえ認めているのです。また米国の安全基準にもマッチしていない。だから即時閉鎖し、その撤去を国に要求しているのです。国に軽減義務がないというのは的確でないでしょう。

Q 国民の安全な日常生活を、裁判所も保障すべきだと思うのですが。
A だれでも同じ考えでしょう。アメリカでは国民の生活を脅かしては軍の訓練は絶対にできないです。第2回目の訪米で、そのことが分かりました。私たちが会った西海岸のある市長は、沖縄では住宅の上空を毎日、米軍ヘリが低空飛行していることを説明したら、びっくりしていました。どうして、こうした差別が起こるのでしょうか。そのことについて私たちはもっと真剣に考えるべきですよ。

Q ドイツの「ボン協定」と比較して、今回の判決は人種差別の感じもしますが―。
A 市民生活を大事にして、米軍の飛行制限が守られている「ボン協定」からみると、そうした感情も生まれるのも不思議ではないでしょう。「ボン協定」では、夜間から早朝までの飛行を禁止、祝日や葬儀など市民生活に支障がある場合には飛行を全面禁止しています。
 普天間飛行場の場合には、日米で協定しても守られた試しがない。いつでも、どこでも、どんな飛行形態でも、米軍には許されています。国は国民を守らず、米軍を守っているという市民の批判の声もよく聞きます。そうした国への不信感が助長すれば、コザ暴動のようなことが起こると指摘する者もいます。

普天間爆音訴訟判決「現実の被害救済にならぬ」宜野湾市の山内繁雄・基地政策部長に聞く | <center>基地からの騒音にたいする市民からの苦情件数。2年前の約2倍に増加している。</center>
基地からの騒音にたいする市民からの苦情件数。2年前の約2倍に増加している。
筆者の感想
 山内部長は言葉を選びながら慎重に答えていたが、判決で国に騒音を軽減する責任がないというのに、どうも納得がいかない様子。普天間飛行場は国が米軍に提供している施設である。だから、憲法で保障されている国民の生命・財産を守るため、宜野湾市は騒音被害や危険性の除去を国に要求しているのだ。国に責任がないというのは、私にはまったく理解できない。どこに訴えればよいのか、山内部長でなくても、そう思わざるを得ないだろう。基地政策の責任者という立場にいる者として、納得のいく判決ではなかったのだろう。

普天間爆音訴訟判決「現実の被害救済にならぬ」宜野湾市の山内繁雄・基地政策部長に聞く | <center>宜野湾市の中心部にある普天間飛行場。飛び立つ米軍ヘリの墜落の危険性は判決でも指摘されている</center>
宜野湾市の中心部にある普天間飛行場。飛び立つ米軍ヘリの墜落の危険性は判決でも指摘されている

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