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政治

九州で進むローカル・マニフェスト運動〜現場からの報告・西日本新聞記者〜

永尾理恵子2007/11/29
「選挙の公開討論会はつまらない」。そんな常識をくつがえしたのが、九州のローカル・マニフェスト型公開討論会だ。討論会は主催者の力だけでは盛り上がらない。九州では、メディアも積極的にマニフェスト型選挙に向けた取り組みを取り上げてきた。西日本新聞社編集委員の前田隆夫氏に、九州で進むローカル・マニフェスト運動について聞いた。前田氏は「よい取り組みをもっともっととりあげたい。我々も、より多くの地域に足を運んで、現場のいろんな取り組みを詳しく丁寧にとりあげていかなくては」と述べる。
日本 ザ・選挙 マニ研
 舞え!北京の蝶々(24) 16分18秒 [FSストリーム]

 「選挙の公開討論会はつまらない」。そんな常識をくつがえしているのが、九州のローカル・マニフェスト型公開討論会だ。ローカル・マニフェスト型公開討論会が九州で初めて行われたのは、2004年8月の福岡県八女市長選だった。当日、会場に集まった聴衆は1400人。来場者からは、「こんな討論会は初めて、新鮮だ」と驚きの声があがった。

 九州では、市民らによるローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州が精力的な動きをみせている。討論会は、政策を中心に進められ、コーディネーターの突っ込みは容赦がない。「合併するならどこの町を視野に入れるか」「合併のメリットをどう考えるか」「財源はどこからもってくるのか」など、候補者の考えがより具体的・鮮明に導かれていく。候補者には、あらかじめ政策を書いてもらい、来場者は、会場に配られた政策集と本人の言葉を比べながらよりよい候補者を選定する。驚くのは、毎回の来場者数。千人〜二千人はざらだと言う。

九州で進むローカル・マニフェスト運動〜現場からの報告・西日本新聞記者〜 | <center>北川氏(左)と前田氏(右)</center>
北川氏(左)と前田氏(右)
 ただ、討論会は主催者だけの力では盛り上がらない。西日本新聞社では、積極的にこうした取り組みをとりあげてきた。九州では、メディアも一緒にマニフェスト型選挙を盛り上げていこうという姿勢が運動を後押ししている。――ビデオコラム「舞え!北京の蝶々」第24回は、西日本新聞社編集委員の前田隆夫氏に、九州で進むローカル・マニフェスト運動について聞いた。

 前田氏は、選挙報道に対して、問題意識をこう語る。「これまで公約ともいえないような公約を放ったらかしにしてきたのはメディア。争点のない選挙なんてあり得ない。あるとしたら、取材者の怠慢だ」。「よい取り組みをもっともっととりあげたい。我々も、より多くの地域に足を運んで、現場のいろんな取り組みを詳しく丁寧にとりあげていかなくては」と述べる。

 北川氏が望むのは「善政競争の時代」。「善政」とは字のごとく、「正しくよい政治」「人民のためになる政治」(広辞苑)だ。これまでのように、政治の悪い部分がばかりに焦点を当てたり、現状の批判ばかりをしたり、足の引っぱり合いをするのではない。よいことは評価し、切磋琢磨しながら皆で政治に磨きをかけていくということ。そして、そうした取り組みは、国政ではなく、住民の目が政治に届きやすい地方の方が実現しやすいだろう。北川氏の言うように、これからの選挙は、地方から、九州から目覚めていくのかもしれない。

※詳しい内容は、映像でご覧下さい。以下、対談からの一部抜粋。

九州で進むローカル・マニフェスト運動〜現場からの報告・西日本新聞記者〜 | <center>政策中心へと、進化していく公開討論会</center>
政策中心へと、進化していく公開討論会
“宮崎県知事選”が大きなはずみに

北川
 地方の選挙が政策中心になってくると、公開討論会も実質的にその選挙を支配するようになります。一つの大きなバージョンアップの例が、宮崎県知事選挙。東国原英夫知事は、公開討論会を4回やってマニフェストでとうとうと議論しましたね。そのことで、本来なら本命であると思われた従来の地縁・血縁型の経済産業省の役人の方と農林水産省の役人の方が、あっさり負けてしまったんです。これは、マニフェスト運動に大きなはずみになったと思います。九州での反響はどうでしたか。

前田
 確かに、東国原さんが当選したのは、知名度だけではなかったと思います。彼がつくったマニフェストには未熟な部分が多少なりあります。しかし、あれを見た人は「この人は政策のことをしっかり勉強している」という印象をもったに違いない。それは他の二人の官僚出身の候補者と比べても、まったく遜色がないどころか、優れている点もあった。このことに対する支持票というのは少なからずあったと、現地にいても感じました。

北川
 それで、メディアの方に注文があります。今までは誰の親戚だとか、どこの団体がついたとか、選挙はいわゆる組織団体を中心に分析していくというのがメディアの習慣だったと思うんですね。本当に政策の是非を問うということであれば、メディアの報道も政策中心の分析に変わっていけばいいなと期待しているんです。

変わらないといけないのは、メディアも同じ

前田
 おっしゃる通りですね。我々は報道においては反省しなければならないことはたくさんあると思うんです。こと選挙報道に関しては。つまり、これまで我々の選挙報道というのはずいぶん公約をないがしろにしてきたのではないかなと思います。つまり公約と言えないような公約をほったらかしにしてきたと思うんです。

