トップ > 政治 > バックラッシュの総決算―地に落ちた日本の「国徳」・男女共同参画は世界79位!
政治

バックラッシュの総決算―地に落ちた日本の「国徳」・男女共同参画は世界79位!

日本のジェンダー・ギャップ指数は115カ国中79位。先進国最下位。調査を行った世界経済フォーラムは明確に保守系組織であり、日本はそういう組織からもやり玉に挙げられるような女性政策しかとっていない。
日本 ジェンダー 私はこう思う
 日本の男女共同参画が、まさに「国辱的」に遅れている部類に属することが明らかになりました。
 参考:男女平等指数、日本は先進国最低の79位・世界経済フォーラム(日経Web)

 【世界経済フォーラムは21日、世界各国の男女差別の度合いを指標化した2006年の「ジェンダー・ギャップ指数」を発表した。初調査だった昨年の58カ国から115カ国に調査対象を広げた結果、日本は38位から79位へと大きく後退。女性が仕事に就いている割合や国政への参加率が低いといった実態を反映し、先進国で最低の評価となった。

 日本が特に出遅れたのは労働環境と政治参加の2つで83位。労働環境は女性の労働参加率や賃金や昇進に関する男女格差、政治参加では国会議員や閣僚に占める女性の割合を反映した。】

 世界経済フォーラムは、いわゆる「ダボス会議」の主催者です。いわば、お金持ちや「えらい人」を代弁するような組織です。いわゆる、フェミニズム組織とか、あるいは世界社会フォーラムのような庶民の側の組織ではないのです。日本に当てはめて言えば、経済同友会が一番近いでしょう。

 そこからでさえも、日本はつるし上げられることになったのです。なんと先進国で最低。自称「愛国者」の方々が日々ネット上で侮蔑している中国でさえ、日本よりは上の63位です。韓国が92位ですが、儒教国である韓国の反動的な風土は世界的に有名であり、50歩100歩です。

 むろん、とくに欧州では、大きな企業も、男女差別を露骨にやっていたら今や商売にならない状況も、大衆運動を背景に広がりつつある。また、女性労働力を活用することは不可欠と言う考えが広がっていることも、今回のような調査を同フォーラムが行っている背景にあるのでしょう。

改革のすり替え―巧妙な分割統治とバックラッシュ

 ところが、日本においては、いわゆるバックラッシュ派(ジェンダーフリーやフェミニズムを攻撃対象とする右派。私に言わせれば保守でさえなく、戦前回帰である)が、三井マリ子さんへの攻撃をはじめとして勢力を拡大しています。

 「子どもや高齢者は家族で面倒を見るべきだ、福祉で支援するのはけしからん」という人が、年配者を中心にいる。また、男女共同参画予算が、国防費より高いのはけしからん、という右派の議論をネット上で見かけます。

 これは、介護保険が男女共同参画予算のメインであり、実際は、右派はそこを攻撃対象としていると思われます。

 政府の「大本営発表」は「いざなぎ景気」超えだが、実際は、中小企業は相変わらず景気が悪いし、個人消費も後退している(22日の19時のNHKニュースより)。そんな中で、政府ではなく男女共同参画関連予算に位置づけられる介護保険なり、子育て支援を叩くことで溜飲を下げてしまっている年配者らがいる。そして、稲田朋美さん、西川京子さんら復古的議員を支持してしまい、自民党に投票してしまう年配者も少なくない。

 また、自民党内でも、表面上、男女共同参画、子育て支援などといっている勢力は、今度は、新自由主義者・緊縮財政論者が多い。大蔵官僚出身の、片山さつきさんがその好例です。彼女はいわゆるネット右翼の方々の間では「フェミニスト」として評判が悪いが、アメリカ従属・緊縮財政を財務省で進めてきた1人です。あるいは、同じくフェミニストで有名な猪口前国務大臣もフリーターを「待ち組」と切り捨て、格差社会を是認しています。

