トップ > 政治 > 「立川ビラ配布事件」最高裁で有罪判決確定
政治

「立川ビラ配布事件」最高裁で有罪判決確定

ひらのゆきこ2008/04/12
立川ビラ配布事件の最高裁の判決言い渡しが、4月11日、最高裁第二小法廷でありました。判決は上告棄却でした。判決は表現の自由を問うものではなく、あくまでも、自衛隊の宿舎であるところの「邸宅」に管理主権者の許可を得ないで入ったために、住居侵入の罪で有罪とするとのことです。
東京 司法 NA_テーマ2
「立川ビラ配布事件」最高裁で有罪判決確定 | <center>不当判決を訴える被告人のみなさん。(写真はすべて筆者撮影)</center>
不当判決を訴える被告人のみなさん。(写真はすべて筆者撮影)
 ビラ配布のため、自衛隊宿舎の敷地と階段部分に入った行為が住居侵入にあたるとして逮捕・起訴された、立川市内にある市民団体「自衛隊監視テント村」のメンバー3名に対する最高裁の判決言い渡しが、4月11日、最高裁第二小法廷でありました。

 一般傍聴席41枚に対し、希望者が100名。抽選の結果、残念ながら筆者は外れてしまいましたが、支援者の方のご好意で裁判を傍聴することができました。整理券配布所の最高裁南門には大勢の報道陣がつめかけ、この事件に対する関心の高さをうかがわせていました。

 手荷物をロッカーに入れ、筆記用具だけを持って金属探知機による検査を終え、階段を上って第二小法廷に入ると、最前列の中央左よりの席に座るようにとの係員からの指示がありました。整理番号に記された最前列のその席に座っていると、驚いたことに筆者の左隣には被告人3名が来て座りました。

 当事者である被告人が法廷の中に入ることができないことに吃驚しましたが、せっかくなので、被告人の方に、最高裁では弁論が1回も開催されなかったことについて質問すると、「弁論は1回もなし」と頷きながら、「(弁論を)やったら勝ちなんだけどね」と答えました。傍聴席には、葛飾ビラ配布事件や板橋高校事件の被告人の方々の姿もありました。

 今井功裁判長ほか2名の裁判官が入廷しました。裁判官の席は5つあります。横浜事件の再審の最高裁判決言い渡しのときは、4名の裁判官がいました。今回は3名なので、少ないとの感想を持ちました。6台のテレビカメラによる2分間の撮影のあと、判決言い渡しがありました。

 主文 本件各上告を棄却する。

「立川ビラ配布事件」最高裁で有罪判決確定 | <center>内田雅敏弁護士。</center>
内田雅敏弁護士。
 今井裁判長は主文を言い渡したあと、その理由について要旨を述べました。わずか2分にも満たない短いものでした。高裁の判決に沿った内容で、自衛隊の宿舎を「邸宅」と言い、その邸宅に管理主権者の許可なく入ったので住居侵入の罪に該当するものであり、この判断は憲法21条の表現の自由に違反するものではないことは過去の判例が示している、との主旨の内容でした。

 今井裁判長ほか2名の裁判官がそそくさと逃げるように法廷を退廷すると、傍聴席がざわめき、「ふざけるな」「これで終わりかよ」「こんなことのためにわざわざきたのか」「言うだけ言ってさっさと出て行った」「高裁のまんま。(あんな判決なら)オレでも書ける」といった不満と抗議の声があちこちから聞こえてきました。

 南門の前では報道陣に対し、被告人3名が不当判決を訴えていました。被告人の方の1人は、最高裁の判決の不当性とともに、「日本の民主主義は危うい」と述べ、法の番人であるはずの最高裁がその役割を果たしていないことに対し、危機感を募らせていました。弁護団の内田雅敏弁護士は、最高裁の判決を厳しく批判しながら、一審の判決の論理の素晴らしさを語り継ぐことの必要性を訴えました。

 また、本来5人の裁判官でやるべきなのに、3人の裁判官で判決が書かれたことに対し、こんな重要な判決をたった3人だけで簡単に有罪判決を出したことに言及し、民主主義の根幹に触れるものであるとして厳しく批判しました。ちなみに、もう1人裁判官がいたそうですが、その裁判官は元検察官で、(この事件に)関与していたために、回避したそうです。

