|
自民党総裁選は安倍晋三氏の独走状態。安倍政権が誕生するのはほぼ確実な状況になっている。北朝鮮拉致事件での厳しい姿勢で知られている安倍氏だが、実は女性学の担い手からは「バックラッシュの急先鋒」として警戒されている。歯切れのよい論理を展開するフェミニズムの旗手・上野千鶴子東大大学院教授に、フェミニストから見た安倍晋三像について聞いた。 一問一答は以下。電子メールによる書面回答。 ――総裁選の各候補をどう見るか。どのような人物像か。特に有力な安倍氏についてのご意見を伺いたい。 安倍晋三氏は、幹事長に就任する前まで自民党が2005年につくった「過激な性教育・ジェンダフリー教育実態調査プロジェクトチーム」の座長を勤めた人物。その事務局長を勤めた山谷えり子氏が、男女共同参画および少子化担当大臣の猪口邦子氏と対極的な見解をもちながら同担当政務官に就任したのは安倍氏の推薦と言われている。男女共同参画行政を後退させる保守勢力がリーダーとかつぐきわめて危険な人物。拉致問題でのタカ派姿勢といい、靖国参拝といい、外交問題が争点となっているが、そればかりでなく国家主義と家族主義を強化する日本版ネオコンの領袖であり、最悪の選択だと思う。 ――安倍氏独走となった原因は何か?本人のマスク、小泉氏の後ろ盾、ほかの候補者との兼ね合い、など。 甘いマスクが女性に人気があるというが、信じられない。 小泉氏はポピュリズムの政治に長けているから、「党益」を考えて安倍氏を推したのだろうが、政策的には後継者となりえない。「国益」を考えて財界が推すような、ニューライト的な保守合理主義者(福田康夫氏がそのひとりだが)の人材が自民党にきわめて少なくなったことが問題だ。 ――もし安倍政権になった場合、どのような政治になるか。政策など。 小泉政権はネオリベとナショナリズムの奇妙な結託だったが、少なくともネオリベ的合理主義があった。安倍政権がネオコンとナショナリズムの同伴なら東アジアにとって危険。国際的にもリーダーシップを失うばかりか、「国益」をも損ねる。ネオリベのもとで息を潜めていた旧保守勢力が復活し、格差社会の不満を吸収するネオ・ナショナリズムと合体すると、日本の進路は危うい。 ――安倍政権になった場合、フェミニズムはどのように対抗するのか。 これまで獲得してきた権利を、ひとつひとつ現場で闘って守る水際の攻防戦をやるほかない。地方政治では、首長選や地方議員選などにかつてない動きがある。首長選は住民投票の性格を持つから、女性票のゆくえが影響力を持つ。地方政治に期待したい。 ――来年の参院選の行方は。野党との対決をどうみるか。 昨年の衆院選での自民大勝が小選挙区制のトリックだったことは周知のとおり。選挙区制を変えることは至難だから、同じメカニズムを反自民の流れに利用するほかない。民主党も第2自民と言われるが、民主党の求心力に期待せざるをえない。共産党を含む野党共闘に、各党が現実的になるべきだと思う。公明党はどのみち政権党についてくる。ポスト小泉の安倍政権の「失速」が追い風になるはずだから、この機をつかめない野党に存在価値はない。 ◇ ◇ ◇
|