編集便り  
TOP > 編集便り
日本 Web NA_テーマ2
撤退!ツカサネット、揺らぐライブドアPJの行方(編集委員時評)
2006/02/07

 1月は市民メディア『JanJan』にとって、数少ない同業他社に災難が降りかかり、複雑な心境に陥った月だった。

 1つは、昨年7月にプレオープン、9月にグランドオープンを果たした『ツカサネット新聞』の、事実上の市民メディアからの撤退である。

 同オンライン新聞は、ウィークリーマンションの販売で知られる株式会社ウィークリーマンションツカサが1999年9月に、営業権をリーマンブラザーズ社に売却したことに伴い、社名変更した現社名「ツカサ都心開発株式会社」が広報宣伝の一環として立ち上げたものだ。

 文字通りの事業会社で私企業の不動産会社オーナーが目をつけた領域が市民投稿型のネット新聞であることに、いささか違和感を感じたものだ。「ツカサ都心開発株式会社」の事業として、「ツカサ」の冠をかぶせた新聞が公正、公平なジャーナリスムを果たして追求できるものなのか?という点に疑問の根拠があったろう。

 しかし、しばらくすると、それが杞憂であることが分かった。スタートするやそれほど時間も経ずに、傍目にも順調に市民記者を増やし、記事のラインナップも、短い期間にもかかわらず、質の高いものをそろえはじめたのである。聞けば、『JanJan』の市民記者と両方、かけもちして活躍している兵記者もいるようであった。

 『ツカサネット新聞』は記事の出来具合により、原稿料を出す仕組みを採用していて、そのインセンティブが記者や記事の集積に効果をあげたのかもしれない。

 市民メディアの意味は?……市民がその生活の現場(家庭や職場やボランティア活動や趣味)で見たり、聞いたり、発見したこと……喜怒哀楽をニュースとして発信する仕組みを、既存マスメディアの圏域外に保障すること。カウンターメディアの成熟は、遥か未来を展望すれば、政治やマスコミの成熟を促すことにつながるだろう。

 だから、コンセプトや戦略は違っても『JanJan』の仲間は多いほどいい、相乗効果で社会的影響力が少しでも増せばいい、と考えていた。オンラインメディアの先進国、韓国でも、たくさんの市民メディアが切磋琢磨して影響力や市民権を確保していったわけだし。

 ところが、『ツカサネット新聞』はこの1月末をもって編集部を解散し、編集長は退社してしまった。実質的に同紙は廃刊したと言っていい。突然、アクセス不能になるわけではなく、システムとしては改良を加え、自動的に投稿記事をUPする仕組みを採用、記者には記事1本当たり、100円を支払う予定のようである。オーナーが目指すサイトは「ブログ寄せ集め&2ちゃんねる風」との関係者の声が聞こえてくる。

 オーナーは「キャバクラ」と「2ちゃんねる」に思いのほか関心が高いのだという。個人の趣味なら別にとやかくいうこともないのだろうが、“ネット新聞”を立ち上げて、ジャーナリスムの世界に果敢に殴り込みをかけながら、一方で、同紙から自社の制作・運営するキャバクラサイトにリンクをする……この感性はいかがなものか。

 実質的閉鎖について、読者へのアカウンタビリティはどうか。『ツカサネット新聞』リニューアルに関するお知らせにはこうある。

●投稿停止日 2006年2月6日(月)午後6時〜2月7日(火)午後3時
(※この期間は記事の投稿はできません)
●公開停止日 2006年2月7日(火)午後3時〜2月7日(火)午後7時頃
※上記データ移行完了次第リニューアル版の公開。

 また、「編集部だより」(ツカサネット新聞がリニューアルします)には、こうある。

 【リニューアルの一番の理由は、新規登録者の記事投稿と参加率が低いということにあります。これまでの編集部主導で進める運営では、『編集部にしかない基準』で記事を掲載するかどうかを判断して参りました。そのため、折角ご登録し、投稿していただいたにも関わらず、掲載に至らない記事がデーターベースに格納されたままになっております】

 登録者に占める記事執筆の割合が高い方がいいに決まっているが、そう簡単にはいかない。たった半年のスパンで結論を出すのはいかにも拙速である。また、その理由を編集部の原稿チェックや日常の記事編集活動に求めるのも大きな間違いである。

 対して、ネット記者矢山禎昭さん(『JanJan』市民記者でもある)は「ネット新聞への期待 読者=ネット記者として」という記事を書いた。その中に次のような箇所がある。

 【ネット新聞は、きちんとした編集方針のもとに運営されるとき、大きな可能性を秘めていると思います。ブログの出現以前はマスコミが一方的に書いたものを読むだけだった個人が、ブログができて、読み手が書き手になって自分の考えを発表できるようになりました。ちょっとオーバーかもしれませんが、今までの社会の仕組みを根底からくつがえすほどの画期的なことではないかと思います】

 まさに正鵠を射た考えだと思われる。これに多くの記者が賛同のコメントをつけているが、これも虚しく、2月7日以降、編集部なしの『ツカサネット新聞』のリニューアルオープンとなる。いったいどんな新聞になるのか、目が離せない。

 さて、もうひとつ、ホリエモン逮捕で揺れる「ライブドア」について一言。ライブドアニュースは、ご存知のように、「購入もの・既存マスメディアニュース」、自社が独自採用した数名のプロ記者が取材する「livedoorニュース」、講習を経て認定された「パブリックジャーナリスト=PJ」が書く「PJニュース」、意見ものを集めた「オピニオン」からなる。

 社の存亡の中でどのような取材活動を行なっているか見てみると、「livedoorニュース」「PJニュース」ともキチンと記事を送り続けているようだ。中でも「ライブドア事件特集」という特集はみものだ。こうした特集形式は同ニュースでは初めての試みではないか。

○各界著名人・オピニオンリーダーに聞く
○写真で見る「ライブドア事件」
○livedoor 動画ニュース
○ライブドア関連企業 ファイナンス情報

 などはオリジナル企画。おもしろいのは、「関連ブログ」へのリンク集。

・さるさる日記 - 勝谷誠彦の××な日々
http://www.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=31174&log=20060206
・ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
http://www.jimbo.tv/videonews/000237.php
・日本がアブナイ!
http://mewrun7.exblog.jp/2670148/
・nozomu.net
http://www.nozomu.net/journal/000090.php
・ニュース逆さ読み
http://blog.livedoor.jp/nkmrrj04fr/archives/50331742.html
・isologue −by 磯崎哲也事務所
http://www.tez.com/blog/archives/000626.html

・・・ほか

 などのブロガーが様々なライブドア論を展開している。ライブドアの行方は不透明であり、その意味で「PJニュース」もどのような展開となるのか、こちらも目が離せない。

(小池正春)

ご意見板

この記事についてのご意見をお送りください。
(書込みには会員IDとパスワードが必要です。)

メッセージはありません