内閣府の行政刷新会議による事業仕分けで、漢方薬等の市販品類似薬を保険適用外とする方向性で結論が下されました。これに対して、関係者から怒りの声が上がっています。
漢方薬の老舗・ツムラの社長は、「漢方医学の現状を知らない人たちの議論。なぜこういうことになるのか分からない」と強く反発。民主党のマニフェストで、漢方医学を取り上げている矛盾を指摘し、「明らかにマニフェストと違う方針であり、漢方医学を知らない人だけの議論で、保険適用外の話が進められるはずがない」と一蹴したそうです。
【ツムラ・芳井社長】漢方薬の“保険外し”に反発‐「事業仕分け」の結論を一蹴
「保険削除されたらツムラは間違いなく倒産する」という社長の危機感は当然ですが、問題は患者さんです。
「漢方薬と日本の伝統医学が消えてなくなることにもなる」わけで、主力の大建中湯が全国80大学で採用されている中で「患者さんの治療に大きな支障が出る」というのはごく正論だと思います。
このほか、Twitter上では以下のような意見が出ています。
漢方は生き残りの危機に立たされている。日本の医療は保険医療の根本から議論する必要がある。これを推し進めているのは3役では足立政務官だけ。医療界のさらなるバックアップを望む!(医師/厚生労働医系技官)。
http://twitter.com/kimuramoriyo/status/5678366507
■民主公約にも「漢方」を「確立」と
正確に言えば、マニフェスト「本体」ではありませんが、医療政策として、
別冊「崖っぷち日本の医療、必ず救う!(民主党医療政策の考え方)」を発行しています。しかし、民主党が国民に約束したことには変わりがないのです。
その中で以下のような記述があります。
●統合医療の確立ならびに推進
漢方、健康補助食品やハーブ療法、食餌療法、あんま・マッサージ・指圧、鍼灸、柔道整復、音楽療法といった相補・代替医療について、予防の観点から、統合医療として科学的根拠を確立します。アジアの東玄関という地理的要件を活かし、日本の特色ある医療を推進するため、専門的な医療従事者の養成を図るとともに、調査・研究の機関の設置を検討します。
いわゆる西洋医学だけでなく、総合的な医療を充実させましょう、その中で漢方も取り上げているわけです。
■無駄と言い出したらなんでも無駄になる
だいたい、無駄と言い出したらなんでも無駄になってしまいます。ある人にとって必要なサービスでも、いまのところ関係ない人にとっては無駄に見えてしまうかもしれない。それこそ、医療保険そのものだって、「今、病気にならない人」には、極論すれば無駄に見えるかもしれないのです。
それこそ麻生前総理が、在任中、「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」と発言されたのを思い出します。無駄と言い出したらなんでも無駄になる、という典型例を今回見た気がします。
■最終的には政治責任で決めるべき
しかし、何が必要か、何が必要でないかは、結局は民主主義、日本の場合なら国会で決めるべきことです。いろんな人の利害を持ち寄り、それをぶつけあって、予算を決める、というのがあるべき姿です。
今回の仕分けは、「こんな事業があるのか」と国民の前にオープンにしたことは有意義だと思います。埋蔵金を発見(正確には、国民に見えやすくする)するなどの成果ももちろんありました。逆に言えばそれだけ、今までの自民党政治がいかに不透明だったか、ということです。だが、本筋からすれば、国会が今まで、十分機能していなかったことをむしろ一番問題とすべきでしょう。
「愛媛新聞」の社説、「国会が機能していればこうした場を設ける必要はないはずで、議員は襟を正すべだ 」「何を『無駄』とするかは立場によって違うだろう」「主計局の下請けとならないよう納税者の視点を貫き、『削減ありき』ではない判断を示してほしい。 」というのはもっともです。
事業仕分け 国民のチェックが不可欠だ
もちろん、国会議員であろうが大臣であろうがわたしのような平職員であろうが、公務員の仕事は憲法を遵守して行なわなければなりません(99条)。従って、25条の生存権を脅かすような予算編成も禁じられるわけです。そのことを忘れてはいけません。
長妻厚生労働大臣が貧困率を公表し、問題に取り組むということで、自公政権下での25条違反の「違憲」状態が解消されると期待していました。そうした期待を覆すような予算編成にならないよう、お願いしたい。
長妻厚生労働大臣。厚生労働省HPより筆者キャプチュア。医療を守るため、財務省に対して屈することなく踏ん張ってほしい。
■まず、削減ありきが見え隠れ
今回の仕分けは、そもそもが95兆円の概算要求を何が何でも92兆円に圧縮しよう、というところにこだわっているようにも見えます。そのためには公約破りを平気でするのか、と思われたらどうなるでしょうか?
また、「仕分け」どおりの方針で予算編成をすればマクロ経済も悪化します。余計に税収も減り、財政再建も遠のきます。
■めざすべきは「透明・効率的で大きな政府」
亀井静香さんの「非課税無利子国債」をお金持ちに買ってもらう案。最近、「積極財政」派に転じた勝間和代さんの実質的な「政府紙幣発行」案。目先の財源確保ならいくらでも手段はあります。
亀井静香「純ちゃんに日本を破壊されたままでは引き下がれない!」―広島県内の新年互礼会で意気軒昂
「国民の生活が第一」なら勝間デフレ退治提案採用を
中長期的には、所得税の累進性復活、資産所得課税強化など手段はあります。消費税も将来的には複数税率(ぜいたく品は重く)という方向も考えられます。「小さな政府」ではもう社会全体が持続不能なことを直視すべきだ。
このまま、財務官僚主導の藤井財務大臣や平野官房長官の方針で予算を編成してはいけません。物事をオープンにしつつも、サービス自体大きくしていく。そういう「効率的で(一般会計は)大きな政府」をめざすべきです。いずれにせよ、 事業仕分けはあくまで、「参考意見」ではあります。総理の賢明な判断をお願いします。