日本の政治が、いよいよ煮詰まってきた。
麻生太郎氏が、とりあえず新しい首相になるところまで事態は進んだ。麻生首相が早速やる仕事は、政府専用機に乗ることだ。ニューヨークへ飛んで、国連総会で演説をする。きっと、そこで「得意の英語」を披露すれば、支持率が上がるとの計算も働いている。レームダックのブッシュ米大統領と会う時間は、あるのだろうか。
帰国してからの麻生は、計算され尽くした緻密な行動を、かなり迅速に見せるだろう。補正予算を出して審議入りし、決まりをつけたいと言っているから、冒頭解散のシナリオは、とうに消えている。ご祝儀支持率が高いうちに総選挙をと目論む。そして、11月2日投票が最有力との報道が躍っている。
11月2日――3連休の中日に投票日を設定するのは避けるべきではないか、との疑問を提起するマスメディアは無い。たしかに、期日前投票がかなり周知され、実際に活用する有権者も少なくはない。しかし、連休中に投票日を設定すると投票率の低下をもたらす恐れがあり、ゆえにそれは避けるべきだとの議論を提起するマスメディアが皆無だというのは、不思議だ。
アメリカ大統領選挙の情勢は、民主党・オバマ候補への支持が共和党・マケイン候補への支持を上回ってきた。リーマンショックで、争点の中心が経済問題へ移ったことが要因だ。もし、オバマ候補が勝利すれば、共和党から民主党への政権交代となる。その投票日は11月4日。
その影響が怖いからこそ、2日に、日本の総選挙を先んじてしまおうとの意図が与党サイドにある。都合が良いことに連休中だから、投票率を低く抑えることができるとの悪しき計算も働く。
有権者市民は、こうした姑息な手段に引っ掛かってはならない。選挙は、可能な限りフェアに行われるべきであり、姑息な手段が察知できた段階で、その手段を策した側の点数を減らしておこうではないか。
24日、組閣のため首相官邸いりする麻生太郎・新首相(ロイター/アフロ)
いま、麻生新首相の頭の中は、迅速な行動、派手なパフォーマンス、1つの失策も許さない、など、とにかく支持率を高くキープすることで一杯になっているはずだ。祖父・吉田茂ゆずりかと思わせるようなワンマンぶりも、すでに見えてきた。閣僚名簿を首相みずから解説つきで読み上げるなど、慣例を破るパフォーマンスからしてそうだ。内閣の目玉は「オレ自身だ」と言わんばかりの閣僚布陣。「麻生ナルシシズム内閣」と命名しておく。
新内閣の閣僚で、祖父や父から地盤を引き継いだ世襲議員は11人に上る。
(1)麻生太郎首相 (2)鳩山邦夫総務相 (3)森英介法務相 (4)中曽根弘文外務相 (5)中川昭一財務・金融相 (6)塩谷立文科相 (7)石破茂農水相 (8)浜田靖一防衛相 (9)甘利明行政改革担当相 (10)野田聖子消費者行政担当相(11)小渕優子少子化担当相
そのうち、祖父や父が首相経験者なのは4人。
(1)麻生首相(祖父:吉田茂) (2)鳩山総務相(祖父:鳩山一郎) (3)中曽根弘文外務相(父:中曽根康弘) (4)小渕少子化担当相(父:小渕恵三)
こうなると「麻生世襲議員内閣」とも命名できる。日本の政治は、本当に煮詰まっていると実感できる現状だ。焦げ付いていると言っても良い。
いずれにせよ、24日に発足した麻生内閣は、まぎれもなく「選挙管理内閣」である。自民公明与党が衆議院で3分の2以上を制し、参議院で否決された法案を再議決でひっくり返せるほどの超・絶対多数であるにも関わらずだ。
なぜなら、安倍晋三内閣→福田康夫内閣と、国民の審判を経ていない自民公明与党の「未信任内閣」が、しかも揃いも揃って無責任に政権を放り出したからこそ、麻生内閣が誕生したのだから。
麻生太郎氏が自民党総裁として、首相所信表明演説の冒頭、「未熟な総裁を2人も続けて出してしまい、与党のトップとしてお詫びをいたします。申し訳ありませんでした」と謝罪するところから始めるかどうか、見極めたいではないか。
その上で、「私のような者が、国政の舵取りをお任せいただいて宜しいのか、国民の皆様のご判断を仰ぐことから始めさせていただきます」と謙虚な態度を示し、(補正予算を速やかに通した上で)まずは総選挙をひたすらフェアに行うことが、麻生首相の当面の使命である。「天命」などでは、断じてない。
じいさんが吉田茂だから、歴史的政治家を輩出した華々しい家系の出だから、自分が首相になるのは天命だ――などと、気取っている場合ではないのである。
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