麻生政権が選挙対策として場当たり的に打ち出した「定額給付金」を丸投げされた自治体は、政府の方針通り「一律給付」できるのか? 生活困窮者の支援にあたっている法律家らが8日、都道府県知事・市町村長の計108人に公開質問状を提出した。
公開質問状を出した法律家ら(総評会館で、いずれも筆者撮影)
公開質問状を出した法律家は「生活保護問題対策全国会議」代表幹事の尾藤廣喜氏、事務局長の小久保哲郎氏、「ホームレス法的支援者交流会」共同代表の後閑一博・木原万樹子氏、「反貧困ネットワーク」の宇都宮健児氏の5人だ。11月17日にも麻生首相宛てに定額給付金をめぐる制度のズサンさを問う公開質問状を出している。
内容は「DV被害の女性」「ネットカフェ難民」「ホームレス」など現住所と住民票が違う人たちが定額給付金を受け取ることができないのは制度の趣旨からして本末顛倒ではないかというものだった。
「一時金よりも老齢加算を復活させて」と訴える吉田さん(79)
前回提出の翌日(11月18日)、厚生労働省担当の記者が舛添厚労相にこれを質したところ、舛添大臣は「原則全員に支給するから各自治体に努力していただくしかない」と答えたという。
8日、自治体に宛てて郵送した公開質問状(※文末に実物)は、「原則全員に支給」する責任は国にあるのか、地方にあるのかなどを問うている。
公開質問状提出後、記者会見が東京・千代田区の総評会館で開かれた。「反貧困ネットワーク」の湯浅誠事務局長は「国と自治体が責任を押し付けあう中で、当人が取り残されるのが一番困る」と話す。
記者会見では、丸投げされた自治体が「生活保護受給者」や「外国籍居住者」への支給をめぐって苦慮していることが報告された。政府から見解が示されていないからだ。
「給付金1万2千円」を収入認定すれば、生活保護支給額から差し引かねばならない。市民団体の交渉で京都府職員は「わからない」と答えたという。
外国籍の人には支給するのか、しないのかもまだ決まっていない、という。フィリピン国籍で約20年間、日本に在住しているデニー・トレティノさん(56、川崎市)は「外国人の生活は苦しい。なのにお金持ちがもらえるのはおかしい」と率直に疑問を唱えた。
「外国人の生活は苦しい」とデニー・トレンティノさん(56)
各種の世論調査では圧倒的多数の国民が定額給付金に反対している。1回こっきりで果たして経済効果があるのか、2兆円も財源があるのだったら社会保障に使うべきだ、などが主な理由だ。
『骨太の方針』による福祉費の削減で老齢加算を廃止された生活保護受給者の吉田喜美さん(79、東京・墨田区)は切々と訴える。「安い食べ物を探して歩く毎日です。一時金よりも老齢加算を戻して(復活させて)下さい」
「生活保護問題対策全国会議」代表幹事の尾藤廣喜氏は「セーフティーネットを壊しておいて、その場しのぎの給付金でごまかしてよいのか」と語った。生活弱者の怒りを代弁するようだった。
麻生首相は年明けからの通常国会で、定額給付金を盛り込んだ2次補正予算を成立させたいとしているが、それまで政権が持つ可能性は低い。幻の愚策となることを願うばかりだ。
(※)『公開質問状』
「生活支援定額拾付金」に関する公開質問状
2008年12月8日
都道府県知事殿
政令指定都市市長殿
中核市市長殿
生活保護問題対策全国会議 代表幹事 尾藤 廣喜
(連絡先) 〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
電話06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
ホームレス法的支援者交流会 共同代表 後閑 一博
同上 木原万樹子
反貧困ネットワーク 代表 宇都宮健児
謹啓 日ごろから市民生活の向上のため力を尽くしておられる貴職に対し、心から敬意を表します。
さて、すでにご承知おきのように、政府はこのたび総額 2兆円の 「生活支援定額給付金」を今年度中に実施する方針を固めています。これに対し、私たちは住民票を異動することができない、もっとも生活が苦しい人たちに「給付金」が行き渡らないことを懸念する立場から、11月17日、別紙のような「公開質問状」を麻生太郎首相に提出しましたが、いまだにお返事をいただけない状態です。
また、この件に対し、記者が11月18日の閣議後定例記者会見で 「定額給付金に関してですが、住所の無いホームレスやDV等で家を離れている方にお金が行き渡らないのではないかというような話も出ているのですが、一閣僚としてはどういうふうに」と問うたところ、舛添要一厚生労働大臣は 「原則全員に支給するということですから、そこから先は各自治体に努力していただくしかないと思っております。それは、いろんな工夫を働かせてもらいたいと思って
おります」と返答したと伝えられています (厚生労働省HP:
http://www.mhlw.go.jp:80/kaiken/daijin/2008/11/kl118.html)
そこで以下、「各自治体」の首長であるみなさんに質問させていただきます。ご回答は、誠に勝手ながら12月24日までに頂戴できれば幸いです。なお、多くの方にお知らせする必要のあることと考えるため、本質問状およびご回答は公開させていただきますことを、あらかじめご承知おきください。
1、舛添厚労大臣の上記発言に関し、私たちは 「原則全員に支給」という点に 重大な関心を持っています。貴自治体においては、住民票所在地に居住していないホームレス状態にある人たち、いわゆる「ネットカフエ難民」、DV被害者、いわゆる「派遣切り」にあって派遣寮を追い出されてしまった人たちが、「定額給付金」を受け取ることができますか。こうした人たちが給付金を 受給できるように、貴自治体が準備している「いろんな工夫」がありましたら教えてください。
2、「原則全員に支給」する責任は、国にあるのか、地方自治体にあるのか、 貴自治体のご見解を教えてください。
3、「生活支援定額給付金」に関して、貴引治体から国に対するご要望やご意見があれば、教えてください。
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