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「トントンギコギコ図工の時間」がくれた希望(編集委員レビュー1月第4週) |
2005/01/24 |
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「「創造力」と「図工の時間」〜映画『トントンギコギコ図工の時間』を見て」(斉藤哲也記者、12月21日)が紹介してくれた映画を見てきた。
野中真里子監督は、「ごく普通の場所に---在る希望」をこの映画で撮りたかったと語っている(「トントンギコギコ図工の時間」)が、この映画を見ると、図工の時間の「よい環境」があれば、普通の公立小学校の普通の子供たちが生き生きと輝き、想像をはばたかせ、大人には思いもつかない素晴らしい作品をつくるようになっていくことがよくわかり、「希望」がわく。
図工の時間の「よい環境」とは何か?子供たちが素材と対話しながら、イメージをふくらませ、それを形にしていけるような環境と、言えるだろうか。例えば、この映画で「宝物室」が出てくる。この部屋には、使い古しの板や材木、釘などかたくさん集めらている。このガラクタは子どもたちにとって、これを使ったらどいうものを造れるか、想像をはぐくむ宝物になる。大事なことは、規格化された部材をあらかじめ決めれた形に組み立てるマニュアル化された工作ではなく、子どもたちが自分で素材を選び、加工をし、造形しながら、「こいつはこんなふうになりたがっているんだ」という姿を見い出す生成的な経験なのだ。そういう経験を通じて、子どもたちはモノづくりが楽しくなり、自分の力で何かを創りだす自信をつけていく。それが、この映画を通じてよくわかる。
5年生の「私の椅子」というテーマの時間には、子どもたちは「宝物室」で見つけ材木をノコギリで切って足をつくり、板に釘を打って思い思いの椅子を造っていく。内野先生は、2年〜6年の図工の時間に、釘の打ち方、ノコギリ、彫刻刀の使い方など、基本的な技術をだんだんに身につけさせるが、椅子造りの手順についてはとくに教えず、自分たちで試行錯誤を重ねて考えてもらい、行き詰まった時にちょっとアドバイスする。「私の椅子」は、どんな椅子で、どんな部材からなり、部材をどう組み合わせ、どう固定するか、子どもたちがそれぞれ、自分なりに考える。その結果、できてきたのは、実用には問題がありそうだが、とても愉快な椅子たちだ。どれが良くできていて、どれがへたということもなく、それぞれ子どもたちの想いのこもった「私の椅子」ができあがった(映画プログラムのサンプルに作品の写真がある)。内野先生は、それぞれの子どもたちが自分なりにチャレンジするように勇気づける。
6年生の卒業製作では、子どもたちは、大きな1枚の板を与えられ、それを加工して何でも好きなものを造る。どんなモノをつくりたいか、紙で模型をつくり、板からどう部材を取るか計画を立てていく。みんなモノづくりの楽しさを知っているので、苦心しながら最終的には、豊かな発想で手のこんだ、楽しい多彩な作品ができてくる。
この映画を見ていて切ない気持ちにさせられのは、間もなく小学校を卒業しなくてはならない、6年生の心のうちの寂しさが伝わってくるところだ。もう内野先生の図工の時間に出られなくなってしまうこと。キラキラとした子ども時代から離れていかなくてはならないこと。この子どもたちは、どんな中学生、高校生になっていくのだろうか。生き生きとした感性を伸ばしていくことができるだろうか。この子どもたちのこれから人生で、内野先生の図工の時間の経験がどういう意味をもつようになるのだろうか。内野先生の図工の時間のような「よい環境」をあちこちに増やすには、どうすればいいのか。この映画は、製作チームの意図も超えて、さまざまな問いかけを含んでいると思われる。多く方たちに、この映画を見ていただいて、ここから何を感じとり、何を考えなくてはならないか、『JanJan』での対話を深めていきたいものだ。
以下、最近の『JanJan』の記事で、ブックマークをつけたもの中からいくつかを紹介しておく。
まず、海外在住の記者、および海外生活経験をもとにした記事
▽「『人身取引』批判で見せたブッシュ政権の外交姿勢とその限界(2)」(久米賢生記者、1月15日)
フィリピン在住の久米記者は、ブッシュ政権の政策がフィリピンからはどう見えるか、ひとつの見方を提示する。
▽「モラル・バリューという名の檻」(片瀬ケイ記者、1月14日)
テキサス州に暮らす片瀬記者が、ブッシュ支持者が大多数の州の雰囲気を伝えてくれる。
▽「カナダで暮らすのも悪くない」(『Ohmynews』イ・ハナ記者、1月19日)
カナダに暮らす韓国人女性が見たカナダの平和重視政策の歴史的背景を語る。
▽「訪問記:イランの結婚式」(鈴木麗記者、12月26日)
イラン人と結婚し、イランで結婚式をあげた鈴木記者の体験記。女性だけになると雰囲気ががらっと変わって、ヴェールを脱いで踊りだすという。女性にしか経験できないイラン社会の一面だ。
つぎに災害に関連する記事
▽「未曾有の災害経験-スリランカより」(束村康文記者、1月6日)
NGOブリッジ・エーシア・ジャパンのメンバーによる被災したスリランカからの報告。政府や国際機関の支援物資が届く前に、被災を免れた周囲の住民が被災者に対する支援を始めた。
▽「『津波エイド』チャリティ・コンサートを開催」(安部宝根記者、1月21日)
スリランからの留学生の呼びかけで、スリランの伝統舞踊、和太鼓、沖縄民謡などが集う津波被災者支援のチャリティ・コンサートを調布市で開くことになったという。
▽「問われる小泉内閣 新潟県中越地震の被災者支援」(北誠記者、12月15日)
2000年の鳥取県西部地震の際に、霞ヶ関から非難を浴びながら、被災住宅の立て替えや補修に手厚い住宅支援を行った片山県知事の考え方に見習うべきだと北記者は主張する。
地域社会についての記事
▽「岐阜路面電車の3月廃線後の動きを探る」(鈴木修治記者、1月18日)
路面電車の廃線が決まったところで、フランスのコネックス社から提案が出てきた。今後の公共交通についての鈴木記者の質問に対する岐阜市の回答。路面電車を残せる可能性があるようだ。
▽「ローカル・トゥー・ローカル」(澤崎一幸記者、1月12日)
父上は郡上市白鳥町の出身なので、澤崎記者が実家に帰ると大晦日の日没後の夕食に「年取り」の行事をする。「年取り」「朴葉飯」「花餅」など、郡上と飛騨には共通の文化要素が多いという。白鳥町は、こうした地域文化を色濃く継承している所のようなので、澤崎記者が白鳥町と周辺地域の文化の関連を具体的に検討してくださると『JanJan』の新たな分野になりそうだ。
最後に難民問題
▽「送還されたクルド人2名の安全と家族に平穏な生活を!」(亀井誠史記者、1月20日)
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が「難民」と認定したクルド人2名を法務省入国管理局はトルコに強制送還してしまった。こういう乱暴なやり方は一体、誰の利益を守っていることになるのだろうか?
(山本眞人)
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