 彼女たちが支持するようなネオリベラリズムでは、当然、予算引き締めで、景気が停滞し、これまた、介護保険や子育て支援にだんだん、予算は回らなくなります。

 そもそも、女性の生活条件を改善しようと思えば、「生産点」と共に、「生活点」のセーフティネットを充実させるしかありません。

 具体的には、以下のようなことです。

 旧来の自民党政治(日本型社会主義)は、企業内労組と終身雇用で男性正社員に、会社(生産点)での年功序列賃金と、安定を保証し、家族を養ってもらう仕組みであり、自民党(経営者)と革新政党(労働者)が綱引きをしながらそれを維持してきた。また、中小企業経営者には補助金や公共事業で支援した。

 しかし、「生活点」でのセーフティーネット、すなわち子育てや教育、介護、あるいは生活関連社会資本などが手薄だった。逆に言えば、男性の賃金は生活給だったので、年をとるほど上げていく。逆に女性はあくまで、「家計補助」だった。これが、男女の役割分担を固定し、人々がのびのびと生きることを阻んでいた。

 こうした状況を打破し、セーフティネットを手厚い生活点にも広げることが、男女共同参画につながるのです。男女の役割分担を固定化せずに、子育てや介護、教育は社会全体で支える。そのことが、女性の地位向上に貢献するのです。

 だが、小泉さんら新自由主義者や大手企業経営者は、「生産点」でのセーフティネットを破壊しつつ、それを補う生活点のセーフティーネットを充実させなかった。

 非正規雇用を推進しましたから、結局、男女共同参画に逆行します。例えば、私の知人の折原由紀子さんが経験されたように、非正規の場合産休を取ろうとしたらそれで雇い止め、という悪質なケースもあとを絶ちません。
 そして、能力主義を口実に、ベテラン労働者の賃金を削った。

 年功序列をやめるなら、労働者が家族を養うために必要な教育費や医療費をただにするなどしないとおかしいのですが、それはしない。公共事業も削り、中小企業や農民を直撃しました。

 口先は「男女平等」をいいながら、あるべき改革と違う改革を進めたのが、小泉さんや猪口さんら自民党内の「偽リベラリスト」です。だが、この人たちを見て、若者やインテリの一部(マスコミに影響されやすい無党派層)が、古い政治を壊してくれた、と勘違いして、やはり自民党に投票してしまったのです。

 結局、リベラルな人も保守的な人もこぞって、男女共同参画の後退ないし停滞を推進してしまう深刻な構造が出来てしまっているのです。それにもともとの女性の地位の低さが重なった。日本の惨状は起こるべくして起こったのです。

バックラッシュで得られるものは?

 しかし、国内政治的に影響力を拡大したとしても、バックラッシュで得られるものは「国徳」の低下です。冒頭にも紹介したように、世界経済フォーラムによっても、日本は、恥をかかされることになりました。

 バックラッシュ派はよく愛国心を強調していますが、私に言わせればバックラッシュ派こそが、日本の地位を低下させるもので、愛国心と対極だと思います。

 そして、経済の停滞も実は招いています。生活点のセーフティーネットを充実させないこと=小さな政府を強行し続けることは景気にも実はマイナスです。女性を非正規労働力として使い捨てにすることも需要の拡大を妨げ、マイナスです。

 結局、このような政策は少子化を招いています。あるいは、緊縮財政により景気の停滞を招いています。実際日本だけが、名目GDPは先進国では珍しくこの10年でほぼ横ばいです。

 EUは、1.4倍から1.5倍、アメリカが1.6倍なのにです。税収50兆円と景気回復を喧伝していますが、EU並みに成長していれば、税収は今頃70兆円は軽く超え、財政などとうに再建されていたはずです。アメリカも90年代に積極財政で景気を良くして財政を再建しています。

 バックラッシュ派は、以下のような経済理論で開き直っています。政府の介入を否定し、法人税やお金持ちへの税金を下げれば投資は活性化し、経済は回復するという理論です。政府税調は、法人税率の引き下げの方針を明記すると伝えられています。

