トップ > 文化 > 水俣と日本のもやいなおし 一人芝居「天の魚」と水俣・和光大学展
文化

水俣と日本のもやいなおし 一人芝居「天の魚」と水俣・和光大学展

長岡素彦2006/09/20
水俣病公式確認50周年にあたり、24日まで開催される「水俣・和光大学展」では、故砂田明氏のひとり芝居「天の魚」上演される。
日本 舞台 NA
 猫が苦しんでいる

 狂ったように踊り、もがいている

 舞台の上で黒子がもがき苦しむ猫を演じている。

 これは、水俣・和光大学展でのひとり芝居「天の魚(てんのいを)」(東京不知火座)の光景だ。このひとり芝居「天の魚」は、東京の舞台人から転じて水俣に住んだ故砂田明氏がかつて全国を勧進行脚して行ったものだった。水俣病記憶が風化しつつある世間に対し、砂田氏は「水俣の想い」を伝えることを目ざし、己の持てる総ての技をこめてこの芝居を創り上げた。

 「『苦海浄土』の一章を演劇化したひとり芝居「天の魚(てんのいを)」を演じながら、十数年にわたって全国を行脚することになるのです。それは、水俣の美しい海と山の光景、しかしまた、水面の下で水銀に冒された光景の悲しみを、病に倒れた人々の深い痛みと刺すような問いかけを、魚たち、動物たち、草木たちの霊を、それに、すべての生命が共生する世界への想いを、身体ひとつに宿しながら、あらゆる人々の魂を揺さぶりつづける舞台であり、闘いの旅でした」(「天の魚」プロジェクト趣意書より)

 残念ながら、砂田氏はその全国勧進行脚中の1992年に病を得て1993年にその生涯を閉じた。

 今回、水俣病公式確認50周年にあたり、ひとり芝居「天の魚」を支援した演劇人たちが「東京不知火座」を再度立ち上げ、「天の魚」プロジェクトとして、ひとり芝居「天の魚」を、「苦海浄土」巡演にも同行した川島宏知(小松敏宏)氏などが演じることとなった。

 「水俣・和光大学展」は和光大学創立40周年記念行事の一環として水俣病公式発表50年にあたり企画され、9月15日から24日にかけて開催される。開催趣意書は、「展示によって、小中高校大学の人権・環境教育に資すると共に、関連企画としては和光大学の人間関係・経済経営・表現の3学部の教員を主として、いまだ未解決の「水俣病」の根本的問題の所在およびその解決を学究的にはかるものとする。同時に学生、市民の参加企画を多角的に追求するものとする」と説明している。

 メイン展示の「プロローグ」はこう語り始める――

 1956年4月、幼い少女を「奇病」が襲った。
 すべてはここにある。
 さかな、ねこ、そして、こどもがチッソ排水に含まれた有機水銀の最初に犠牲になった。
 その有機水銀の体内で吸収したこどもたち。
 できれば、わが子に成り代わりたい親を救って生まれたこどもたち。
 こどもたちが犠牲になった持続不可能な社会の始まり。
 
 さらに進むと、実物展示、ユージン・スミスなど写真家の写真、記録映画のビデオ、丸木位里・俊り「水俣の図」(レプリカ 新作)などのアーチストの作品、そして、終わりには水俣・東京展からつづく「記憶といのり」のコーナーがあった。

 1996年の水俣・東京展のために、映画作家の土本典昭夫妻が水俣に滞在し遺族を訪ね遺影を「記憶といのり」という題名で展示した。その後も遺影の収集は続けられ、今回の「水俣・和光大学展」では474枚の写真が展示された。

 水俣で起こったことは、これらの遺影の中にある。
 人と人、人と自然のすべてを壊したチッソによる水俣の環境総破壊・エコサイド。
 死の海となった不知火海と人と人の関係が崩壊した水俣のまちを市民と患者たちは葛藤しながら立て直してきた。

 「熊本県水俣市ではこれを地域の人と人との絆にみたて、水俣病によって傷ついた絆を取り戻すために、水俣病と向き合い、話し合うことで意識改革をはかろうとしており、この動きを『もやいなおし』と呼んでいる。このもやいなおしのため、市民自らが参加する多様なプログラム(市民の集い、市民講座、ワークショップ、『火のまつり』、マリンフェスタ、ツアー、コンサートなど)が企画実施されるなど市民や地域の活性化に役立っており、さらには環境問題への意識啓発にも貢献している」(EICネット[環境用語集「もやいなおし」より)

 水俣病が公式確認されてから50年が経った。いまだ未解決である「水俣病」の根本的問題の所在およびその解決を学究的にはかる「水俣・和光大学展」、水俣の「記憶といのり」を受け、故砂田明の遺志を継ぐ東京不知火座の「天の魚プロジェクト」、そして、この「水俣・和光大学展」に集った人々によって、水俣のもやいなおしは日本のもやいなおしへとつながっていく。

 東京不知火座の「天の魚」本公演は来年9月に東京都江戸川区で行われるとのこと。
 また、これとは別に水俣病公式確認50年事業として『胎児性水俣病・障がい者の想いを伝える創作舞台芸術』という当事者による演劇表現も行われる。


(参考)

水俣・和光大学展
期間:2006年9月15日〜9月24日
会場:和光大学「パレストラ」(新体育館)および学内施設
運営:「水俣・和光大学展」実行委員会
協力:NPO法人「水俣フォーラム」

水俣・和光大学展事務局
〒195-8585 町田市金井町2160番地 和光大学A棟804最首悟研究室
044-989-7777(内線5804)

天の魚プロジェクト
・「天の魚」公演 水俣・和光大学展(本日以降)
日時:9月22日(金)16:00〜
   9月23日(土)19:00〜
場所:和光大学「パレストラ」

天の魚(てんのいを) 本公演
日時:2007年9月19日(水)〜22日(土)
場所:タワーホール船堀 小ホール(都営新宿線船堀駅前)
   東京都江戸川区船堀4−1−1
   開場開演時間等詳細な日程は未定

■水俣病公式確認50年事業  演劇デザインギルド
 『胎児性水俣病・障がい者の想いを伝える創作舞台芸術』
日時:10月14日 15時より
場所:水俣市文化会館
   熊本県水俣市牧ノ内8−1
◇ ◇ ◇
水俣と日本のもやいなおし 一人芝居「天の魚」と水俣・和光大学展
1956年4月、幼い少女を「奇病」が襲った
水俣と日本のもやいなおし 一人芝居「天の魚」と水俣・和光大学展
「記憶といのり」-遺影
下のリストは、この記事をもとにJanJanのすべての記事の中から「連想検索」した結果10本を表示しています。
もっと見たい場合や、他のサイトでの検索結果もごらんになるには右のボタンをクリックしてください。