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9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催

兼古勝史2008/09/20
「対テロ戦争」の現場を考える集いが開催された。マスコミのニュースでは報じられない現地の体温が伝わる報告会だった。私たちは自らの感性を磨きながら9.11を自国での生活が現地の状況と無関係でないことを知る機会にしていかなければならないだろう。
米国 テロ 映像
9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催 | アフガニスタンで「民間人の被害が増えている」と報告する長谷部貴俊さん
アフガニスタンで「民間人の被害が増えている」と報告する長谷部貴俊さん
 米国同時多発テロ事件から7年目を迎えた9月11日、その後の「対テロ戦争」の舞台となって、今も多数の民間人が犠牲になり続けている地域の現状について、国際協力NGOの現地担当スタッフからの報告に耳を傾け、私たちと9.11後の世界との関わりについて考える集いが、東京・文京区で開催された。

 「9.11から7年 〜それでも対テロ戦争を続けるのか〜」と題したこのシンポジウムは、特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)東京都台東区=代表・谷山博史氏)の主催で行われ、同センターでそれぞれの地域を担当するスタッフ・ボランティア、および国際協力・国際人権などの各NGOの代表らが報告・発表者として登壇した。

 報告に先立ってJVCの谷山博史代表は、「7年前のこの日、アメリカの同時多発攻撃事件で3000人余りの方々が亡くなりました。アメリカでそして世界中で、いわゆるテロに対する恐怖・憎しみがパニックのように連鎖反応を起こして、テロリストをやっつけろという戦争が、あたかも正しい戦争であるかのように波及していった。アフガニスタン、パレスチナ、イラク、レバノン、ソマリア、パキスタン、フィリピンのミンダナオ、多くの国で対テロ戦争が戦われました。

 そしその間、何人の罪のない方々たちが命を落としたか…アメリカで亡くなった方たちの50倍とも100倍とも言われる人々が命を落としています。しかしその実態は把握されていません。」と語り、対テロ戦争という名のもとに多くの民間人が犠牲になり続けている9.11以後の世界の状況に触れ、対テロ戦争が治安の悪化を招いていることを指摘、JVCと同様に武力では問題は解決しないと主張し続けてきたNGO・ペシャワール会の伊藤和也さんが、先月26日アフガニスタンで何者かに拉致・殺害された事件についても、形を変えた対テロ戦争の被害者である」との見解を述べた。そして、「この9月11日を、多くの命を落とした方々のご冥福をお祈りするとともに、この戦争の(本当の)原因、その行方を見定める日にしたい」と決意を語った。

9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催 | 「人道的危機」とイラクの現状を訴える田村さん。
「人道的危機」とイラクの現状を訴える田村さん。
第1部【現地報告】Skype(スカイプ)で現地の生の声を紹介 

 第1部「現地報告会」では、JVCの「アフガニスタン」「イラク」「パレスチナ」各国地域の事業担当者・ボランティアスタッフが、それぞれのエリアの最新状況をレポートするとともに、現地スタッフと会場とをIP電話のSkype(スカイプ)で直接つないで、現地のリアルタイムの声を紹介するなど、マスコミのニュースなどでは報じられない、現地の人々の体温が伝わってくるかのような報告会だった。概要は以下の通り。

報告1――アフガニスタン/長谷部貴俊さん(JVCアフガニスタン事業担当)

・軍隊が銃を持って人道支援もしている
・米軍・多国籍軍の空爆・誤爆などによる民間人の被害が非常に増えている
・公共機関の基礎的なサービスにアクセスできない人が多い
  
 現地からの声――JVCジャララバード事務所 サビルラさん

(9.11後のアフガニスタンの変化について)
 「女性の学校・教育に対するアクセス、議会・国会など民主主義へのアクセスがよくなったが、タリバン時代に比べて9.11以降、治安が非常に悪くなった。首都のカブールでさえ悪い。」

報告2――イラク/田村幸恵氏 (JVCイラクボランティア)

・現地の状況は人道的危機の事態
・多国籍軍による掃討作戦が、戦争開始時以上の混乱をもたらしている
・地域によっては避難民が戦争直後の倍(国外避難民280万人、国内避難民250万人)

