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碧天舎倒産で揺れる共同出版の行方 |
2006/06/16 |
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「共創出版」(共同出版と同義)という出版形態を行っていた碧天舎(本社:東京都千代田区)が3月末に倒産し、4月6日に開かれた債権者への説明会では怒号が飛び交うなど契約者の怒りが爆発したとのことです。倒産によって、大金を払ったのに本もできなければお金も返ってこなくなる人がでてしまいました。碧天舎の倒産をきっかけに一見魅力的に見える共同出版に波紋が広がっています。
碧天舎と同様、共同出版などと呼ばれる出版を行っている出版社は新風舎、文芸社など多数ありますが、一般的には自費出版会社に分類されているようです。しかしこのような出版形態は、従来からある本の制作請負契約を交わす自費出版とは似て非なる出版形態であり、さまざまな問題があります。その違いをきちんと理解せず両者を同じ「自費出版」の枠で括ってしまうことは危険です。なお、共同出版の問題については、昨年、筆者が文芸社の問題を中心に詳しく報じました。
共同出版では多くの場合、制作費を著者が、販売や宣伝の費用を出版社が負担することになっていますが、出版経費の大半を著者が負担している場合が多いと考えられています。著者が多額の費用(多くの場合100万円以上)を負担するのに、赤字になり倒産してしまうことを不思議に思う人が多いのではないでしょうか。
碧天舎の倒産は、そもそもほとんど売れない素人の本を書店に流通させることを「売り」にして契約をとり、それで利益を上げようとする無理なシステムにある、と筆者は考えています。もちろん中には売れている本もあるのでしょうけれど、大半はほとんど売れないといっていいでしょう。
赤字になる要因のひとつは、本の売上による利益があまり見込まれないのに、販売のために費用がかかる点が挙げられます。本の所有権は出版社にあるのですから、出版点数が増えれば増えるほど大量の在庫を抱え込むことになり、倉庫代もかさみます。
もうひとつは、契約をとるための営業にそこそこの費用がかかるということです。共同出版で出版点数を増やした会社は、どこも大手新聞に原稿募集の大きな広告を出していますが、広告代だけでもかなりの費用がかかるはずです。また会社独自の出版賞を設けて原稿を募集するところが多いのですが、賞のための持ち出しもあります。出版相談会の開催や応募原稿に感想を書くためにも費用がかかります。
営業経費に見合った契約数を確保し、印刷代や編集費、広告費などを極力抑えればそこそこの利益を上げられるのかもしれませんが、過当競争になれば契約数は減ってしまいます。複数の同業者に見積もりを出している人との契約を取るために値引きをすれば、収益は減ってしまいます。
数年前には年間1800点近くも出版し、この業界で出版点数一位を誇っていた文芸社は近年では出版点数を大きく落とし、代わって新風舎が一位にのしあがってきました。もし、こうした出版社が碧天舎と同じ道をたどり倒産したら、多くの契約者が被害者となり大問題になるでしょう。同業者が増えた昨今、契約獲得を競い出版点数を稼ごうとするほど危うさの増す商法といえます。
共同出版という出版形態が広まり、素人でも出版費用を負担することで本を出版し書店で売ってもらえるようになったことを評価する声がありますが、このような評価をする人はこうした出版形態の落とし穴に気づいていないといえます。売れる可能性が低いことを承知で「売る」という宣伝で客を集める、いわば「売れるかもしれない」という著者の幻想を利用した騙しともいえる商法であり、著者に請求する制作費についても水増し疑惑が持たれます。
碧天舎の倒産で多くの被害者が出てしまいましたが、こうした出版形態の問題点をほとんど報道せず、原稿募集の広告を垂れ流しにしてきた新聞社はどれほどの責任を感じているのでしょうか。碧天舎の倒産で、ネット上にさまざまな情報が飛び交っていますが、こうした商法で本を出版した著者は、意外と問題点に気づいていないようです。
いわゆる自費出版(著者に所有権のある本を製作会社に請け負ってつくってもらう出版形態)でも、すばらしい本や価値のある本はたくさんあります。本を出版したいという人は、安易に甘い誘いに乗らずに良心的な製作会社を探し、納得のいく本づくりを目指すことをお勧めします。
ちなみに文芸社と解約した筆者は、編集作業やレイアウトを自分で行ったほか表紙も自分で描き、納得のいく本づくりを楽しみました。パソコンで版下を作成して入稿し、ページ数も大幅に増やして上製本とし、200部(文芸社の著者贈呈分の2倍)を文芸社の半分以下の費用で出版しました。
(松田まゆみ)
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