在日の中国人映画監督、李纓(リ・イン)さんが制作したドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映が相次いで中止されている問題で、自民党の稲田朋美衆院議員がこれまで繰り返してきた否定発言に反し、実際には事前の試写を文化庁を通じて要求していたことが明らかになった。6日放送されたテレビ朝日の報道番組で、この映画の宣伝・配給会社社長が証言した。
映画「靖国」のワンカット。テレビ朝日画面より。
この日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」の番組で、「靖国」の宣伝・配給を担当する「アルゴピクチャーズ」の岡田裕社長は次のように語った。
――去年の10月、文化庁(の職員)が来て、「試写会をやってほしい。(フィルムの)プリントを貸して欲しい」と言われた。「特定の試写がしたい」と言うので、「どんな試写か?」と聞くと、「国会議員」との答えだった。それは誰なのか聞いたら、「稲田朋美さんら」ということだった。文化庁が(公開前の映画を)見せてほしいと要求することは、めったにない。
試写会が行われたのは3月12日。15日に(上映予定だった映画館の)「新宿バルト」が「やめたい」と言ってきた。ネット右翼が(上映予定の)映画館に電話で圧力をかけ、右翼が2〜3回、街宣車を走らせた。映画館を運営する上部の会社から圧力があったのだろう。
(岡田社長のコメントはここまで)
稲田議員の試写要求があったことを証言した映画宣伝配給会社社長の岡田裕氏。
稲田議員は「伝統と創造の会」会長。これまでマスコミの取材に対し一貫して「試写は要求していない」と答えていた。3月28日に日本外国特派員協会で開かれた記者会見でも「公開の前に見せろと要求したことはない」と強く主張していた。
試写の要求をしたか、しなかったか。今回の岡田社長の証言は、稲田議員の「していない」発言と真っ向から対立するものだ。岡田証言は、試写の要求が、稲田議員→文化庁→岡田社長というルートで行われたことを事実関係で裏付けた。この方が具体的で信憑性が高いことは否定できない。
すると、「試写の要求はしていない」という稲田議員は、これまでウソを言い続けたことになる。あるいは、稲田議員は「配給会社に試写の要求はしなかった。文化庁に見たいといっただけ」と釈明するつもりかも知れない。しかし、今回明らかになった「要求ルート」から見ても、また予定映画館での上映中止が実際に続出している現状を見ても、製作者や配給会社、上映館への「圧力」という効果では、まったく同じことだ。
記者会見する稲田朋美衆議院議員(3月28日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で)
「サンデープロジェクト」では、稲田議員に出演を求めていたが断られたという。6日の放送の番組中で、司会の田原総一朗が「稲田さん、電話を下さい」と何度も呼びかけた。だが、稲田議員からの返答はなかった。
2005年、小泉首相(当時)の靖国参拝批判発言をめぐって右翼団体から事務所を放火された加藤紘一元自民党幹事長も、この番組に出演した。加藤氏は映画「靖国」をDVDで観たという。「反日でも反中でもない。靖国反対でも賛成でもない。ナレーション抜きで事実だけを追いかけた良い映画だ」と話す。
ジャーナリストの大谷昭宏氏も「靖国」のDVDを見ており「何を訴え、何が問題かを問いかけた素晴らしいドキュメンタリー」と感想を語る。
これらからも、助成金支出の基準にある「政治的に偏りがないこと」は、クリアしていると言えそうだ。「映画『靖国』には文化庁から助成金750万円が支出されているので、支出が適正かを確かめたい」とする稲田議員の論拠は希薄となる。
番組では新聞各社の社説にも注文をつけた。田原は各紙こぞって「公開されるべきだ」としていることを捉え「新聞各社はホールを持っているのだから、そこで上映したらどうか」と提案した。「言論の自由」などと「高説」をたれている大新聞社の論説委員には耳の痛いことだろう。
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