 裁判を傍聴した板橋高校事件や葛飾ビラ配布事件の被告人の方々も「ビラを配っただけで逮捕されるなら、全国の何千、何百という人が捕まる。新聞の勧誘ができなくなる。非常識の極み」「杜撰な判決。傍聴人に説明できないので、裁判官はそそくさと2分ですぐ帰った。司法の恥ずべき1日となった。ビラを配布しただけで逮捕されるなら、路上でビラを配ることも、個人の家に配ることも危うくなる。住居侵入と言っていたが、治安維持法。市民の声を弾圧して知る権利を奪う。見ざる・言わざる・聞かざる。そういう社会を目指している。言論の自由を守るために頑張りたい」と述べ、それぞれ不当判決に対する憤りを訴えました。

「立川ビラ配布事件」最高裁で有罪判決確定 | <center> 最高裁の不当判決に対し、抗議の声をあげる。</center>
 最高裁の不当判決に対し、抗議の声をあげる。
筆者の感想
 この事件があったあと、サンデープロジェクトの番組スタッフが自衛隊の宿舎に張り付いていたところ、ピザ屋やクリーニング屋や寿司屋が頻繁に出入りしていたそうです。しかし、彼らが逮捕されたという話は聞きません。

 最高裁の判決では、判決は表現の自由を問うものではなく、あくまでも、自衛隊の宿舎であるところの「邸宅」に管理主権者の許可を得ないで入ったために、住居侵入の罪で有罪とするとのことですが、それでは、ピザ屋さんなどがパンフを配布するとき、一々許可を得て入っているのでしょうか。もし許可を得ていないとしたら、全員、逮捕し、起訴して有罪判決を下すのでしょうか。また、新聞の勧誘にくる人たちは一々許可を得て「邸宅」に入り、各戸の玄関のチャイムを押すのでしょうか。

 素人でもおかしな判決であるとの感想を持つのに、法の番人と言われる最高裁が、傍聴人に充分な説明もできないような判決を下すことに、裁判官としての良心が痛まないのか、大変疑問を感じました。ちなみに、この今井巧裁判長らは横浜事件再審請求棄却、袴田事件再審請求棄却の判決を出した人たちです。

 本来5名で出すべき判決をたったの3名で出したことも重大な問題ですが、弁護士さんのお話によると、当初は4名でやるはずだったのが、その中の1名は元検察で、関与があったため、急遽、外されたという説明を聞いて、このような市民生活に重要な影響のある裁判を、きわめて不透明な形で判決を出したことに対し、最高裁に対する不信感がさらに深まったような気がしました。

※立川ビラ配布事件
 被告人3名は、自衛隊のイラク派遣の是非が問題となっていた04年1月と2月、「自衛隊のイラク派兵反対!」などと書いたビラを配布するため、自衛隊の宿舎の各戸の新聞受けに入れようとしたところ、無断で敷地に入ったとして起訴されました。一審の東京地裁八王子支部は04年12月、刑事罰を科すほどの違法性はないとして3人とも無罪とましたが、東京高裁が05年12月に逆転有罪としていました。
◇ ◇ ◇

ご意見板

この記事についてのご意見をお送りください。
(書込みには会員IDとパスワードが必要です。)

[33782] 憲法擁護義務
名前:別府有光
日時:2008/04/17 15:00
アメリカには大陪審と小陪審がある。大陪審は起訴陪審といって起訴するかどうかを決める。小陪審は審理陪審といって有罪か無罪かを決める。警察がバカなのは最初から分かっている。こんなバカな事件で起訴するなと言って、検察の暴走を止める仕組みは日本にはないのか?
憲法99条は公務員の憲法擁護義務を規定する。憲法を守らなくちゃいけないのは、一般国民ではなく、まずは公務員なのだ!
[33752] ピザ屋のチラシ
名前:忍野タカユキ
日時:2008/04/15 20:26
政党機関誌や立川のビラ配りとの比較でマスコミや知識人がピザ屋などを引き合いに出して正当性を主張していますが、政治的表現とピザ屋のチラシと一緒くたにされてうれしいんですか?

