写真1.グランドベイ横浜。08年1月現在、住民はあまり退去していない模様だ
2005年11月17日に耐震偽装事件が初めて公表されてから30日後の12月16日、国交省ホームページ。
構造計算書の偽装があった物件について(平成17年12月16日現在)の中の
構造計算書偽造物件:物件概要(11/22以降判明したもの)(12月15日19時までに地方公共団体から報告のあったもの)のリスト19番目に初めて登場したマンション
「グランドベイ横浜」(写真1)。
横浜市鶴見区寛政町に建つ。建築主はヒューザー、元請け設計事務所は下河辺建築設計事務所、工事施工者は東鉄工業横浜支店、下請けは木村建設で、
丸投げだという。
1999年11月に横浜市が建築確認をした。ちなみに、この年の11月には日本ERI(株)が、12月にはイーホームズ(株)が設立されている。
地上10階建て鉄筋コンクリート造、延べ面積4904m
2、分譲47戸。国交省は上記リストで
「耐震性の検証」を0.63と発表している。
国交省は検証値0.5を境に、0.5未満を使用禁止、0.5以上を耐震補強するとしているのだが、
この検証値0.63が行政(横浜市と国交省)による『お手盛り容認&隠ぺい』らしい。
【耐震偽装マンションはその上、欠陥建築でもあった】
図1.コンクリート打継ぎ部分略図(建築ジャーナルの記事をもとに描きおこした)
打ち継ぎ不良の状態(図1)から今川氏が仮定したところ、柱の耐力は約25%に低下するという。
したがって、
計算上の検証値が0.21の上、コンクリートの打設不良という施工上の欠陥が重なって危険な建築であることがわかる。
なお、
公表された0.63を算出したのは第三者ではなく、こともあろうに、施工当事者である東鉄工業なのだという。
拙稿
構造計算書偽造事件に思う(2)工事監理は行われたのかの最後には次のように書いた。
【「建築確認申請書」には、建築主・代理者・設計者・工事監理者・工事施工者の欄があり、必ず記名される。一連の工事監理者名は明確ではないが、不透明な発注形態から想像するところ、おそらく高い確度で工事監理の業務は機能していないだろう。
それは、偽装した構造設計図のとおり“にすら”施工されていない(手抜き)ことを意味する。
報道では、「耐震性が基準の15%」とか「震度5弱で倒壊のおそれ」などと言っている。
しかしそれは、机上の計算であり、実態は強度がさらに下回っている可能性もあるのだ。】
この指摘(危惧)が証明されたといえよう。
この号の
【耐震偽装事件の結果がこれなのか】と題する「編集長通信」では、西川直子編集長が次のように書いている。
「このマンションは耐震偽装だけでない手抜き工事がされていた。つまり
欠陥マンションづくりのある一部に姉歯元建築士が手を貸していたと見たほうがいい。」
さらに、
「放っておくと、法律はどんどんつくられ、暴走化する。しかもその法律をつくった側の責任は決して問わず、必ず官の有利になるようあらかじめ手配されていることを忘れてはならない。」と結んでいる。
ここでは専門的な記述は避けているので、関心をお持ちの方は本誌を参照していただきたい。計算の過程や図面、コア抜きの写真も掲載されている。
横浜の構造計算偽造マンション、強度再検証結果は市算定値よりも7割減(2007/06/04)/kenplatz
【イーホームズ藤田社長の告発】
これも「建築ジャーナル」の記事だ。2007年8月号の
【緊急論考】「耐震偽装事件は国交省、建築センターの国家的犯罪だ/建物の安全・安心はどうやって担保できるのか?」というイーホームズ社長藤田東吾氏の論考だ。
さて、耐震偽装事件発覚後から国交省はホームページに偽装物件リストを公表してきた。最初に発表されたリストは05年11月21日のものだ。
構造計算書偽装物件:物件概要
リストの欄外に、「Qu/Qunの数値は、指定確認検査機関より入手した構造図・構造計算書から推計した再計算。」とあるが、何処の誰が行ったかは隠している。
この「Qu/Qunの数値」が問題の要点だ。
記事を要約する。
●イーホームズが確認検査を行った姉歯元建築士関与物件の多くを、意図的に耐震検証値0.5末満として発表し、マンションやホテルの取り壊しに誘導した。 その一方で、日本ERIや行政が確認検査したものについては、0.5末満でも0.5以上にすり替えて耐震補強で済ませるという「嘘」の公表をした。
