福山市長選挙は10日、投開票され、無所属現職で自民・公明・民主党と連合広島が推薦する羽田皓さんが再選されました。
当 羽田皓 71,014
長竹ちか 31,099
小川順三 5,506
福山市長選挙の投票率は29.34%でした(有権者数374,868人、投票者109,000人)。前回の48.19%を大きく下回りました。
羽田さんは今年64歳。市役所職員で、県庁職員の筆者にとっては労働組合の大先輩であり、助役まで勤められ、三好章前市長の病気辞任(その後急死)に伴う2004年9月の市長選挙で民主・社民両党や経済界などの応援を受けて初当選しました。
今回は、自民・民主・公明各党派の推薦と、自民・、民主・公明・社民・新社会各系統の市議41人、2人の国会議員、経済界の支持など磐石の態勢で選挙に臨み、手堅く組織票をまとめる選挙戦に徹しました。
深々と頭を下げる長竹候補。筆者撮影。
しかし、以下のようなこともあり、市役所への潜在的な不満の声が根強くありました。福山城駅前の遺構を破壊して地下送迎場を設けるプロジェクトを推進。鞆の浦では世界遺産の価値があるとされる港を埋め立てて架橋するプロジェクトを前市長以上に進めようとしました。これらに対して反対運動が起きています。少なくない市民も、現状の市政には、不満を持ち、福山城の外堀を保存して欲しいという署名には12万人以上が賛同しました。
ただ、市議選などでは、争点になりそうなことをネオリベの自民党系から社会主義の新社会党系の候補者まで避けて、組織選挙により票をまとめて当選。正面から大きなプロジェクトが問われることはありませんでした。
そうした中、市長選挙に注目が集まっていました。羽田さんは既に、半年前に再選への立候補を表明。一方、環境や歴史を守ろうという市民グループも対抗馬を模索しますが、難航し、ようやく7月上旬、フリーアナウンサーの長竹千賀さんが候補者となり「チェンジ福山」をスローガンに掲げました。
ここで、羽田市長側も7月17日、石垣を地下に保存する「妥協案」を出すなかで、選挙戦に突入しました。
■選挙戦最終日に各陣営が訴えたこと
選挙戦最終日の9日、各候補は街頭でビラを配ったり、演説したりするなどして、支持を呼びかけました。
現職の羽田あきらさんは、市内沖野上町の私の自宅周辺でも選挙カーを回し、支持を訴えました。現職については、福山市のホームページを見れば4年間で何をしてこられたかわかりますので、時間の都合上深い取材はしませんでした。
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福山市ホームページ
「福山駅前水辺公園プロジェクト」が中心となって推した新人で初の女性候補でもある長竹候補の情報が乏しかったことと、男女共同参画にも取り組んできたことから、同候補がどういう方か大変興味があり、夕方、街に新人陣営の取材に出かけました。
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福山駅前水辺公園プロジェクト
長竹候補は19時から、福山駅前近くのビルで演説会をしていました。演説会の冒頭、「どうしても許してはいけないと考えた。次から次へとぶち壊す市長が許してはいけなかった。福山城、鞆の浦を守りたかった。ごく一部の人の利権や意見のために壊される理由がわかったからやむにやまれず立候補した」と立候補の経緯を説明しました。
そして福山城駅前問題についてまず熱弁を振るいました。
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福山市長・市議の皆さん、それでも貴重な城跡を破壊しますか?
演説会で黒塗りの文書を掲げ、市役所批判のボルテージをあげる長竹候補。
長竹さんは、黒塗りになった福山市の情報開示文書を掲げました。福山市は、文化庁から、駅前の石垣を守るよう注意を受けたのですが、そのときの記録をほとんど真っ黒にすみ塗りした状態で公開したのです。ちなみに、同じような文書を(私が勤める)広島県はきちんと公開しているということです。
「こんなおごった、間違った状態を許してはいけないと思った」
「選挙にでると仕事を止めなければならなくなった。夫の会社にも圧力がかかった。選挙を手伝ってくださるボランティアのかたにも市役所サイドから嫌がらせがあった。民主主義が崩壊し切っている」と福山市の現状を批判しました。
「選挙直前、市長は石垣を残すと発表したが、地下に3分の1程度しか残らない。市民が望んだ形ではない。国の史跡の指定も取れない。」と市の石垣保存案を批判し、
「400年前の風情を取り戻したい。不思議なことに、今も水が湧き、昔と同じ高さで水が止まる」と、福山城を水辺公園にする案に自信を示しました。
さらに、現職が進めている、鞆の浦架橋問題にも矛先が行きました。
参考:
「鞆の浦」「福山城」から逃げる福山市議候補たち