ピザ屋のチラシの投函に対して何で社会が黙認しているか考えたことあります?
注文するときに役に立つという程度で、社会に影響を与えるようなものではないからでしょう。
ピザ屋を引き合いに出すということは「自分たちのビラはピザ屋のチラシと同等で、毒にも薬にもならない表現だ」って卑下することになりますよ。

社会に影響を与える表現(メッセージ)に対しては、相対する勢力は隙あらば阻止しようとするでしょう。
でも“表現の自由”によって内容に関しては手を突っ込めないので、それ以外の罪で阻止しようとするんです。
今回くしくも住居侵入という理由で逮捕・起訴されました。立川のビラは社会に影響を与える表現(メッセージ)であると認められたんです。
それをピザ屋を引き合いに出して「自分たちのビラはピザ屋のチラシと同等で、毒にも薬にもならない表現だ」ということにしていいんですか?

で、何を言いたいかというと、社会に影響を与える表現をするときは枝葉の部分でケチを付けられないように脇を甘くするなと。
“表現の自由”で守られる表現内容以外でとやかく言われないように細心の注意を払うべきだったのです。
一度やって“立入禁止・投函禁止”にされたのに、また立ち入って投函したら相手の思う壺です。
[33751] 最高裁に抗議!
名前:芹沢昇雄
日時:2008/04/15 20:15
 「反戦ビラ」を自衛隊の集合住宅のドアーポストに入れ逮捕・起訴された裁判で、最高裁が2審有罪を支持し上告を棄却したことに事に強く抗議する。
 最高裁は判決理由を「ビラ」の内容ではなく、無断で敷地内に立ち入った「不法侵入」で住民の平穏な生活を乱したいうが、鍵も扉もなく誰でも自由に出入りできる場所であり、では、他のビラは何で問題にならないのか。他の商業チラシや自衛隊支持のビラだった果たして通告し逮捕・起訴したか、今までそんな例はない。明らかに「反戦ビラ」だけ狙った官権への通告、逮捕・起訴は憲法で認められた「表現の自由」への弾圧である。
 権力は平等に行使しなければならず、この様な「恣意的」権力行使は職権乱用であり、これを最高裁が認めたことは民主主義の「死」を意味する。
[33746] ふむふむ
名前:富塚学
日時:2008/04/15 11:21
> 全く同様に行われている他の表現を一切不問にし、

ちょっと内容を噛み砕いて見ましょう。

母  「そんなことやっちゃだめでしょ、めっ」
息子 「だって、となりの○○ちゃんもやってるじゃん、僕わるくないもん」

・・・確かに3歳児ですね。




この一件で問題になっていたのは、ビラの内容ではなく、ビラをまくために立ち入ることを拒否したにもかかわらずビラをまくために立ち入った、という点です。他人の拒否の意思表示があっても他人の家に立ち入ることができるほどに、つまりは居住者が許可しない相手を家に入れない権利に対抗できるほどに、ビラをまく権利が強いとは思えません。

人権を守るという事に対する重要な第一歩は、他人の人権を自分の人権と同じくらい尊重することです。ビラをまいた人たちは、果たして居住していた自衛官およびその家族の権利を尊重していたといえるでしょうか。

困ったことに、こういったものはまずもって非常に基礎的な人格的モラルの問題であり、基本的には道徳教育によってしか解決しようがないのですが、我侭をジンケンと呼ぶ環境に育ってしまった多くのDQNを教育するすべがありません。こういうところにも、まさにモラルの伝達に失敗し、基本的常識が通用しなくなりつつある日本が浮き彫りになっているように感じます。
[33743] 無知という病
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/15 08:26
全く同様に行われている他の表現を一切不問にし、特定の政治的表現のみを刑事処罰していることが明かな以上、そこに明白な政治的意図があることは、言うまでもありません。3歳の幼児にもわかることです。


また、ここで論じるべきは、法治主義ではなく法の支配です。法治主義は、形式的な仕組みの話でしかなく、それだけで人権を保障するものでは全くありません。これもまた、基礎中の基礎です。


日本国の人権後進国ぶりは、人質司法に代表される前近代的刑事手続きや、公務員等への様々な人権規制等々等々等々等々等々、人権先進国との落差は客観的に明々白々というしかないものです。サミットを主催する国家の国民が、こんなことすら知らないという現実は、サルが服を着て威張っているようなもので、中国人や北朝鮮人が「我が国は人権後進国ではない」と言う以上に、笑えない冗談でしかありません。


