トップ > 文化 > それでもあなたは契約しますか?
文化

それでもあなたは契約しますか?

松田まゆみ2005/10/11
「協力出版」や「共同出版」はしばしば「商業出版」(企画出版)と「自費出版」の中間型のように言われていますが…。
日本 本 NA_テーマ2
 「協力出版」や「共同出版」はしばしば「商業出版」(企画出版)と「自費出版」の中間型のように言われています。このために自費出版よりメリットが大きいとか、格が上だと思って契約する人も多いのでしょう。でも本当にそうなのでしょうか? 文芸社を例に検証してみました。

1.制作費は?
 文芸社の「協力出版」では本の制作費が著者(著作権者)の負担となっています。著者に請求する制作費には会社の利益が含まれていることはすでに報じました。これは自費出版と同じ請求方法です。協力出版では1000冊分の制作費を支払いますが、著者に贈呈されるのは100冊です。自費出版であれば、1000冊すべてが著者の所有物です。1000冊もいらないのであれば、制作費はもっと安くなります。

2.宣伝・販売の費用は文芸社負担ですが…
 すでに報じたように、文芸社は著者に請求する制作費に多額と推測される利益(私の場合は100万円以上か?)を加算しているのですから、宣伝・販売費用の一部はその利益で相殺されるでしょう。ですから実質的には宣伝・販売費のすべてを文芸社が負担しているのではなく、著者も負担しているといえます。

 もし宣伝・販売の費用が制作費に加算している利益より少ないのであれば、著者が宣伝・販売費すべてを負担し、さらに文芸社は利益を得ているといえます。どちらにしても、「制作費は著者が、宣伝・販売の費用は文芸社が負担」という契約をするのですから、とてもおかしなことです。制作費に加算している利益や宣伝・販売費を、文芸社は明らかにしようとしません。

 そもそも協力出版は文芸社が自社の本をつくって販売し、文芸社が利益を得る出版形態です。「売る価値がある」といって勧誘し、制作費を著者に負担してもらうなら、宣伝や販売の費用くらいは文芸社が負担するのは当然でしょう。

3.増刷は文芸社負担ですが…
 増刷の費用は文芸社が負担することになっています。増刷をするにあたっては「倉庫保管分と市場在庫がなくなり、300冊以上の注文が入ると増刷への手続きが開始されます」(文芸社からの手紙より)とのことです。つまり初版販売分の800冊すべてが売れないと増刷されません。その販売利益で増刷に必要な経費はまかなえるのではないでしょうか。そうであれば、文芸社は増刷の費用を実質的に負担しなくてもすみます。

4.販売による著者の収入は…
 協力出版では出版権(複製と領布の権利)が文芸社にありますから、著者が勝手に本を売ることはできません。基本的に商業出版の形態ですから、著者に印税を支払います。初版の印税はたったの2パーセントですから、仮に定価が1200円とした場合、販売分の800部の印税収入は1万9200円だけです。文芸社にとっては制作費に加算している利益でまかなえる額でしょう。すなわち著者が払った費用の一部を還元してもらうようなものです。

 増刷した場合、2刷で6パーセント、3刷で8パーセント(2001年9月時点)の印税がもらえます。印税がメリットになるのは、何千冊も増刷されてそこそこの印税収入が得られる場合だけでしょう。それでは増刷をする確率はどのくらいなのでしょうか。これについて質問したところ、「1割弱」という返事でした。

 しかし、これを裏付ける証拠はなにも示されていません。いくつかの書店で文芸社の本を探してみましたが、アマチュアの書いた本で増刷されているものはほとんど見つけることができませんでした。もしあなたが自費出版で1000冊の本を制作したらすべてが自分の所有物ですし、それを自分で売れば売上金は100パーセント自分の収入です。書店や出版社に委託して販売してもらえば、委託手数料を除いた売上金が自分の収益になります。

5.どれだけ売れるのか?
 文芸社は「協力出版」の最大のメリットは、「全国300に上る提携書店に御書を配本し、陳列することにあります」としています。この配本方法はすでに報じましたが、50冊から60冊程度はいる文芸社専用の棚を書店に確保してもらい、1ヶ月ごとに中身を入れ替えるもので、売れ残った本は文芸社が買い取ることになっています。その場合には実質的には売れたことになりません。

 いくら全国の書店に配本しても、読者に買ってもらわなければ意味がありません。文芸社の販売のシステムや販促活動によって、本当に著者が満足できるだけ本が売れるのであれば、メリットがあるといえるかもしれません。全国の書店に配本される1ヶ月間で実質的にどれだけ売れるか、それ以外に書店置きをしてもらえるのか、また契約期間中にどれだけの注文が入るかが問われます。

 この実売部数について文芸社は信頼できるデータを著者に教えてくれるでしょうか? 販売でメリットがあるとするのなら、個々の本について信頼できる実売部数を公表することが求められると思います。

 では、自費出版の場合は全国の書店に流通できないのでしょうか。自費出版業者の中には、編集やデザインに力をいれて上質の本をつくり、取次ぎを通して書店流通し、販売実績をあげている業者もあります。また、どこの書店でどれだけ売れたかを著者に知らせている業者もあります。自費出版の本の販売を出版社や書店に委託する場合は、著者が販売する本を出版社や書店に預け、売れた分の代金をもらうのですから、実売部数ははっきりしているといえます。

6.厳正な審査をして選ばれるから、自費出版より格が上?
 これについては、「文芸社商法のさらなる疑惑」で書きました。低レベルの原稿にまで「協力出版」を推奨しているのであれば、とても内容的に格が上とはいえないでしょう。
 それでもあなたは協力出版の契約をしますか?
◇ ◇ ◇
文芸社商法のさらなる疑惑
http://www.janjan.jp/culture/0510/0509303159/1.php
文芸社「協力出版」で著者に請求する制作費は正当か?
http://www.janjan.jp/culture/0509/0509262986/1.php

ご意見板

この記事についてのご意見をお送りください。
(書込みには会員IDとパスワードが必要です。)

メッセージはありません

下のリストは、この記事をもとにJanJanのすべての記事の中から「連想検索」した結果10本を表示しています。
もっと見たい場合や、他のサイトでの検索結果もごらんになるには右のボタンをクリックしてください。