「鞆の浦の埋め立て架橋は絶対に撤回する。宮崎駿監督の映画の舞台にもなっており、監督も心配している。万葉の時代から預かっているものを一部の人の利権のために壊してはいけない。なぜ、山側にトンネルを通したらいけないのですか?」と、鞆での埋め立て架橋に反対し、山側にトンネルを掘り、防災については、小型消防車や救急車を配備するという自らの代替案に自信を示しました。その上で、
「私は市長になったら100%情報公開する。今の市長は『あれもこれもなんでもする』という。しかし、『今あったらいいから。今ほしいから』でつくっていいのか? 残すべきは残し、我慢すべきは我慢しないといけない」と政治姿勢をアピールしました。
「福山城築城400年、鞆の浦国立公園指定80年をめざし、それらを生かすビジョンを策定する」と歴史重視のまちづくりを強調しました。そして、
「黒塗りの情報開示をする市政を子どもたちに渡すのか? 市民が参加する市政がいいのか? 私がやりたいことは、子どもやお年寄りが安心できる、市民が参加しやすい町づくりをしたい。これらは当たり前のことなのだが、当たり前のことをしますと言わないといけない」と市政の現状を憂慮しました。
小川候補の選挙カー。周りで、スタッフらがマニフェストを配布していた。福山駅前。
その上で、市議会批判にもボルテージを上げました。
「市政もおかしいが市議会もおかしいのです。市長には、労働組合や自民党、公明党、大企業、市議46人中41人など力のある人がことごとくついています。だが、市民というものが欠けている」と現職陣営を批判。
「私には組織はないが、ボランティアの方がたくさんおられる。選挙ポスターも貼れるか不安だったが、どこでも張られているのをみて感動した。最後まで明るく、優しく正々堂々戦いぬきたい」
と結びました。
新人の小川順三さんは、福山駅前周辺の商店街に選挙カーをとめ、自らスタッフとともにビラを配るなどして「福山市を変える最後のチャンス」「汚れきった市政を変えるには市長を変えるしかない」などと支持を訴えていました。
■選挙を終えて
票だけを見れば、現職・羽田さんの圧勝です。ただ羽田さんも有権者のわずか19%の支持しか得られませんでした。
自民党、民主党、公明党、連合広島、二人の国会議員、共産以外の県議、保守・ネオリベから社会主義者(新社会党)まで全46人中41人もの市議がついた割には票が伸びなかった印象があります。
乱暴に、味方になった市議の票を積算すれば、羽田17万〜18万、長竹1万6,000という結果になってもおかしくないのです。それが、前回、合併前の市長選挙の8万6,000からも1万5,000も減らしたのは、組織の統制も以前よりは効かない、ということなのでしょう。
一方で、市民は長年、ゴリゴリの保守からゴリゴリの左翼まで与党に取り込んで、大手企業中心の政治を進めてきた福山市政を見慣れてしまっています。不満があっても、「自分が投票に行こうがいくまいが、変わらない」と思い込んでいる人も多く、投票率が上がらなかったのではないか、とも思われます。
また、与党以外の候補者にはかなり圧力がかかるという事情はあるにせよ、有力な対立候補が、1ヶ月前にようやく決まった状況だったので、浸透は難しかったと思います。ただ、投票率が低いということは、それだけ、変化の余地がある、ということです。「変わらない」と思い込んでいた人が動けば、変わるということです。4万票の差でしたが、これは、総有権者の10%強です。要は投票率が40%を超える展開になればどうなるか分からないということです。
福山はそうはいっても社会構造は都市型であり、その分、地域や組織の縛りはとくに市街地では厳しいわけではないのです。羽田市長にとっても、うかうかはできないのであり、住民の声には今後も敏感にならなければならないと考えます。
さて、開票の後、長竹さんは「未熟さと力不足のいたすところ」と謝罪。その上で涙ながらに「市政のことをもっと多くの人に知って欲しかった。」と振り返りました。その上で、「最後まで正々堂々戦うことができた。結果は申し訳ないが、力いっぱいできた」と挨拶し、深々と頭を下げました。
長竹さんの運転手を勤めてきた男性は、「福山市の何が問題かわかっている。41人の議員が市長につくのは異常なこと。これが、福山市の体質だ。羽田さんだけでなく、三好さんの時代からの問題」と、市議らと市当局者の癒着を批判しました。
共産党以外で唯一羽田さんに付かなかった落合真弓市議(無所属)は、「福山には歴史的な遺産がたくさんある半面、要らない建物がいっぱいあるように見受けられる。これは、福山市には隠された金の使い方があるということだ」と言い残した国立市の上原公子前市長のアドバイスを引用し、「これからは、住民運動で対抗していかねばならない。そうしないと鞆の浦も福山城もぶちこわされてしまう」と呼びかけました。
長竹事務所につめかけた福山城保存や鞆の浦保存の住民運動家らからは、「長竹さんの立候補のおかげで羽田市長は、暴走しにくくなった」「明日から住民運動ができる。羽田市政にブレーキをかける意味なら大成功」「いやブレーキではなく攻めに転じないといけない」などの声が上がっていました。
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