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ガイサンシー(蓋山西)とは、中国山西省で“一番の美人”を意味する言葉。 ガイサンシーと呼ばれるほど美人だった侯冬娥(コウトウガ)さんら女性たちが、日中戦争時、駐留日本軍に性的暴力を受けた事実を、日中双方に残る証人の言葉を集めて製作されたドキュメンタリー映画である。 ガイサンシーこと侯さんは15歳で結婚し、翌年には子どもをもうけた。しかし、現地でとびきりの美人として有名だった侯さんのことを聞きつけた日本軍は、彼女を強制的に連行・監禁する。候さんは以後、日本軍人の性的欲求のはけ口にされ続けた。 身体に変調をきたしてもまともな治療を受けられず、村に戻された時には歩くこともできないほど衰弱。漢方医の施術により、子宮から大量の汚物が排出されたほどだった。1995年に亡くなるまで体調は回復せず、日常的に子宮からの出血に苦しんでいた。「医者に診てもらう金もない。薬も買えない」と、苦しみを周囲に訴えていた侯さん。忌まわしい経験を口にすることもできず、心身に深い傷を負ったまま、最期は自ら命を絶ったという。 タイトルにある“その姉妹たち”とは、侯さんの血のつながった姉妹のことではない。侯さんが監禁されていた当時、同じように連行・監禁され、悲痛な体験を共有した女性たちのことだ。「彼女を苦しめないで、私を苦しめなさい」と、侯さんはしばしば他の女性たちをかばい身を挺したという。彼女たちは「実の姉妹以上」の強い絆で結ばれていた。 作品中に、侯さん自身の口から事件について直接語られることはない。班監督が取材を始めて間もなく、自殺を図ったからだ。また、“その姉妹たち”も、自らの体験を口にしない。夜中にうなされて「悪夢を見た」と言うにとどまり、家族は「どんな夢を見たのか彼女も言わないし、私たちも知らない」ままだったという。「製作に10年もかかったのは、信頼関係を築くのに時間がかかったからだ」と、班監督が語るように、彼女たちの心の封印を解くのは容易ではなく、それだけに得られた証言は生々しく重い。 さらに、当時を知る村人をはじめ、実際に駐留していた日本軍兵士の証言も多く盛り込まれ、立場の異なる関係者それぞれの記憶や認識を多角的に伝えている。旧日本軍兵士の1人は「売春婦はいたが、慰安婦はいなかった」というが、別の元兵士は「家庭を持った後に『何であんなことをしたんだろう、とんでもないことをした』と思った」と悔恨の念を語る。同じ立場であっても認識や解釈が異なることに、問題の根深さを痛感させられる。 「慰安婦」という言葉そのものは広く知られているが、「慰安婦問題」というテーマは、近年次第に耳にしなくなってきている。同時に「実際にどうだったのか」を語り得る生き証人そのものが急減している。2年前に中国で起きた反日運動のように、日中関係が険悪になる火種として歴史認識のギャップがある。 来日して30年になる班監督は言う。 「日中の理解、共通の歴史認識のためには、政府よりも市民1人1人が歴史を共有・認識する必要があると思う。真のアジア関係を築くためにも、みんなで手を組んでがんばりましょう」 日本公開の後、中国での公開に向けて準備を進める予定だという。 「ガイサンシーとその姉妹たち」(07年、日本) 監督・撮影:班忠義 2月17日、全電通ホール(東京)で完成披露上映会とシンポジウム開催。(C)2007 Ban Zhonyi / SIGLO ◇ ◇ ◇
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