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コラム【大気圏外】

「日系人比率日本1」群馬県大泉町の情景

田中良太2009/04/07
 日系外国人の比率16%と全国1高い群馬県大泉町でブラジル人のために活動している女性の話をラジオで聞いた。01年の町長選で現職が落選したが、日系人誘致政策が批判されたためではないか。今回の不況で彼らの多くは帰国を余儀なくされ、日本での「待遇」を語るだろう。日本の国際評価にボディーブローのように効いてくるかも知れない。
群馬 労働 NA_テーマ2

 NHKラジオ第1放送の土曜午前の番組に「どよう楽市」がある。残間里江子(手近な人物データベースに「職業・肩書き=プロデューサー、キャンディッド・コミュニケーションズ会長」とある。 何、コレ?)と大沼ひろみ(NHKアナウンサー)が司会の、「女」が売りの番組だが、他のNHKラジオ番組と同様、惰性で毎週聴いている。

 4月4日、ゲストは、群馬県大泉町でブラジル人労働者のための活動を展開している高野祥子だった。高野はNPO法人「大泉国際教育技術普及センター」代表。

 ◆全人口の16%が日系人
 大泉町は2005年の国勢調査人口が41,466人。全国に例が少ない人口の多い町(市ではなく町制の自治体という意味)だ。外国人登録者が全人口の16%(08年4月1日現在)を占め、その比率の高さは全国1である。

 第2次世界大戦までは中島飛行機の大工場があり、戦後は三洋電機や富士重工業の工場となった。1990年の出入国管理法の改正によってブラジル、ペルーなどの日系人が日本国内で働けるようになった。人手不足解消のため、町が日系人を積極的に誘致したためだ。

 高野の活動は、ラテンリズム教室やブラジル人向けの日本語教室、ブラジルの護身術「カポエイラ」などの教室を開くなど、多岐にわたる。毎年秋には「ブラジル青少年フェスティバル」を開催している。町内外からブラジル人学校などの子どもたちが集まり、ダンスや劇などを発表し合う。「日本語が上手く話せず、コンプレックスを抱えているブラジル人の子どもたちが自信を取り戻す場」と位置づけた催しだという。

 自身、中国生まれで、終戦時の引き揚げ者。1958年、13歳の時に一家5人で東京からブラジル南部へ渡り、同じ移民と19歳で結婚。養鶏場の管理や魚の干物を作る仕事などで、ブラジル国内を転々とした。89年に出稼ぎで大泉町へ帰国。2年間の工場勤めなどを経て、その後、町内で翻訳業などを手がけている。

 「どよう楽市」のゲストとなったのは、「大泉国際教育技術普及センター」が国際交流基金の08年度「地球市民賞」に選ばれたからだろう。

 ◆真面目・勤勉な日系人が、日本では豹変?
 高野が言っていることは、いちいち「ごもっとも」と言うべきことである。<ブラジルでは、「日本へ行けば2カ月働くだけで家が建つほど稼げる」と言われている。出稼ぎができる日系人は羨ましがられて、来日する。しかしもちろん出費も多く、そんなわけにはいかない。カネを貯めることもできず、いま深刻な不況で、派遣より先に切られるのが外国人だから、深刻なんです。>

 <子どもの場合、日本語が上手くできないから、欲求不満に陥る。非行グループとつきあって、ワルになっていく子が多い。ブラジルの人にその話をすると、「どうしてあんなに良い子ばかりそろっている日系人が、そんなことになるの」とびっくりしている。確かにブラジルでは、日系人といえば真面目、勤勉で通っている。>

 <日本の学校は、ブラジル人と相性が悪い。ブラジルは落第がある。だから親も子も、分からなかったら落第して来年もう1回やればいい」と考えている。「やり直し」ができる世界だ。ところが日本では、分かっても分からなくても進級させてしまう。だから1度つまずいたら「やり直し」できない。これは厳しい制度だ>

 <日本は、国はお金持ちなんでしょうが、国民の暮らしに余裕があるとは思えない。日本の人たちが、心から楽しんで遊んでいる姿を見たことがない。いつもセカセカと動き、周囲の人に気を遣っている。日本に長くいるから、私もそうなっちゃったんですよネ。ときどき私も、立派な日本人になっていると思うんです>

