大阪府は5月22日、職員の給与を平均で現行より15%カットする案を労働組合に対し提案しました。
NIKKEI NETの記事「
大阪府、給与15%削減案・全国最低に、労組は反発」によると、
【〜 月額給与のカット率は、特別職では知事が30%(削減額43万5000円)、副知事20%、教育長と水道企業管理者18%。一般職では部長級14%、管理職が12%、非管理職は「若年層に配慮して」(人事室)、50歳代の10%を最高に世代ごとに2%ずつ率を緩和し、20歳代は4%とした。非常勤職員も非管理職職員の削減内容に応じて削減する。(00:30) 】
のだそうです。
この動きは「障がい者や、女性、がん患者、青少年など、社会的に立場の弱い人へのサービスカットを、『府庁も血を流しているから府民もご理解を』といいくるめるために行われたものではないか」という懸念を私は持っています。
行政の現場を担うのは専門性は持っていても非常勤など不安定な雇用形態の職員である場合も多いという(写真はイメージ)。
また県庁職員として労働、福祉や医療などを担当し、私生活では非常勤労働者の問題に取り組んできた私としては、橋下知事が今回、現場サービスを担う非常勤職員についても、非管理職(4%から10%)と同じように給与カットを行う、という点に一番怒りを覚えています。
もちろん退職手当のカットなどは、正規職員にとって人生設計が狂う話で痛いのですが、それは大阪府職員の労働組合が今後、主張していかれることでしょうから、私はあえてここでは詳しく取り上げません。
■現場支える非常勤職員に報いよ
橋下知事ご本人も、現場施設に府庁から派遣されている「えらい人」と、現場で一生懸命、専門性を生かして低賃金でも働いている(多くが女性)非常勤職員との賃金格差には唖然とされています。
【〜 府派遣職員1人の人件費が年約1000万円に対し非常勤職員は約150万円。あまりの格差に橋下知事は「給与差はどこにあるのか。もう財団法人を視察してもしかたない。大阪から財団法人の構造を断ち切らなきゃいけないメッセージを発する」と全国的な財団法人改革の旗手に名乗りを上げた。 〜】
(
橋下知事、派遣と非常勤の給与格差にあ然〔nikkansports.com〕より)
こんな構造では、よい行政サービスなどできません。せめて一人で食っていけるだけの賃金を非常勤職員にも保障すべきです。
もちろん大阪府に限らず、私の地元の広島県内も含め全国的に、人権や福祉、社会教育などの分野では「使命感に燃え、低賃金にも我慢する気風」があり、さらに分野によっては、昔「比較的余裕のある家庭の主婦が、夫に扶養されながらボランティアで取り組んでいた名残」もあり、低賃金となっているという面があることは承知しています。だが、いつまでも「善意」を当てにしていては、サービスが崩壊しかねないと危機感を抱いています。
さらにこの構造は、男女の性別役割分担を所与のものとした古い構造です。実際ある自治体の幹部が、女性の非常勤の労働組合との交渉の場で「お前らお父ちゃんに食わしてもらってるんだから低賃金でいいだろ」と暴言を吐いたことがあるのを、私は知っています。
そして今、こうした古いシステムの犠牲となる格好で、若い単身者などが本当に食うやくわずの状態で放置されているのです。またこれは別のケースですが、生活保護を受けている非常勤講師も存在するのです。
このように本来、憲法25条にある生存権などの人権を守るべき行政の現場で、生存権の侵害がおきているという構造は改めるべきです。
しかも一方で、府庁から派遣されている「えらい人」は往々にして、その現場施設の扱っている分野に無理解でやる気がないということを、大阪府民である複数の親友から聞いています。「えらい人」が「非常勤」をこきつかうのではなく、「みんながそれなりに食える給料で、それなりに専門性をもって仕事に取り組む。」そういう府にするべきでしょう。
■格差に怒った発言に責任を持つべし
もちろん今日の事態については、横山ノックさん、太田房江さんらの歴代府知事、そして府議会の責任が大きいということは承知しています。
また、田中康夫・前長野県知事が昔から強調されているように、「ハコモノへの補助金は優遇するが、その運営に不可欠なヒトにも使えるような一般財源(地方交付税)はカットする」などしてきた国の責任も大きいと思います。国が地方分権といいながら「ああせい、こうせい」と地方自治体を縛ってきたことは、私も自治体正規職員になって9年目になりますから、うんざりするほど知っています。また、労働組合も残念ながら今までは意識が薄かったといわざるを得ません。
しかし、今まさに知事でいらっしゃるのは橋下さんです。彼には、府民が元気になるような行政サービスを展開し、さらにそのために、現場で専門性を生かしてがんばっている非常勤職員の待遇を抜本的に改善するなどしていただきたいと思います。
府が率先して非常勤職員の待遇を改善することで、府内自治体や民間企業の間に正規・非正規の格差是正、そしてジェンダー格差の是正の機運が醸成される可能性もあるので、大きな波及効果が見込めます。例えば自治体独自で、重労働・低賃金で人材不足の介護労働者への報酬を上乗せする、などというところも出てくるかもしれません。
また低所得者層の賃金底上げが進めば、経済にもよい影響が出るでしょう。低所得者ほど、所得のうち、消費の割合は大きいのですから。府民も「大阪府は、格差是正の先進自治体だ」と胸を張ることができるようになるのではないでしょうか?
6倍もの賃金格差に怒る発言をされた以上、橋下知事にはその発言に責任を持っていただきたいと思います。
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