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文化

「共同」の意味を履き違えた共同出版

松田まゆみ2005/10/20
大切なのは、誰に所有権のある本をつくるのか、ということです。なぜなら、本の所有者こそが出版の主体者であり、売上金を得ることになるからです。
日本 本 NA_テーマ2
 近年、ブームとなっている「協力出版」「共同出版」あるいは「共創出版」などと呼ばれる出版形態の、「協力」「共同」「共創」という言葉は、それだけでいかにも著者にメリットがあるように感じられ、この言葉に誘惑されて原稿を送る人も多いでしょう。このような出版形態では出版費用を分担することを「協力」とか「共同」といっているようですが、それでは出版費用を分担して誰の本をつくり、誰が儲けるのでしょうか?

 ここで大切なのは、誰に所有権のある本をつくるのか、ということです。なぜなら、本の所有者こそが出版の主体者であり、売上金を得ることになるからです。商業出版は、出版社の本をつくって売り、出版社が売上金を得ます。一方、自費出版では著者が自分の本をつくるのですから、売上金を得るのは著者です。

 それでは文芸社の協力出版は本の所有権が誰にあるのでしょうか? 文芸社の協力出版の契約書は、本の所有権が誰にあるのかがとてもわかりにくい契約書です。私は弁護士に契約書を見てもらったことがありますが、弁護士ですら本の所有権が誰にあるのか、かなり考えこんでいました。なぜ本の所有権がわかりにくいのかというと、商業出版の契約書をベースにして作られているからです(このことは文芸社自身が裁判のなかで明言しています)。商業出版は出版社の本をつくることが前提になっていますから、契約書に本の所有権が誰にあるのかなど書く必要がありません。そうした形式の契約書を協力出版に応用しているのに、「制作費は著者負担」となっているので自費出版のように感じられ、とても所有権がわかりにくくなっています。

 しかし契約書には著者贈呈は100部とか、印税を支払う、とあります。著者には贈呈されるのですから、制作する本は出版社のものです。また、著者の本をつくるのであれば、印税(著作権使用料)をもらうことにはなりませんから、出版社の本であることがわかります。

 つまり文芸社の協力出版の「協力」とは、文芸社の出版に著者が一方的に資金協力することにほかなりません。著者の自費出版に文芸社が資金協力するわけでもなければ、共有する本をつくり販売利益を分け合うわけでもありません。

 原稿を送る人の大半は出版については素人です。商業出版や自費出版のしくみや本の所有権がよくわからず、協力出版を「出版社が宣伝・販売費用を負担して売ってくれる自費出版」と思ってしまう人も多いでしょう。でも契約上は「著者が制作費を負担する商業出版」といえるものです。

 著者の書いた本をつくるのですから、制作を請け負ってくれると思う人もいるでしょう。でも制作請負契約を交わすわけではありません。もし自費出版(制作請負契約)であると錯誤したら、著者に請求する制作費に出版社の利益が加算されていても、おかしいということにはなりません。自費出版の場合は、制作費に利益が加算されているのが当然だからです。

 他の出版社の行なっている「共同出版」や「共創出版」などと呼ばれる出版形態の場合も、多くが出版社に所有権のある本をつくっているようです。そうであれば、出版社の本をつくるために、著者が一方的に資金協力をすることを「共同」とか「共創」と呼んでいるにすぎません。

 「共同」を辞書で引くと「2人以上でいっしょに行なうこと。また、2人以上が同等の資格で結びつくこと」(岩波国語辞典)となっています。出版費用を分担するのなら、互いの分担費用を明らかにしたうえで共有の本とし、売上金も分け合うのが「同等の資格」であり、真の「共同」ではないでしょうか?

 「協力出版」「共同出版」の多くは、「協力」とか「共同」の名で著者の気を引き、販売することをメリットとして説明し、出版社が販売利益を得る商法です。こうした勧誘の仕方は、著者の錯誤を利用しているように思えてなりません。

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