●国土交通省は、2005年11月の事件発覚後素早く警察を使い、イーホームズに立ち入り捜査をして、審査書類を押収した。そのうえで、偽装構造計算図書を再計算した結果の数値を操作して発表した。
●それら一連の行為は、イーホームズの責任を際立たせるために行ったものである。
●イーホームズが関与した物件のうち、実態以上に多くのマンションやホテルを取壊しへ導く一方、日本ERIや特定行政庁が関与した物件は、事実上危険であるにもかかわらず、取り壊す必要のない0.5以上の数値に操作した。
●この数値上の不正な操作により、イーホームズがずさんな審査機関であるとのイメージを国民に植え付け、イーホームズの指定を取消した。
続いて、不必要な建築基準法の改定を行った。
●この基準法改定により、(財)日本建築センターには莫大な構造審査や資格認定の手数料が入るという、官僚の焼け太り体質を見事に証明した。
●押収された計算書が行方不明となった今の段階では、姉歯偽装物件について、構造計算書の再計算を正確に行うことは不可能に近いかもしれない。
●よって、国交省が主導した不当な情報操作を証明できる者は、事件発覚当初、政治家ルートを便い国交省の描くシナリオ側に乗っていた、ヒューザ一小嶋進社長と、実際に構造設計を行った姉歯氏の二人だけであろう。(要約終り)
2006年4月20日に
ヒューザー小嶋社長が技術者のO氏に宛てたというメールを、イーホームズ藤田氏がO氏本人から入手し、了解の上公表したものだ。前述の「行政による検証値捏造、隠ぺい」を別の観点から裏付けている。
そのメールの要点を次に記す。 ※( )内及び太字は筆者による。
【(検証値)0.5を国交省が発表したのは私たちの暇疵担保責任が切れていた、グランドステージ池上の耐震強度計算言を大田区に屈けた直後、(2005年)11月25日前後だったろうと思います。私たちの責任外(ヒューザー関与外)の案件はどうするのだろうと固唾を飲んで見守っていたところ、すかさず0.5以上は強制退去方針を出さないと国交省HPで通達を出しました。
GS(グランドステージ)下総中山は
(日本)ERIを守るために0.37(のところ)を国交省は0.73で発表し、曽我部長(ヒューザー社員)の住んでいるGS浮間公園は6通りの計算数値がすべて違い、北区は当初の0.4を公表せずやり直して0.7で公表したり、
特定行政庁に責任が行かないように0.5を出してきたり、姉歯以外にも被害が出始めると、(2006年)2月15日には限界耐力計算方法(構造計算法の一つ)など他の計算方法もいいと再通達を出してきたりで、先生の「お代官様の虫の居所一つ」で敷居値が運用されてきたのがよく理解できました。(以降省略)小嶋進】
この内容は昨年7月11日にネット上「きっこの日記」等で公開されているのでご存知の方も多いと思う。
国による大犯罪の告発!/きっこの日記070711
このなかで藤田氏は「僕は、このメールの電子記録を確認し、真実であることを認識した。『建築ジャーナル』8月1日発売号に、詳しい内容を巻頭記事として書く」と予告していた。
構造計算書偽造事件に思う(4)鹿島、大林の丸投げと企業倫理
国交省が本気?丸投げ禁止へ?
※ 国交省のポーズに過ぎなかったようだ。建設業法22条は変わっていない。期待した筆者は甘かった。
【世界のどこにも見つからないバカげた建築基準法】
週刊「東洋経済」2008年1月19日号の特集(写真3)は、
【ゼネコン「現場破壊」】だ。
今回の建築基準法改正に対して怒りをあらわにする、確認検査機関の関係者(特定行政庁の元建築主事)のコメントがある。
「阪神淡路大震災の前に厚さ4センチだった建築基準法の法令集は、今10センチに」、「建築基準法を強化し確認検査を厳しくするやり方はもはや限界。建築行政のあり方を根本から考え直すべき」、
「こんなバカげた建築基準法は世界のどこを探したって見つからない」。
記事には、「多種多様な規制で建設業者をがんじがらめに縛る仕組みを作ってきたのは、
国交省の技術官僚と社会資本整備審議会建築分科会の学識経験者たちだ。」とある。
筆者も全く同意見だ。
建築文化崩壊元年(3)ワリを食う国民。むさぼる外郭団体【学識経験者を批判する理由】