 現地からの声――マキ・ナザールさん(イラク・ファルージャ出身)

(9.11の時どんな気持ちでしたか)
 「9.11で驚いたが、そのあとに9.11とイラクが結び付けられてしまったことに更に驚いた。その結果として米軍がやって来て私たちの町をめちゃくちゃにしてしまった……」

報告3――パレスチナ/報告者:藤屋リカ氏(JVCパレスチナ事業担当)

・現在非常に厳しい状態が続いている
・特に9.11以降 「テロとの戦い」という文脈の中で、パレスチナ全体がテロリストのように思われてしまうという悲しい気持ちをパレスチナの人々から聞くことが多い

 現地からの声――JVCパレスチナ現地代表 小林和香子さん
 
・エルサレムから人々が置かれている深刻な状況を報告。
・人々の生活が困難になっている。イスラエルの建設する分離壁などによって、パレスチナの人々が医療や教育へのアクセスができない。イスラエル政府によるユダヤ化政策によってどんどん権利が奪われている。

 現地からの声――「ズフール・センター」代表ハヌームさん

 「検問所を越えられない、時間がかかる、病院に着けずに亡くなった人も多い」

 Skype(スカイプ)から流れる現地の音声は聞き取りにくいものではあったが、人々の生の声の訴えに、多くの参加者が耳を澄まして聞き入った。「9.11で驚いた後、それが自分の国と結び付けられてしまったことへの更なる驚き。そして米軍による町の破壊。」というイラクのマキ・ナザールさんの訴え、そして「検問所を越えられないため、病院に着けずに亡くなってしまう!」というパレスチナのハヌームさんの叫びに胸が痛んだ。

9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催 | 「非常に厳しい状態」とパレスチナの様子を話すする藤屋リカさん。
「非常に厳しい状態」とパレスチナの様子を話すする藤屋リカさん。
第2部【座談会】 9.11は私たちの感性を磨く日 

 後半の「座談会」では第1部の報告を受けて各NGOの代表者らが議論を交わした。
JVC」代表の谷山博史氏、イラクで増加している小児癌・白血病の子どもたちへの医療支援活動を展開する「JIM―NET(日本イラク医療支援ネットワーク)」事務局長の佐藤真紀氏、人権問題の視点から対テロ戦争の違法性を監視している「ヒューマンライツ・ナウ(HRN)」事務局長の伊藤和子氏、そしてコーディネーターとして、日本でのリユース・リサイクルを通して、アジアの女性たちの自立支援活動を展開する「WE21ジャパン」事務局長の郡司真弓氏が登壇した。各パネリストの発言の一部を以下に紹介する。

谷山博史氏

 「テロリスト対善良な人々」という対テロ戦争の対立の構図そのものを問い直さなければならない。私たちがパニックになって、テロは怖いと言って戦争をしている相手がいったい誰だったのかもう一度考え直してみる必要があるだろう。この対立の構造が見えなくなると私たちはどうしたらよいかわからなくなる。

 その時、とにかく「現場」に帰ろう。この戦争で最も被害を受けている人たちが、何を見、何を語り、何を訴え、どう感じているのかということを原点に、戦争の構図をひも解いていって、それを日本に伝え、私たちのできることを紡いでいこう。

佐藤真紀氏

 イラク戦争を支持した日本の責任はもっと問われてしかるべきだ。「なぜイラクやアフガニスタンに関わる必要があるのか、自分たちのことで精一杯ではないか」という人たちもいるかもしれないが、日本国憲法前文には「戦争放棄」「国際平和に向かって努力していく」ことが明記してある。日本人が戦争を体験して、様々な反省があって、世界平和に貢献していこうという誓いを立てた。これは非常に大きなことで、だから、(私たちは)義務としてやらなきゃいけない。国際NGOの活動はこういうところが原点かもしれない。憲法の前文を見ていると、ものすごくぼくらはやらなきゃいけないなって思う。