 ◆01年町長選で、「日系人誘致」の現職落選
 高野の話はこのくらいにしよう。大泉町について新聞記事データベースをチェックすると、2001年4月の町長選で、日系人誘致を推進した町長が落選するという「事件」があったことがわかった。それまで2期8年間つとめた現職は高野和男で71歳。これに対して元町会議長(60歳)と、前町議、長谷川洋(51歳)の2人の会社役員がチャレンジした。結果は1番若い長谷川が当選で、現職は3位だった。

 この選挙投票日の2日後、01年4月24日付の読売群馬県版に<大泉町長選 候補者HPに推薦人の元JC理事長、外国人中傷HPをリンク>という奇妙な記事が載っている。本文は以下のとおりだ。

 <22日に投開票された大泉町長選の候補者が開設したインターネットのホームページ(HP)が、同町の人口の約14%を占める外国人に対する偏見とも取れる記述のあるHPにリンクされていたことが23日、分かった。このHPは、この候補者の推薦人の一人である元青年会議所理事長(53)が開設したもので、候補者は「私自身のHPとは別のもので、リンクを頼んだ覚えはない」と、困惑している。一方、元理事長は「強い表現ではあったが、選挙活動とは関係ない」と話している。このHPは、市民の指摘を受けて告示後に削除された。

 問題の記述は、元理事長が昨年10月ごろに自分のHPに「大泉町の現状」と題して“掲載”。「大泉町はブラジルの植民地」とした上で、同町の外国人の約8割を占めるブラジル人に対し「数の論理で横暴になってきた。騒音、ゴミ、交通ルール、マナーなど数えればきりがない」などとした。

 さらにドイツで外国人労働者の排斥活動を唱えるネオナチズムを例に挙げて「今後、外国人問題はこの町に大きなつけとして、課題を残すだろう」と主張。間接的に現町政を批判する内容になっている。>

 朝日の方は同年5月28日付群馬県版に<全人口の14%が外国人… 大泉町(ニュースぷりずむ)>というルポ風の記事を掲載している。

 本文の中で<「これまで通り外国人との共生を進めたい」。大泉町の研修用施設で25日開かれた、国際交流協会の総会。今月から町政を担うことになった長谷川洋町長(51)のあいさつに関係者は耳をそば立てた。

 選挙期間中、支持者が日系ブラジル人の増加を危険視するホームページ(HP)を作っていたことが問題になっていた。長谷川町長は「(HPは)私の主張とは全く異なる」と明言、総会後の懇親会では踊りが始まると日系人や協会メンバーの輪に加わった。協会のメンバーは言った。「日系外国人に気を使っている。この政策で失敗すれば町政が立ちゆかなくなることを自覚したのだろう」>

 <先月の町長選で敗れた高野和男前町長(71)は、2期8年間の外国人政策について「小さなトラブルはあったが、地元の一員として受け入れるための政策を全国に先駆けて取り組み、まずまずの成果をあげてきた」と評価する。

 一方で、支持者の中からも「日系人に対して手厚過ぎるのではないか」と指摘されたことを踏まえ、「こうした声が(町民の)底流にくすぶっていたのかも知れない」と振り返る。>

 こうした記述からすると、この町長選の本当の争点は「日系人誘致」政策の是非だったのではないか? 「日系人に手厚すぎる」と考える町民たちが「誘致」に踏み切った高野町長の3選を阻んだのであろう。

 今回の不況で、中南米などの日系人が多数、日本国内で失業し、国籍を持つ国への帰還を余儀なくされるのだろう。おそらく世界中でいちばん親日的であるはずの中南米の日系人たちに対して、日本で暮らしていた仲間が「日本ではずいぶんひどい目にあった。あげくはクビを切られ、国外追放同然で、帰国を余儀なくされた」という経験談を語るるわけだ。

 日本をどう評価するか? についての「国際世論」のようなものを考えると、ボディーブローのように効いてきて、マイナスの影響を与えるのだろう。

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