いきすぎた林道建設や森林伐採により、このままではやんばるの森そのものが滅びてしまうのではないかと危惧する沖縄県民は、6月の県議会議員選挙で与野党逆転(仲井真弘多知事の与党22人、野党26人)した沖縄県議会に熱い期待の眼を向けている。
こうした新たな政治状況が生まれた中、沖縄県議会経済労働委員会は7月28日、沖縄島北部(やんばる)の林道及び伐採現場を視察した。
県議らに説明する玉城長正氏
この日の視察は、林道の新規開設や拡張に反対する陳情を県議会に出したり、県を相手に訴訟を起こしている複数のNGOの要請に、県議会として対処するために行われたもので、経済労働委員会委員12人中、玉城ノブ子委員長(共産党)を含む8人(野党6人、与党2人)が参加。環境NGO・やんばるの自然を歩む会代表の玉城長正氏と沖縄県森林緑地課が案内し、県議会事務局のほか、仲井真知事を相手に公金差し止めと工事差し止めを求めている「沖縄命の森やんばる訴訟」、奥間川流域保護基金、そして沖縄環境マニフェスト市民の会のメンバーらが同行した。
宇嘉林道伐採地
玉城長正氏の案内で森に入った委員らは、縦横無尽にどこまでも舗装された林道が続き、林道沿いの山々がいくつも丸裸にされている風景を目の当たりにして、すっかり驚いた様子だった。点々と残る大木の切り株が、ここがかつては豊かな森であったことを物語っている。川の源流が伐採のためすっかり枯れ果てているのを呆然と見つめている委員もいた。初めは冷淡な反応を示していた与党委員も、視察が進むにつれ「これはひどい。何とか手を打たねばたいへんなことになる」ともらすようになった。
左上:宜名真林道伐採地。右上:奥川源流部伐採地。水はほとんど枯れている。左下:赤土防止柵。大雨が降るとすぐ溢れてしまう。右下:赤土がむき出しになっている。
玉城氏はやんばるの森の生態系やそこに住む動植物について説明し、林道や森林伐採がそれらを回復不可能なまでに破壊してきたこと、補助金による人工造林はことごとく失敗しており、沖縄では本土のような林業経営は成り立たないこと、などを、過去の写真や資料も駆使しながら丁寧に指摘し、委員らは熱心に耳を傾けた。筆者は別の車だったが、委員らの乗った県議会のマイクロバスに同乗していた玉城氏は質問攻めに遭ったという。
6時間の日程を終えた玉城ノブ子委員長をはじめ各委員は、この日の視察を9月定例県議会の審議に活かしていくと語り、同行の市民・県民らと「力を合わせて県民の財産であるやんばるの森を守っていこう」と握手を交わした。
1日の視察では、やんばるの森の半分も見ることはできなかったし、これまで補助金を湯水のように使い、今後もさらに林道の新規開設や拡張、森林の伐採・拡大造林を予定している沖縄県の森林行政を抜本的に見直すのは容易ではないだろう。しかし今回、県議会が自発的に初の視察を行ったことは、政策本位のマニフェスト政治に向けた、その第一歩を踏み出したと同時に、自然保護市民運動との協働の一歩でもあることを特筆しておきたい。
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やんばるの森林開発問題
やんばると通称される北部三村(国頭村・大宜味村・東村)の森林は、日本全体のわずか千分の一の面積に、絶滅危惧種のノグチゲラやヤンバルクイナ、ヤンバルテナガコガネをはじめ多種多様の動植物が生息し、192を数える固有種、多くの天然記念物や貴重種など、地球上でも希有の生物多様性に満ちた森として知られている。
しかしながらこの森は、とりわけ1972年の日本復帰以降、沖縄に基地を固定化する見返りとして政府が注ぎ込んだ多額の高率補助金を使った開発の嵐によって、ズタズタに分断・破壊されてきた。
なかでも、やんばるの脊梁山地を真っ二つに縦断して開設された広域基幹林道・大国林道(その延長路線である奥・与那林道を合わせて全長約50km。全工期1977〜1998年)をはじめ、そこから伸びる普通林道が網の目のように走り、無数の沢や動植物の生息域を分断している。敷設された林道を使って行われる自然林の皆伐は動植物の住処を奪い、赤土流出によって島を取り巻くサンゴの海を死の海に変えた。
その間、多くの自然保護団体や学者・研究者、県内マスコミなどから強い批判の声が上がり、市民による反対運動や数々の訴訟も行われてきたが、未だ有効な歯止めとなるには至っておらず、林道や伐採などの開発を免れたのは米軍演習地(ジャングル戦争訓練センター)だけ、という皮肉な現状がある。
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