伊藤和子氏

 人権という視点から対テロ戦争について考えてみたい。もともとテロがなぜ否定されるのか、それは罪もない人々の命や人権を奪うから許されないのだ。ところが今行われている対テロ戦争は、罪もない人の命・人権を奪っている。

 パレスチナでは、テロから守るために壁を作るといいながら、壁周辺のパレスチナの人々の家がどんどん壊されていった。ある日突然、イスラエルのディフェンス・フォースが現れ、24時間以内の退去を宣告される。そして人が出ていこうが出ていくまいが、キャタピラーという大きなブルドーザーでその家を全部取り壊してしまう。お年寄りや障がい者の人など逃げられない人がたくさんいたが、そのまま殺されてしまった。

 こうした事態に反対する米国人女性レイチェルさんが、他の人々ともに立ちはだかって人間の盾にとなって阻止しようとした。しかしブルドーザーはかまわず前進、レイチェルさんの体は文字通り八つ裂きになった。そういったことが「テロとの戦い」「テロリストから守るため」と称してして行われ、それが正しいことであるかのように言われている。そんな人権侵害が行われていることが知られない状況が今日まで続いている、。

郡司真弓氏

 戦争の約8割は輸送活動(武器や石油など)、その8割を私たちが(税金で)担っている。そういうことを考えると向こうで起こっていることは決して他人事ではなく私たちも加担している、そういう結論になるのではないか。NGOの力が弱くなっているという話もあったが、私は決して弱くなっているんではなく、私たちの意識が弱くさせている、関心がどんどん薄くなっていることを、その意味で、9.11は感性を磨き、その輪を広げていく という風にしていかなければならない。2度と私たち自身が加害者になりたくないという思いがある。 
 
 私たちには、消費者としての責任(この買ったものの利益で企業が何をしているか)投資をしている責任(預金をしている銀行がいったいアメリカの国債を買っているかもしれない、それが武器になっているかもしれない)
納税している責任(給油に使われる費用は我々の支払う税金である)がある。そしてもうひとつ大事なのが「選挙をする責任」。今度大きな選挙があるかと思いますが、ぜひ、こうした情報を得ながら選挙に臨みたいと思う。

 定員80人の会場には満員の参加者が訪れ、活発な質疑応答が行われた。テロとの戦争の泥沼化・長期化、治安の一層の悪化の中で、武力を行使している一方の主張する「対立の構図」ばかりが固定化して叫ばれ、そこに暮らす当事者の生の姿や声が殆ど伝わって来ない状況になりつつある今日、座談会での郡司真弓「WE21ジャパン」事務局長が言われたように、私たちは、自分の国や生活がこうした状況と決して無関係でないこと、真実の犠牲者は誰であるか、命や人権をないがしろにしているのは誰なのか、自らの感性を磨きながら真実を求めていかなければならないだろう。

 マスメディアやジャーナリズムさえもが現場から遠ざかっている今、国際協力NGOは、被災地域の人々を支援するという本来の使命に加えて、こうした地域の生の声を世界に発信するメディアとして、私たちの感性を水準点に戻す役割を期待され果たしているということを、あらためて実感する集いであった。

9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催 | 座談会:「対立の構図」そのものを問い直すべきと語る谷山さん。
座談会:「対立の構図」そのものを問い直すべきと語る谷山さん。
9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催 | 座談会「日本国憲法前文がNGO活動原点と話す佐藤真紀さん。
座談会「日本国憲法前文がNGO活動原点と話す佐藤真紀さん。
9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催 | 座談会:「対テロ戦争が人権を侵害していると訴える伊藤和子さん。
座談会:「対テロ戦争が人権を侵害していると訴える伊藤和子さん。
9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催 | 座談会:「9.11は感性を磨く日」と語る司会の郡司真弓さん。
座談会:「9.11は感性を磨く日」と語る司会の郡司真弓さん。
9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催 | 満員の参加者が耳を澄ました。
満員の参加者が耳を澄ました。
9.11は感性を磨き その輪を広げていく機会に〜国際協力NGOがシンポジウムを開催 | 第2部座談会 左から伊藤、佐藤、谷山、郡司各氏。
第2部座談会 左から伊藤、佐藤、谷山、郡司各氏。
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