 そして、洗脳された少なくない人が「財政が危ない」「福祉を削れ」、「子どもは母親だけで自己責任で面倒を見ろ」、という方向に誘導されてしまっています。

 しかし、日本の企業の負担率は、先進国の中では既に低いほうです。お金持ちへの税率も、日本は資産所得への課税が分離課税で10%と言う状況で、先進国で一番甘い。

 それでも、先進国では最も経済が停滞しているのです。設備投資も99年に小渕総理が法人税率を下げる前と比べても増えているとはいえません(法人企業統計より)。国内消費が低迷しているのだから投資も伸びないのは当然です。

 むしろ、お金持ちや大手企業から、ほんの少しだけ余計に税金を頂き、(私の持論である財務省保有の米国債を担保にした国債と併用で)社会保障や、公共投資、中小企業への支援を充実させれば却って企業、とくに労働者の99%が働く中小企業は元気になるでしょう。

 同時に、男性も女性も働きやすい環境整備へ拘束力の強い規制を行えば、それは企業側も、受け入れやすいでしょう。

 結論としては「バックラッシュ派」とことごとく反対の経済政策をすれば本来、大手企業にとってすら良いのですが、それをしないのが、日本の情けないところです。

「えらい人」中心の政治風土と自民党

 日本の惨状の根本原因は、大きいのはやはり、政治風土ではないでしょうか?役所や企業や学校などでの風土もありますが、そこでの意思決定も広い意味で「政治」になってきます。

 結局、日本の政治は「えらい人」による「えらい人」(+バックにいるアメリカ政府)のための政治になっている。マスコミも「えらい人」(+アメリカ政府)の都合の良い情報しか流さない。そして、その傾向はむしろ強化されています。

 小泉さんがリベラルに見えるが、経済財政諮問会議、規制改革民間開放会議では、大手企業の男性の代表が自分で自分に有利な経済政策を勝手に決めて、自分でぼろ儲けする構図になっています。あるいは、タウンミーティングも「オープン」に見えて、やらせ、「一般国民」を偽装した役人の大量動員などが発覚しました。

 自民党である以上「えらい人」による「えらい人」の利益を守り、拡大するための政治でしかないのです。むしろ、革新の支持基盤であった「男性の大企業・官公庁正規労働者」には譲歩していた昔の自民党より、それはひどくなっています。

 「えらい人」というのは、今までの歴史の積み重ねで、男性が多い。女性が登用されても、西川京子さんや猪口前大臣を見ても分かるよう男性の「えらい人」の論理を補完する人しか登用されない。

 残念ながら自民党が政権にいる限り、男女共同参画の前進は絶望的だと思います。同党が「えらい人」のための政党であることをやめないかぎりです。

バックラッシュ的体質が染み付く野党・革新

 では、野党・革新はどうかといえば、これまた頼りないのです。私自身の経験からそれは断言できます。

 それは、支持基盤である労働組合が、どうしても男性正社員中心だったこと、いわゆる新左翼であっても、「革命を人権に優先する」傾向が強いことと関係が深いのでしょう。

 ある野党は、女性議員が多いことを誇りながら、幹部のセクハラ問題で対応が二転三転し失笑を買ってしまったのは記憶に新しい。

 意思決定システムにおいては、以前紹介したように「料理屋で夜中に男性の『えらい人』が酒を飲みながら勝手に物事を決めてしまう」文化が根強く残存しています。そして『えらい人』だけで全てを仕切り、一般市民との共闘への努力をあまりしない。

 一般市民の女性などは意思決定からは「アウトオブ眼中」でした。せいぜい、「看板」に利用するだけで、それは、三井さんを都合のよいときは利用して、危なくなると斬った豊中市(大阪府)と同じことです。

 人権が大事、といいながら、その体質は極めて、バックラッシュ的です。自分たちの地位のためには野党全体が伸びなくても良い、というのは、自分たちのけちくさい権益を守るためにバックラッシュを進めて、日本の地位を低下させる自民党の「えらい人」に似ています。

 私自身もそのシステムに参加していい気になっていました。その体質は、バックラッシュ派と大差がなく、三井さん攻撃の主軸・北川悟司・豊中市会議員は、昨日の私です。

 三井さんが遭遇したバックラッシュ事件のことを知るにつれ、市の幹部の裏工作に苦しまれた三井さんに対して、また、不当な差別で苦しむ女性労働者の皆さんに、私はお詫びしたい気持ちにすらなりました。

