報道のとおり、八ッ場ダムの建設中止が難航している。筆者も個人的には中止すべきだと思うが、地元では説明会も拒否され「民主主義に反する」などとの批判も突きつけられる状況では、合意までに困難が予想される。しかも八ッ場ダムは氷山の一角にすぎない。これまでの公共事業は、用地買収や準備工事、部分的供用などで既成事実を作り、後戻りできないようにする手法で行われてきたからである。
すでに筆者が記事(*1)で指摘したように、民主党が野党の時には「ムダな公共事業はやめよう」で済んでいた。しかしこれからは、全国で八ッ場ダム状態が続発することになる。各地の「むだな道路事業」もすべて同じ状態にある。ほとんどすべての地元から「当方では中止を想定していない」と言ってくるであろう。
もちろんこれは、長年にわたる前政権のツケであるが、新政権を担当するからには「前任者のやったことですから」と無視するわけにはゆかない。自ら引き受けなければならない。
そもそも高速無料化やガソリン税暫定税率廃止は、むだな道路事業を止め、道路行政を改革するというシナリオの一部であって、それ自体が最終目的ではないはずである。高速無料化論者は「無料にしてフル活用すれば、本当に必要な道路の量が見えてくる」「借金が膨らんでも高速道路を作り続けてきた道路行政をぶった切る」等と主張している(*2)。
もし高速無料化と暫定税率廃止だけを先行して、それ以後は見通しがないというのであれば、自動車の保有・利用を促進するだけに終わる。そうなれば、むしろ「もっと道路が必要」という圧力に転化してしまう。また自動車を利用するには駐車場が不可欠であり、これにも多大な道路財源が投入されている。
鳩山首相の訪米で注目されているCO2削減に関連しても、高速無料化で「減る」要素は渋滞緩和のみであり、公共交通から自動車への利用シフトなど、その他の要素はすべて「増える」要因である。これに加えて暫定税率の廃止の影響が大きい。燃料価格と消費量の関係については、過去に無数といえるくらい多数の調査研究があるが、そのすべてで燃料価格の低下は燃料消費量の増加につながる結果が得られており、量的には高速無料化による渋滞緩和の効果を大きく上回る。
その渋滞緩和にしても、一時的には燃費の向上に貢献するとしても、結局は自動車の利用促進につながる可能性が大きい。図は環境省の委員会で提示された資料(*3)であるが、道路整備による渋滞改善(自動車の平均走行速度が向上)によって燃費が改善され、CO
2排出量が減少する効果がある一方で、逆に平均走行速度の向上、すなわち距離あたりの所要時間が短縮されて便利になった分だけ、1台あたりの自動車の走行距離が増大する関係が観察されている。
しかもこの調査の時点では暫定税率の変化という条件はない。今回は燃料価格の低下がさらに燃料消費量の増加を加速するであろう。
(*1) JANJAN記事
「民主党の「野党気分」はいつ抜ける?」
(*2) 『東京新聞』「道路を問う─高速無料化の是非」第1回・山崎養世氏(2008年12月4日)、同第2回・馬渕澄夫氏(同12月6日)など。
(*3) 環境省「第3回地球温暖化とまちづくりに関する検討会」2006年2月15日・資料3─1より。