韓国農村の風景(「イメージダ」より)
韓国の人口は半分が首都圏に集中している。ソウル人口が1040万人、京畿道の人口が1100万を超えるというので、過飽和状態である。朝鮮王朝時代以前から「ソウルに行けば成功する」といわれ中央集権が加速したせいだ。これは現代になって益々深刻化し、格差社会の原因ともなっている。
それなのに最近政府は、来年3月から首都圏での不動産や大企業の工場新増設に関する規制を緩和する方針を発表した。首都圏の規制緩和は、多くの人々がまたソウルに流入する動機となる恐れがある。工場が増設されることによって、青年らは仕事を求めて上京するだろうし、不動産規制を撤廃するのだから不動産投機も加熱するだろう。
韓国は不況が続く中で、今、世界的な金融危機にも巻き込まれ、地方の経済は悪化しつつある。しかも、都市部と農村の格差は深刻な問題になり、農村には老人しか見えないという疲弊した状態が続く。なのに現・李明博(イ・ミョンバク)政権は、均衡発展を図るどころか首都圏の優遇策を実施するという。
これでは、地方はさらに疎外され「富益富貧益貧」(富む者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる、との意味)の現状はより深刻になるのではないか。いわば格差社会の深刻化にほかならない。
光州近辺の長城白羊寺(「共有イメージ」より)
教育問題だけを見ても、如何に都市と地方の格差が如実なのかが分かる。高校卒業生の数が大学定員より不足する現象に、地方大学は新入生募集に死闘を繰り返している。しかし、首都圏にある大学は若い青年層の流入で、十分に定員が確保できるのみならず、優秀な学生を勧誘することもできる。
そして、地方の高校生はソウル所在の大学を卒業すれば就職に有利なので、死活をかけて上京しようとする。父兄らの考えはどうか。学歴社会といわれる韓国では父兄らにとって、一流大学に在学する息子や娘を持つことに勝る誇りはない。それで、子女教育はひたすら、ソウル所在の一流大学に行かせるために進めるばかりとなる。
大勢の子供が幼いときから私設学院(塾)に通い、英語などの語学教育を受けるのはそうした背景からである。しかし、それは公教育の不足、私的な教育費の増加による家計難にも結びつき、悪循環は繰返されている。にもかかわらず、どうしてハンナラ党政権は首都圏優遇政策を実施するのだろう。大統領が元・ソウル市長であるからだろうか。
弱り目に祟り目で、この頃は物価上昇により、特に地方に住む人々の消費心理は萎縮しているし、製造業の生産は急減、雇用情勢は悪化しつつある。しかし、庶民経済の活性化より大企業を優遇する方針や富者の優遇政策は、格差是正に反しもう古いのではないか。
光州近辺の潭陽金城山城(「カメレオン」より)
韓国銀行が14日発表した「最近の地方経済動向」の資料によると、ソウルを除いて地方のデパートや大型マーケットなどの商品販売額は、例年と比べて全般的に減少したという。販売額指数の増加率がマイナスを記録したのは1998年の「外換危機」(日本で言うアジア通貨危機)以後、初めてのことといい、これは地方経済の沈滞を如実に反映するものである。
建設不況と、経済活動への参加率低下によって、地方の新規就業者数は減り、昨年と比較できないほど多くの失業者が発生している点を考慮すると、まさに地方経済の危機ともいえよう。こうした状況だから、政府の首都圏規制緩和政策に非首都圏の自治体が反発するのは当然である。
むしろ今の時代は、過密人口をどう効率的に分散するか、不均等な発展を解消するため地方に首都圏と変わらないぐらい文化・教育・産業を振興するにはどうしたらよいのか、真剣に検討されて然るべきではないのか。李政権になってから、地方への移転を約束していた首都圏企業が計画を諦め、地方経済の未来に打撃を与えている現実を、私は注視せずにはいられない。
李政権が「首都圏規制の合理的改善」などの法案を作成し、一方的にその政策を推進しようとするので、地方移転を約束した企業も実施を諦めるのだ。「均等発展を考える」と言って、地方の問題を少しも解決せず、首都圏の規制ばかり緩和するというのはナンセンスである。首都圏規制を緩和することで首都圏と地方の共生を求める、という論理は成り立たない。地方は地方を生かすという政策によってのみ生き返るのである。
そもそも富裕層のための減税政策や、首都圏への経済力集中を加速化する現政権の失政はどこから来るのだろうか。韓国式の新リベラリズムは、両極化社会(格差社会)を助長する方向に進んでいる。あるハンナラ党の議員は、オバマの時代が開いたというのに、むしろマケインの敗北宣言に感嘆し、しきりに賛辞を惜しまなかった。ここに既得権に囚われている与党の独善があり、韓国政治の現在がある。
外交面では、米朝関係は進んでいるのに、北朝鮮への「軍事分界線を通じた陸路通行の制限、南北直通電話の断絶」という措置で、南北関係は益々疎遠になる。理由が分らない。我々が今、どこに立っているかを分らない政府の政策に翻弄される国民は淋しい。
庶民が幸福な時代はいつ到来するだろうか。ナミアミダブツ、ナミアミダブツ。