書類を前に説明する大城敬人市議
米海兵隊普天間飛行場の代替基地建設が予定されている辺野古を抱える名護市では北部振興事業に関して数々の談合疑惑が持ち上がっている。だが、名護市議会(島袋権勇議長)は100条委員会も開くことができず、市民からは「議会としてのチェック機能がまったく働かない」と批判の声が出ている。そんな中で無会派の大城敬人(おおしろ よしたみ)市議を中心に2、3の市議が追及してきただけである。
北部振興事業費というのは、辺野古に新基地建設をする見返りとして毎年100億円を向こう10年間投入することになった事業費のこと。それは公共と非公共の二つに分かれており、双方に毎年50億づつが交付されている。その北部振興事業費で建設されるものはほとんどが“箱モノ”。沖縄県などの公共事業費として使われているのは一般予算でもできる港湾などの補修工事。しかも最初の5年間は毎年50億の予算が消化できないありさま。継続的な生産に結びつき、年と共にその地域が発展していく事業とはほど遠い。“箱モノ”は早くも冷房施設や内装設備の維持管理費で財政がパンクするのではないか、と心配の声が聞かれ始めている。
北部振興事業で談合疑惑が大きく問題になったのは『名護市 産業支援センター建設工事に関する談合疑惑』という冊子が出回ってからである。火付け役になったその怪文書は談合にかかわった有力企業の幹部が書いたと言われている。その後も、数々の談合疑惑が持ち上がっているが、市議会は公明党と自民党などの与党議員が多数を占め、いっこうに談合疑惑の解明に動こうとしない。市議会だけでなく、名護署も動いた形跡がなく「名護市は市民不在の状況だ」と指摘されている。談合疑惑を議会で追及し続けている大城市議に聞いた。
「貸し店舗」の看板が目立つ名護市中心街の建物
Q:名護市の官製談合疑惑がマスコミをにぎわせているが……。
大城敬人さん
北部振興事業費という金の大雨が降ったので、談合疑惑はとても多い。最初の北部食肉センターの工事は基礎の生コンが基準以上の分量使われたと業者たちの間で指摘されている。名護市産業支援センターについては怪文書が出回り、その内容は当事者でなければ知り得ないことが多い。それを報道した週刊誌が名護市内では売り切れ、市議の中にはグループで出版元に直接注文していた。
Q:具体的な事例を挙げて説明してもらいたい。
大城さん
名護市は業者を集めて入札をさせながら、その場で開封せず、あとで落札業者に連絡するというやり方で、まったく不透明なやり方でした。他の市町村にはないものですよ。今はなくなっておりますが……。全国オンブズマン協会では予算額の95%以上の落札率は談合入札の疑いが極めて濃いと指摘していますが、名護市の入札では同額やわずか1円差というものがとても多い。だから官製談合ではないかと指摘されている。
Q:なぜ、名護市議会は100条委員会が作れないのか。
大城さん
公明党と自民党系の与党議員が多く、市や業者側に顔が向いており、市民側に立っていないからですよ。それから市議は独自にもっと調査活動をすべきである。本土紙が業者と政治家との関係を報じていますが、それに対する反省、名護市の恥という感覚や反応がまったくない。書くだけかかせ、言うだけいわせ、という感じだ。それでは市民からの付託に応えているとはいえないし、民主主義のルールにも反する。心ある市民の中にはそう指摘する人もいる。議員がチェックしなければ、それだけ市民の不利益になり、将来市民の負担が増大することになる。
Q:コアラの会の疑惑は、地元の名護署ではなく、沖縄署と県警が業者を逮捕した。
大城さん
国頭村の補助金不正受給事件とまったく同じ構造ですが、なぜか名護市も名護署も今まで放置してきた。その書類には名護市長らの名前と印鑑が押され、出資した市民たちはその書類を信用し、公的な裏づけがあるものとして出資しています。そのことを市議会でも追及していきたい。被害者が名護署に告発したのですが、動いたのは名護署ではない。不思議な現象が起こっていますね。
大城さんが談合疑惑を追及している名護市議会を数回にわたって傍聴してきたが、他の市議たちの援護射撃がまったくない。まさに孤軍奮闘の感じがした。市民の傍聴も皆無に近く、市議会での市議の動きが直に市民に伝わってこない。民主主義を守り育てるには市民が議会をチェックすることが必要である。名護市には莫大な政府予算がつぎ込まれているが、名護十字路の中心街の商店はシャッターが下ろされているのが多い。しかも年々閉店するところが増えている。名護市の島袋吉和市長をはじめ市の幹部、与党議員たちは何を振興してきたのだろうか。
談合疑惑の火付け役となった怪文書が出た「名護市 産業支援センター」