困ったことに、こういったものはまずもって非常に基礎的な知識の問題であり、基本的には教育によってしか解決しようがないのですが、なにも知らずに育ってしまった多くの大人を教育するすべがありません。こういうところにも、まさに知識集約社会への移行に失敗し、世界から取り残されつつある日本が浮き彫りになっているように感じます。

[33741] なるほど、分かりました。
名前:伊藤学
日時:2008/04/15 00:12
富塚さんのコメントで分かりました。

政治的表現の自由の体現のためなら、ある特定の人(々)の権利を侵害しても構わない。確かに人権後進国かも知れませんね(笑)
[33738] 言論の自由が侵害されている???
名前:富塚学
日時:2008/04/14 23:55
この一件で言論の自由が侵害されているとは、全く思えません。

例えば同じビラを駅前で配布しても、別に問題はないでしょう。著しく通行を阻害するような方法であれば許可が必要になる場合もあるでしょうし、公道ではなく駅舎内という私有地であれば駅の所有者の許可がいるでしょうけれども。


たとえ主張が正しいとしても、主張が正しいから犯罪を犯しても良い、というのは、通りません。日本は法治国家ですからね。それとも、主張が正しいならば法を破っても良い、と考えているのでしょうか?

それとも、相手が拒絶の意志を明確に示したとしても無視して他人の所有地(自衛隊官舎は防衛省が所有しています)に入り込んでも良いというほど、言論の自由は強いものだと考えるのでしょうか(まさか、自衛隊官舎は国有だから道路などと同じ扱いにすべきだ、とは言いませんよね)?



日本のことを人権後進国などと仰る方がいますが、全くそうは思いません。少なくとも、全く人権というものをご存じない(人権は我が侭とは違うのです)ような人がジンケンを振り回した発言が出来るほどには先進的だと思いますよ。

あ、いや、そういう発言をする人が居る程度には後進的なのかな?
[33737] やれやれ、またですか(笑)
名前:伊藤学
日時:2008/04/14 23:53
>この事件は、この摘発・処罰が、政治的表現の自由への抑圧になるから問題になっているのです。その検討を抜きに、この判決を評価しても無意味です。

別に誰も「検討」を抜きにはしていないでしょう。

政治的表現の自由は最大限尊重されなければいけないものであるにしても、それは絶対無制限というわけでなく他人の権利(住民の平穏な生活)を不当に侵害することは許されないということでしょう。それでも相手は防衛省職員だから権利侵害は甘受しろということです?。

他に適当な手段が見当たらなかったというならともかく、他のビラ配布と同様、集合ポストに投函するなり、宿舎の入り口でビラを配布するなり、政治的表現の自由の体現と他人の権利を侵害しないことを両立する方法はいくらでもあった筈。

具体的な配布の態様や状況を無視して政治的表現の自由がどうだと殊更騒ぎ立てる方が間違っていると思いますが。
[33733] この程度の問題すら
名前:佐藤折耶
日時:2008/04/14 19:08
この事件は、この摘発・処罰が、政治的表現の自由への抑圧になるから問題になっているのです。その検討を抜きに、この判決を評価しても無意味です。


勿論、人権後進国の日本では、当コメント欄に見るがごとく、多くの国民は政治的表現の自由についてよく知りません。かくして後進性はますます顕著になる訳です。
[33727] 主張の趣旨がよく分からない
名前:伊藤学
日時:2008/04/13 22:56
富塚さんがまとめているとおりですが、この事件はビラ撒きそのものが罪に問われたわけではなく、管理者の意思に反して不当に侵入した、または、要求に従わず立ち退かなかったから罪に問われたわけでしょう。ビラ撒きそのものが罪に問われたわけでないことをまず冷静に認識すべきです。

>この判決を支持する人は、もし自分の家族・肉親・友人などが同じ目に遭っても構わない、もしくは納得・満足するのでしょうか。

はい、多くの国民はこの判決を受け入れると思いますし、少なくともおかしいとは思わないでしょう。
下のリストは、この記事をもとにJanJanのすべての記事の中から「連想検索」した結果10本を表示しています。
もっと見たい場合や、他のサイトでの検索結果もごらんになるには右のボタンをクリックしてください。