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2006(平成18)年2月18日、福島県立大野病院の産婦人科医である加藤克彦医師が逮捕され、全国に報道されました。 帝王切開中の大量出血により患者さんが死亡した医療事故(死亡日 2004(平成16)年12月17日)に関して、業務上過失致死罪および、異状死の届出義務違反(医師法違反)で、刑事事件としての逮捕です。 赤ちゃんを二人残して、亡くなったお母さんの無念さは想像出来ません。しかし、法律論や臨床医学の観点から言えば、これが医療ミスであるとは考えにくいです。 事実、逮捕直後から、本逮捕への反発や今後の診療上の不安などが、産科医に限らず多くの診療科の医師より表明されています。 本事件の詳細は既に検討報告もされています、何故、逮捕抑留なのでしょう。 http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/files/houkokusho.pdf 加藤医師を支援するグループも組織され、既に800人の医師が参加しています。 http://medj.net/drkato/index.shtml 福島県の浜通り3医師会が大野病院の医師逮捕で声明文を表明しています。 http://www.iwaki.or.jp/katou.jpg 今回の事件で、大新聞の見出しは、以下のようなものでした。 「帝王切開のミスで死亡、医師逮捕 福島の県立病院」(産経新聞2月17日) 「帝王切開ミスで患者死なせた容疑、医師を逮捕 福島」(朝日新聞2月17日) ですが、帝王切開に関しては全く手術ミスは無いのです。癒着胎盤という全分娩の0.01〜0.04%という希有な疾患に対する医療事故です。 今回の事件で、中小病院で重篤患者に対する「たらい回し」が全国各地で連鎖的に起こる事も予想され、大マスコミは今後、「たらい回し」をネタにまた盛業を狙っているのでしょうか。 医療現場における事故を、個人の責任に帰着させた今回の逮捕を垂れ流し報道するのではなく、システムの問題として捉え、その発生を最小化していくべき世論喚起が大マスコミの役目ではないでしょうか? 亡くなった患者さんや、ご遺族は本当に気の毒です。しかし、その怒りのやり場を医療側に持ってくるのは不幸の連鎖、再生産であり、問題の本質は国の医療政策・行政です。 こうした不幸な事態をどうしたらいいのか。一つの解答が、「無過失保証制度」と思います。過失の有無に関係なく、結果の重大性で支払われる保証制度です。すでに医師会などが提案し、準備が進められています。現在の民事訴訟では過失が証明出来なければ、患者は泣き寝入りです。 以下、記者としての私見を述べます。 加藤克彦医師に大きな同情を覚えます。福島県立医大産婦人科講座の医局人事で福島県立大野病院に赴任し、個人の意志では無いと想像します。 事実、逮捕後に福島県立医大産婦人科講座は県立病院の一人産婦人科への派遣を中止しています。 孤軍奮闘し地域医療に多大な貢献をしていたからこそ事件後も加藤克彦医師は同病院での診療継続が可能であったのでしょう。 今回の逮捕で「異状死の届出義務違反(医師法違反)」も要件なら、大野病院の院長に責任があり、事実、加藤克彦医師は院長に報告相談しています。 安上がりで質の高い医療は幻想であり、産婦人科で進行中の問題は臨床現場の全科に波及するでしょう。 大野病院産婦人科が2人医師体制になっても、分娩数が倍になる訳ではないので自治体病院の経営は圧迫されるでしょう。 診療報酬で複数医師の病院産婦人科を優遇しても、現実に医師一人で奮闘する産婦人科医療冷遇となります。結局は大都市部の勝ち組産婦人科が利益を得るだけでしょう。小手先の診療報酬変更では問題は深刻化するだけです。 法律で産婦人科の複数配置を義務化しても、二人医師の産婦人科は片方の医師退職で閉鎖に追い込まれ、結局は地域医療の崩壊が進行するでしょう。 さらに、こうした事例は産婦人科だけの特異的問題でしょうか?結局は医療サ−ビスの供給体制を抜本的に改革しない限り、不幸の連鎖は断ち切れません。 私が、「新幹線の駅があっても分娩施設が無い日本」で紹介したような、産婦人科医不在地域の予備軍は現在も沢山あり、今回の事件で産科医が逃げ出しても誰が責められるでしょう? また、私は「日本医療の実態をご存知ですか?」で提言しましたが、義務教育同様に医療供給を国が責任を持ち、財政主導の医療改革を改め、全国一律に最低限の医療環境を保証する時期です。 今回の事件は県庁所在地であれば、起こり得なかったと思います。前置胎盤であれば周産母子センタ−に紹介され術中死は避けられたと予想します。地方であっても病院群を再編し、医療資源の有効運用を政治主導で行うべきと思います。 |
(『zigzag』より) |