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前報「文芸社『協力出版』で著者に請求する制作費は正当か?」では、「協力出版」の制作費には利益が加算されており、水増し請求に当たるのではないかという疑惑について書きました。これは「協力出版」「共同出版」商法の本質的な問題です。しかし文芸社商法への疑惑はそれだけではありません。ここではさらなる疑惑についてお知らせし、この問題の奥深さを知っていただきたいと思います。なお、私の契約は2001年9月のことです。 1.「刊行審査委員会」の実態は? 文芸社は新聞広告で「お送りいただいた原稿は弊社の『刊行審査委員会』へ諮り、出版へ向けた厳正な審査を行なって結果をお知らせします」と書いています。 私が原稿(父の遺稿)を送った後に出版企画部のT氏から届いた手紙には、「ご著作は原稿全般を審査いたします社内の専任部署において、丁重に拝読させていただきました。作品に関しましては、芸術性や仕上がりの精度、面白さなどの観点から、出版刊行に向けた審議を行います。従って公共性、刊行の意義、社会的ニーズ、そして最も大きなファクターとして読者獲得の可能性を検討いたします」と説明しています。 また、私とのメールのやりとりでT氏は「審査委員会での評価は、面白度A・完成度Aでした(企画候補に選ばれたので、当然といえば当然です)。その他の項目もC以上でした。ランクはA〜Fまであり、一番高い評価がAです……」「審査委員の中には書店長もおり、その委員が一番絶賛しておりました」などと説明しています。 ですから、私は応募原稿のうち非常に優れている作品を「企画出版」(商業出版)に、次いで売れる見込みの高いすぐれた作品を「協力出版」に推奨し、それ以外には「自費出版」を勧めているとばかり思ったのです。ところが実態は大半の応募原稿に「協力出版」を推奨していたのです。これを知ったときにはまさに「騙された」と愕然としました。この事実を知っていたなら、絶対に契約などしなかったでしょう。 月刊誌「創」2003年7月号に、文芸社元スタッフの方が「私が関わった『文芸社』商法の内幕」という記事を書いています。この記事によると、著者への所見を書くアルバイトの「所見スタッフ」は低レベルの原稿でも絶賛した内容の所見を書き、それによって協力出版を推奨するということです。つまり、協力出版を推奨するにあたり審査をする必要などないわけです。審査が必要なのは一般の人の作品を企画出版に推奨する場合だけですが、それは「きわめて例外的といえる数名」にすぎないようです。 私の契約したころは年間およそ1600点も出版していたのですから、月平均で130点にもなります。応募者はさらに多いはずです。企画出版に推奨する数点を選ぶだけのために、莫大な量の原稿を書店長も含む社内の専門部署の人たちが、本当に項目ごとにA〜Fまでランク付けし、厳正に審査するのでしょうか? 2.「全国300の提携書店に配本」は真実か? 文芸社は新聞広告で「出版された本は必ず一定期間、書店の棚に並びます」としています。これは全国の300の提携書店に約1カ月間配本されるということなのです。 文芸社は協力出版の本を書店に配本するにあたり、提携書店のシステムをとっています。このシステムについては「創」2002年8月号の「危うし!自費出版ブームと『文芸社商法』の裏舞台」という記事で岩本太郎氏が説明しています。提携書店では文芸社専用のコーナーを確保し、およそ1カ月ごとに本を入れ替えていきます。この棚は文芸社側がテナント料を書店に支払って確保しているもので、売れ残った本は文芸社が買い取ることになっているのです。ひとつの書店の平均棚スペースは、渡辺氏の裁判(前報参照)の判決文によると、少ないときで48冊分、多いときで約59冊分とされています。 さて、文芸社編集部編集六課主任(当時)のK氏は、私にメールで「特約店は全国に500あり、その中の300店舗に本を置くことができます」と説明しました。K氏のいう特約店とは提携書店のことでしょう。月に130点の本が出版されたとして、これを300の書店に配本すると、全部で3万9000冊分の棚が必要になります。提携書店が500店で、文芸社の主張するように1店48冊から59冊置けるとすると、2万4000冊から2万9500冊の本しか置けません。つまり1点あたり185店から227店にしか置けないのです。 ところが裁判の判決文では、文芸社側の資料によって「平成12年10月以降平成14年12月までの提携書店数は1527店から1831店の間、棚スペースは7万5760冊から10万7880冊の間で推移しており……」と、なっています。私には提携書店は500店と説明したのに、裁判ではその3倍以上の提携書店があるというのです! 本当に1500店以上もの提携書店があったなら、なぜK氏は私に500店と説明したのでしょう? 3.見積り明細は存在するのか? 私は、文芸社と協力出版の契約をする前に、契約担当者である出版企画部のT氏に電話で見積書の内訳の提示を求めました。電話をして2時間ほどしてから、「お見積書内訳表」がファクス送信されてきました。この表には以下のような金額が示され、「本来、内訳はより細かくなるのですが、かなりの専門分野になりますので、おおまかな内訳をご用意致しました」という注釈がつけられています。つまり見積り明細をもとにこの内訳表を作成しているということです。なお、この見積りは四六版、並製帯付き、1000部、約278頁(1頁字数672字想定)として計算されたものです。 組版:195,962/用紙:104,647/製版:198,506/刷版:130,033/印刷:205,055/PP:10,000/製本:219,984/デザイン:354,177/編集費:760,352/小計:2,178,717/消費税:108,936/合計:2,287,653 一方、契約書に書かれている金額は、以下のようでした。 金額:2,171,429円/消費税:108,571円/合計:2,280,000円 契約を急かされていたので契約時には気がつきませんでしたが、後でよく見ると内訳表と契約書では小計(契約書の「金額」)・消費税・合計の額が一致していません。見積り明細から金額を写し取って書いているのであれば、内訳表と契約書の金額は同じになるはずですからおかしなことです。なおT氏が「お見積書内訳表」を作成したときは、文芸社保存用と著作権者保存用の2枚の契約書は私の手元にありましたので、T氏は契約書を見られない状況でこの内訳表を作成せざるを得ませんでした。 また、内訳表の金額は1円単位の端数がついた不自然なものです。この端数について文芸社の社員であるO氏は、渡辺氏の裁判の証人尋問で「1文字何円何銭とか、そういった計算のもとでやっていると思います」「……例えば、この組版のところで2円という単位がでていますけれども、まず実際のあれが1文字幾らというのを出すと、それがまあ」という証言をしています。そして、1円単位の端数のある実費に「まあるい利益」を加えているのだそうです。1文字何円何銭などと計算しているとは信じがたい話です。 しかも、私の本のページ数には大きな誤差(実際より多く見積もっていた)がありました。文字数をきちんと数えていたとは到底思えません。O氏は文芸社の出版企画部長の経歴がある人物ですから、見積りの算出方法について熟知しているはずなのに「……思います」というのも不自然です。デザイン費や編集費といったソフトの費用にまで1円単位の端数がついていますが、どういう賃金計算をするのでしょう? 前報に書きましたが、著者に請求する制作費には文芸社の利益が加算されています。利益を加算するならば、1冊ごとに細かい明細まで算出する必然性はありません。一般の自費出版の場合、ページ数に応じた価格表を作成しているのが普通です。私はT氏に見積書の明細の提示を何度も求めましたが、T氏は提示を拒否しました。また渡辺氏の裁判でもO氏は、実費は教えられないとして明らかにしていません。私は、見積書の明細など存在せず、内訳表は請求されてあわてて偽造した可能性があると考えています。 これ以外にもいくつもの疑問があります。そして真相は文芸社内部の者にしかわかりません。 ◇ ◇ ◇
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