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「もう一回やろう」という職員の声に選管事務局長は驚いた。平日午後の半日を費やして開票事務のシミュレーションをして疲労している職員に配慮し、2回のシミュレーションで終了しようと考えていた選管にとっては、想定外の職員からの発言だったためである。 先進事例を三次市流に改良 広島県三次市では、2007年4月8日執行の県議会議員選挙を控え、直前の4月4日に第2回シミュレーションを実施した(第1回目は3月29日に開催)。当日は、えんじ色の作業服に足下は運動靴で統一した100名の職員が、本番同様にレイアウトされた開票会場に集合した。今回は、従事する職員を役所内で公募をするなど、開票事務迅速化への取り組みに職員の主体性を重視した。 机の配置は、建築課の職員が会場内を測定し設計したものだ。会場では、机の高さを調節したり、イチゴパックを使用するなど、小諸市や相馬市などで全国区になった様々な工夫が随所に見られる。さらに、三次市バージョンに改良され、扱いやすくもなっている。 例えば、第1点検用のイチゴパックは色テープをつけただけだったが、第2点検が終了した際には、パック自体に色をつけ一目で分かるようにした。疑問票の処理も、効力判定マニュアルを作成し、職員だけでなく立会人にも周知徹底した。疑問票審査係には、市内の弁護士と司法書士を雇用した。審査係の机上にも、効力判定が一目で分かるように項目を記したプレートを配置した。 立会人・選管委員が参加 シミュレーションには、立会人と選管委員も参加した。本番さながら、選挙長の「開始宣言」からはじまり、立会人が開票事務の作業風景を会場内を歩いて自分の目で確認していく。休憩中には選管職員がついて、疑問票判定マニュアルや開票事務手順の説明を行った。当日の本番直前に説明を受けていた従来とはまったく違い、事前に丁寧な説明を受けた立会人はもちろんのこと、選管委員も熱心に説明を受けた。 3万7千票を30分51秒で処理 票数は、当日の投票率を85%と想定し、約3万7千票を用意して行った。1回目のタイムは43分35秒。あらかじめ作成しているタイムスケジュールに従って、タイムキーパーが指示を出し、職員が移動していく。しかし、移動のタイミングが早すぎて開披作業に掛かる職員を減らしすぎたため、開披に時間が掛かりすぎた。2回目はその課題を改善し、32分52秒で終了した。当初は、選管事務局はシミュレーションを終了する予定であった。 しかし、ここで職員から「目標の30分を練習で達成できないのに本番で出来るはずがない。もう一度やらないか」という声が出て、3回目のシミュレーションが行われた。2回目で気がついた課題を修正し取り組んだ結果、30分51秒で終了した。会場になっている小学校体育館では、翌日に入学式が行われる。式典準備のためシミュレーションは3回で終了したが、職員は役所に戻ってからもミーティングを行うなど、課題改善の知恵を出し合った。 8市町村で合併した弊害 三次市は、2004年8市町村が合併した新市である。3年経過するも、なかなか旧市町村の意識が抜けきれないことが市役所内部でも課題であった。シミュレーションに集まった職員同士も、話をしたこともない者もいれば、はじめて会う者も多数いた。ところが、シミュレーションを繰り返し行うことで会話が生まれコミュニケーションが取れるようにた。また、五つの班編制により班長が班内でミーティングを行うため、一体感も強くなってきた。職員が自ら考え、自ら創り出す雰囲気ができてきた。 机上論から実践へ 三次市は準備万端であった。しかし、シミュレーションを行ってみると、計画通りにはなかなかいかない。しかも、本番には何が起こるのかわからない。1回目のシミュレーションでは、その欠点が明らかになった。計画通りに分単位で人を移動させていったが、実際には開披処理の実態が予定の時間で終了していなかったのだ。票が滞留しているものの人だけが進み、結果として手が空く職員が発生したのである。そのため、タイムキーパーではなく、司令塔係を設置した。全体の流れを読み取り、指示を出す専門員を明確化したのである。 4月8日は開票開始時刻を20時45分に設定している。準備が整い次第、開票事務を開始することで、少しでも結果を選挙人に迅速に伝える工夫である。このように、従来型の開票事務を脱し目標達成型の開票事務を目指す三次市は、あらゆる箇所でコンマ1秒の改革に取り組んでいる。その小さな成果が集合し、大きな成果をもたらすことを期待している。 早稲田大学マニフェスト研究所 中村 健 ◇ ◇ ◇
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