12月13日、東京・新宿の紀伊国屋サザンシアターで、姜尚中さんと小森陽一さんのトークショーがありました。このトークショーは、『第26回角川ONEテーマ21』セミナーとして開かれたもので、発売1週間で重版となった『戦後日本は戦争をしてきた』(角川書店)のタイトルが今回のテーマでした。トークショーで語られた話の中から、日本の政治に関わる部分を紹介します。
トークショーの様子
姜「小泉は小沢(一郎)チルドレンだと思います。一郎繋がりでもあるし(笑)。」
小森「小沢一郎とはどういう人だったかを考えてみたいと思います。小沢さんが(自自公)連立政権から姿を消した後に9.11事件があり、テロ特措法が成立しています。」
姜「(自分に)支持を得るためでしょうか? 彼は『日本改造計画』で小泉と符節を合わせています。
加藤紘一さんも『中選挙区のほうが良い』と発言していますが、小選挙区になって一度も政権が交代していないこともあり、(小沢さんは以前の連立に)また戻したいのではないかと思いますね。これは、公明党も考えているのではないでしょうか。
ですから、私は、今度の総選挙の結果によっては、選挙改革があるのではないかと思っています。日本は今、政治から見ると『迷走』していると思います、その始まりを起こしたのが小沢さんです。彼は、憲法前文の拡大解釈で、『イラク派遣は合憲』と発言しています。」
小森「小選挙区制と自衛隊派遣は連動しています。」
姜尚中さんプロフィール:1950年、熊本県生まれ、早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。東京大学大学院情報学環教授。専攻は政治学・政治思想史。著書−『マックスウェーバーと近代』(岩波書店)、『東北アジア共同の家を目指して』(平凡社)、『在日』(講談社)、など。共著−『ナショナリズムの克服』(集英社)、『戦争の世紀を超えて』(講談社)など
姜「私は、小沢さんは田中角栄が父、アメリカが母だと思っています。」(場内大笑)
小森「田中さんはアメリカに潰されたのに、そのアメリカが母ですか。」(笑)
姜「小沢さんのロジックは『積極的平和主義』。国家主権の行使として自衛隊を出さないという考え方。」
小森「アメリカの個人的自衛権の行使だから違憲ではないと言っています。」
姜「アメリカにブラフをかけられたのか、あるいは国内の力のみなのか。連立は自論に合っているのでしょうね。民主党はアメリカ型2大政党を目指しているのではないでしょうか」
小森「今、政局はすくんだ状態ですね。選挙制度、消費税など。大連立の話は、時期が悪かったですね。すぐには出さないだろうが、その先には改憲がある。そのコースが見えたことは良かったと思います。それから、時限付立法である特措法(テロ支援対策特別措置法)を恒久法にしたいという考えもあるのではないかと思います。国際貢献を恒久的にやっていくという。」
姜「私は、大連立は政党政治の自殺行為だと思います。」
小森陽一さんプロフィール:1953年、東京都生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科教授。「九条の会」事務局長。専攻は日本近代文学。著書−『漱石を読みなおす』(筑摩書房)、『天皇の玉音放送』(五月書房)、『心脳コントロール社会』(筑摩書房)など。編著−『岩波講座 文学』(岩波書店)、『座談会 昭和文学史』(集英社)
小森「2006年には、『虚』から『実』にということがあって、2007年は『偽』という字が選ばれました。(筆者注:日本漢字能力検定協会が公募し、選ばれた今年の漢字1位)何が偽か、ということが確かめられた年であったかと思います。
朝鮮半島の情勢で言えば、韓国が朝鮮に対して積んできた思い、考え方の本物が暴露したのではないでしょうか。朝鮮戦争は休止しているのではなく、停止中なのです。私は、ずっと主張していましたが、最近になって漸く実感できるようになっていると思います。
6カ国協議で朝鮮が頼りにしているのは、アメリカが1番です。次がロシア、中国、そして日本となっています。しかし、日朝交渉を続けていけば巧く行くのではないかと思っています。
ところで、来年を漢字1文字で表したら何になるでしょうか。」
姜「まず、『壊』ですね。冷戦の崩壊、55年体制の崩壊、戦後のさまざまな前提が崩れる。そして、『乱』。まず、アメリカ大統領選は、私は民主党になるのではないかと思っているのですが、そうすると、米中関係はどうなるか。イラク・パキスタンは? ドルの信認が落ち込むのではないだろうか。」
聴衆は中高年層が多かったのですが、姜尚中さんのファンと見られる人は若い女性が多かったのが印象的でした。この日のトークショーは、非常に硬く重いテーマでありながら、お2人の話には会場からも時々笑いが起こり、またお2人とも声を荒げず淡々と語られました。
ユーモアあふれる表現は非常に説得力があると痛感するお話でした。