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文化

共同・協力出版のシステムと闇に包まれた実態

松田まゆみ2005/11/06
共同出版にさまざまな疑惑が生じても著者はその実態を知ることができず、疑惑の解明ができないのです。
日本 本 NA_テーマ2
 前報では協力出版や共同出版などと呼ばれる出版形態では、多くの場合、著者に請求する制作費に、出版社の利益が加算されていると考えられることを書きました。このために出版社が負担することになっている宣伝・販売費用の一部または全部を、実質的には著者が負担しているといえます。もし、制作費に加算している利益の方が宣伝・販売の費用より多ければ、出版社は契約するだけで利益を得、さらにタダで自社の本をつくれるのです!

 いっぽう著者にとっては、料金がほとんど変わらないなら、宣伝や全国流通も行っている自費出版業者に依頼し、販売を委託して売上金をもらうほうが得です。売ることを考えないなら自費出版で必要部数だけつくる方が安くできます(「それでもあなたは契約しますか?」参照)。ところが、大半の応募者は出版についてあまり知識がありませんから、共同・協力出版は自費出版よりメリットが大きいかのように宣伝すれば、多くの人が誘惑されてしまうでしょう。多くの原稿が集まり儲かるのであれば、出版社にとってこんなに「おいしい商法」はありません。

 ですから出版社が共同・協力出版を勧めるためには、まず、著者の関心を引かせて自費出版よりメリットがあると思わせること、売る価値のある作品であると評価すること、さらに疑惑をもたれてもそれが解明できないようにする必要があります。そうやって見ていくと、この商法の実態が見えてきます。

 まず、「共同」とか「協力」、「商業出版と自費出版の中間型」などとすることで、自費出版よりメリットが大きいという印象を与えることができます(「『共同』の意味を履き違えた共同出版」参照)。

 このような出版社の大半はさまざまなコンテストを行ったり出版賞を設けたりすることで、著者の関心を引いています。新聞やホームページを見ると、まるで「賞ビジネス」といえるような様相を呈し、著者の獲得競争を繰り広げています。落選しても共同出版が可能として、共同出版に誘う出版社もあります。

 「企画出版(商業出版)」「共同・協力出版」「自費出版」の3種の出版形態を設けることで、作家志望者は意欲がかりたてられますし、自費出版を考えていた人も企画出版や共同出版に期待をかけるでしょう。現在の文芸社の新聞広告やホームページからは「協力出版」「自費出版」といった出版形態名が消えてしまいましたが、ホームページの説明を読む限りでは複数の出版形態があり、私が契約した「協力出版」と同様の出版形態を勧めていることがうかがえます。

 こうした出版社では、しばしばプロの作家や著名人、タレント、弁護士や大学教授などの本を出版しています。著名人や弁護士の本を出している出版社を疑う人は少ないでしょう。著名人などの本を「企画出版」で出版し、新聞やホームページで宣伝することは、出版社の信頼を高めることにつながります。

 社内で審査し出版形態を提案するという形にすることで、専門家に評価されたという印象を与えます。しかし、文芸社の「刊行審査委員会」は「文芸社商法のさらなる疑惑」で書いたように、実態がわかりません(現在の文芸社の新聞広告からは「刊行審査委員会」が消え、ホームページでは、「出版企画部が窓口となり、お送りいただいた原稿を慎重に審査させていただきます」となっています)。他社の「審査会」にしても具体的にどのような基準で審査され、企画出版・共同出版・自費出版に推奨する割合がどのようになっているのかを、応募者は知ることができないでしょう。「売る価値がある」と評価することで、大半の原稿に共同・協力出版を提案することができます。

 制作費を著者負担とし、全国の書店で販売することをメリットとすることで、「全国販売する自費出版」というイメージを与えることができます。ホームページや新聞広告を見ても、「企画出版」「共同・協力出版」「自費出版」の契約上の違い、つまり誰に所有権のある本をつくるのかを明記しているところは見当たらず、共同出版が制作請負契約(自費出版)ではないことがわかりにくくなっています。

 費用に疑問を持っても、印刷や製本などの費用は、出版社が印刷所などの信頼できる見積明細を提示しなければわかりません。編集費やデザイン費は編集者やデザイナーに支払う賃金とみなせますが、外部の者が知ることはできません。編集などは、「著者のオリジナリティーを生かす」などとしてほとんど手を加えず、安くおさえることも可能です。 制作費が実際にいくらかかっているのか、著者には確認できないのです。文芸社は制作費に利益を加算していることを裁判で認めましたが、他の出版社は認めているのでしょうか? 出版社が宣伝・販売にいくらかけているのかも著者にはわかりません。

 特約店や提携書店に実際に置かれる本の数は、著者にはまず確認できません。また信頼できる実売部数も著者にはわからないでしょう。結果的にほとんど売れなくても「確実に売れると約束したわけではない」といわれればそれまでです。売れ残った本をどのように管理、あるいは処分しているのかも著者にはわかりません。さらに、本当に契約した部数をきちんと印刷しているのかさえ、自分の目で確認しないかぎり著者にはわかりません。

 さあ、どうでしょうか? あたかも自費出版よりメリットが大きいかのように思わせ、「売ってくれる自費出版」と錯誤するかのような説明で勧誘し、出版社が負担するとしている宣伝・販売費用まで著者に負担させ、出版社が売上金を得ているとしたら、騙して儲けていると同然でしょう。それなのにさまざまな疑惑が生じても著者はその実態を知ることができず、疑惑の解明ができないのです。これが共同出版などという出版形態の実態でしょう。

 出版社がこのような疑いをかけられたくないのであれば、こうした出版形態を行わないか、内部情報を公開していくことが必要です。大手出版社が自社の本をつくる商業出版と、制作請負契約を交わす自費出版部門を明確に分け、「共同・協力出版」などという不透明な出版形態を行っていないのは、もっともなことです。
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