北川
 選挙というのは地盤・看板だと思い込まれてきた節もある。

前田
 「選挙とはこういうものだ」という固定観念がありますね。選挙の記事を書くときも、例えば争点がないというような記述がある。しかし、争点のないような選挙なんて、本当にあるのかと私は問いたい。言葉が悪いですけれど、取材記者の怠慢だと思うんです。その地域の課題が一つもない、争点のない選挙なんてあり得ないだろう。このこと一つとっても、今までの惰性で流れてきた選挙報道というのは、マニフェストの時代に変わらなきゃならないし、有権者の側から突き上げられて変わるものじゃないかなという感じがしますね。

北川
 マニフェストはメディアにも気づきを与えましたが、有権者にも気づきが必要です。マニフェストは、首長になるときに約束する契約書です。それを提示するわけですから、今度は選ぶ側の主権者である県民や市民にも双方向で責任がありますということも突きつけたと思うんです。マニフェストは、選挙に科学的合理性を入れて、選挙を契約書に変えるということです。政治主導ということで、政治改革にもつながります。行政改革にも当然つながっていきます。マニフェストは一つの大きなきっかけづくりだと思うのですが、そのことについてはどう思われますか。

前田
 実際に、そういう取り組みを始めている自治体がありますよね。マニフェストを掲げて当選した首長が、そのマニフェストに従って行政運営をしていく。行政のなかで、惰性、前例踏襲で流れてきた部分にマニフェストというものをガンとつきつける。つまり、「こういう方針でやる。政策の選択もこれで行く」と決めるわけです。そういうことをやっているところでは、実際に行政も変わりつつあるんです。 

北川
 いいですね。立派に立案をし、マニフェストを作成した。そうすると選挙が終わった後の検証作業を、毎年もしくは2年に1回やるとか。今までは前例主義であったのが、政策をどうやって遂行していくか、どういう成果を出したか、というふうに検証するわけです。地方は中央官庁の執行機関ではない。政策を立案し推進する機関に変わってくための刺激を与えたと思います。検証作業についてはどうですか。

前田
 九州でもそこに気づいた市民の有志の人たちが、検証作業に取り組み始めています。市役所に行って担当課の人にヒアリングをしたり、議員に話を聞いたり、アンケートをしたり、1年間ないし、1期4年間のマニフェストの達成度を有権者が自分たちの目で点検する。萌芽の時期に当たるのではないかと感じますね。実際やっているところはまだまだ少ないですし、検証の方法がつたないところもありますけれども、この一歩を踏み出しているというのは大きいと感じます。

「善政競争」を実現するために

北川
 私は、頑張っている自治体を調査をして、「善政競争」をぜひ運動していきたいと思うんです。西日本あたりでも、マスコミの方は現実をきちっと評価して、悪いところは正していかなければいけませんが、よいところもどんどん書いていただきたい。よいところをどんどん取り上げるということに関してはいかがですか。

前田
 全国にこういう取り組みがあるということを地域の人が知るということだけでも、大きなインパクトを与えるのではないかと思います。「隣でこういうことをやっているのに、なんでうちはできないんだ」ということに気づく人が一人二人増えていく。その流れができれば、地域の現場からの変化が、加速するんじゃないでしょうか。

北川
 だから、メディアの役割ってすごく大きいんだと思います。九州は、ローカル・マニフェスト推進ネットワークも活発に運動していただいていますし、青年会議所はじめ多くの方がそういったことに目覚めていただいています。マニフェストが普及したり、マニフェスト型公開討論会が千人二千人を超える聴衆を集めて開催されるとか、そういうリズムができたわけですね。第二期分権改革がスタートして、中央政府が少しミッション倒れといいますか、また古い体質に戻りそうにあるときに、私は九州から目覚めてやっていただきたいと思います。西日本新聞としてどうですか、決意として(笑)。オピニオンリーダーとして、キャンペーンをやっていただきたいですね。

前田
 ともすると、新聞で取り上げられると、批判ばかりされる。行政の人はそう思いがちで、実際そういう側面もあったと思うんですね。

北川
 行政も非公開だからダメだった。

前田
 ですから、よい取り組みというものはもっともっと取り上げてなくてはなりません。隣によい影響を与える。我々ももっといろんな地域に足を運んで、現場のいろんな取り組みというのをもっと細かく丁寧に取り上げなければならないなと感じています。

北川
 ぜひ、お願いしたいと思います。これからは私も、電子投票も含め投票のあり方や選挙の啓発活動についても、取り組んでいきたいと考えているんです。選挙前に駅前で、「選挙に行こう」とかいうティッシュペーパーを配ってる人がいますけれど、どのくらいの効果があるのかもきちっと評価をするべきですよね。見直すべき点はいっぱいあると思うのです。

前田
 ですから、東京の中央官僚や政治家が考えている選挙と、地方の最先端でやっている選挙とが、実態や制度がかみ合っていないところは多分にあると思います。公職選挙法一つとってもそうだと思います。せっかくよいマニフェストをつくっても行き渡らないという現状があります。もっと地方の方から、制度設計しているところに対して訴える力をつけなければ。その辺について言えば、地方自治体はもっと力をつけなければいけないなと思いますね。
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