 このような私は、本来、平和や人権の運動から潔く引退すべきと考えていましたが、罪を悔い、多くの方の「過去は過去としてがんばりなさい」という叱咤激励により、自分が30歳を超えて職場でも昇級し一区切りついたことも良い機会に、女性も男性もマイノリティーも平和に暮らせる社会のために一生懸命汗を流し、生きている限り罪を償おうと再スタートしたものです。

 野党・革新において、女性議員を増やすとか女性候補者を立てるといっても、「女性なら票が取れるから」とさらりといってのける神経。

 女性を擁護すると、「お前はその女性を愛しているから」などと下世話な想像しか出来ない貧しい感性。「『革命』がひとりの女性の『人権』より大事」という発言を逆切れしながら大真面目で叫ぶ人もおり、これは「国家が国民より大事」の安倍さんの改憲論と同一で、どっちも御免こうむりたい。

 私も、ある野党が参院選の比例区でひとりも重点候補に女性を立てなかったときに、憤激して別の野党に支持を鞍替えしたことがありましたが、「票が取れない戦略をしている」というのが理由で、貧しい発想しか出来なかった己を深く恥じています。

 こんな古臭さを野党が維持しているからこそ、人々には小泉さんや猪口さんら「偽リベラル」が「新しく」見えてしまったのです。

野党の奮起を

 女性も男性もマイノリティーも意見を尊重されるため、そしてそれにより、公共サービス(福祉も公共事業も教育も)を改善するということが大事なのです。また、党内議論を民主的に活性化させれば党の活性化にもつながる。

 そういう立場に立って、野党は頑張っていただきたい。そして、日本の民主主義を活性化させていただきたいと思います。

 安倍晋三さんも参院選に向けて、離党議員の復党など、いろいろ策略は練ってくるでしょうが小沢一郎さんも志位和夫さんも福島みずほさんも亀井静香さんも思い切って、小泉さん・猪口さん的な「偽リベラル」でもない、安倍さん・稲田さん的な「バックラッシュ」でもない「第3の道」(景気も良くするし、ひとりひとりを大事にして、男女格差をなくす)を、イデオロギーに囚われずに、市民と対等な立場で共同で作り出していっていただきたいと思います。それにより、自民党と違う政治をめざしていただきたいと思います。

「えらい人」任せにしない!

 もちろん、保守であれ、革新であれ、「えらい人」頼みではいけない。まずは市民が、おかしいことはおかしいときちんと言っていくことです。市民も、少しずつでよいから勉強していき、政治家や役人に任せ切りにせずにモノを申していかねばならないと思います。

 女性の場合は、今の世の中の環境そのものが阻害要因となって、厳しいのですが、だからこそ、それはそれでそういう条件に合わせた組織の作り方、運動の進め方があると思います。

 そんな方向のために、私自身も自分なりに真剣に頑張りたいと思います。
◇ ◇ ◇
バックラッシュの総決算―地に落ちた日本の「国徳」・男女共同参画は世界79位!
「バックラッシュ」経済理論で企業負担を減らしたが設備投資は増えず(財務省・旧大蔵省発表の「法人企業統計」より筆者作成)
バックラッシュの総決算―地に落ちた日本の「国徳」・男女共同参画は世界79位!
2005年厚生労働省「働く女性の実情」より。女性でも正社員とパートの賃金格差は拡大しているので、男女格差是正も日暮れて道遠し
バックラッシュの総決算―地に落ちた日本の「国徳」・男女共同参画は世界79位!
ぼろ儲けの一方で、経常利益に占める公租公課負担率は激減の企業。「法人企業統計」各年度版(財務省・旧大蔵省発表)から筆者算出。負担を少し上げれば、女性の労働条件も、生活点のセーフティネットも充実できるのでは?
下のリストは、この記事をもとにJanJanのすべての記事の中から「連想検索」した結果10本を表示しています。
もっと見たい場合や、他のサイトでの検索結果もごらんになるには右のボタンをクリックしてください。