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大地の草の緑、地平線の上は青い空。これ以上何が必要か、というほどの圧倒的な自然の中で響き渡るホーミー(10世紀頃から続くモンゴルの伝統的な発声法)の地響きのような声。 何もないことへの憧れといっていいかどうか分からないが、そんな気持ちを抱いてかつてモンゴルへ行ったことがある。しかし懐かしい草原の映像は、寂しく侘しげに見えた。なぜかなあ? 『香火』で2003年の東京フィルメックス・グランプリに輝いた中国人監督・寧浩(ニンハオ)の新作。『モンゴリアン・ピンポン』の舞台は内蒙古自治区の中でも偏狭の地で、10世帯あまりが遊牧で暮らす地域だ。なんと実際にそこに住む人々が出演したのだとか。物語は、小さなピンポン球を拾った子どもたちがそれをめぐって想像したり、けんかをしたりと、たくましくしたたかに生きるさまを描いている。 中国が舞台であることには違いないので、子どもたちがピンポン玉を見てそれが何であるかをまったく知らないということがちょっと不思議ではあったが、モンゴル民族としてその文化の中で暮らす人々に卓球というスポーツは縁が薄いものだということだろう。 この映画の中のセリフはすべてモンゴル語で、文化的にもまったくモンゴルスタイルで、漢民族の影はまったくない。 チベットをはじめとする中国国内の少数民族に対して、中国政府がその民族の言語を日常会話から排除するような文化弾圧を行っているという話を聞いている。それを危惧している人権擁護団体もあるという。 そうした批判を多少なりとも知っていてこの映画を見に行った者からすると、なぜ今すべてモンゴル語で文化的にもまったくモンゴルの映画を中国人が作るのかという疑問があった。 しかしそんな思いは老婆心というのか、上映後に舞台に現われたまだ20代の監督の話は、そうした批判の影響がまったくないように見えた。ただ純粋に面白い映画を作りたいという強い思いが印象的だった。 中国語と英語と日本語の字幕を頼りに世界の多くの人々にこの映画を見てもらえるなら、きっと中国にとってもモンゴル民族にとってもいいことであると思いたい。 ◇ ◇ ◇
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