|
JanJan関連記事:特集・原発を考える 原子力発電所の耐震設計審査指針の改訂を前に、5月24日から6月22日までの30日間、一般市民の意見募集(パブリックコメント)が行われました。7月11日付拙稿『原発による住民被曝のリスク、ついに「国」が認める!〜〜大地震に際して(耐震指針の改訂)』では、寄せられた意見総数約680件、「現在これをどう反映するかが問われています。」と冒頭に記しつつも、中身は今回の改訂案の最大のポイント『残余のリスク』に絞ってお伝えしたのでした。今回は、多数のパブコメへの対応についての続報です。 ★パブリックコメントは法制化された パブリックコメントというシステムは、2005年(平成17年)6月の行政手続法の改正により新設された「意見公募手続」によるもので、今年4月1日から施行されています。 http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/iken_koubo.html そこには「命令等制定機関は、意見提出期間内に命令等制定機関に提出された命令等の案についての意見を十分に考慮しなければならない。」(行政手続法第42条)とあります。命令等とは政令・省令・告示のことで、意見公募やその結果の公示は電子政府の総合窓口(e-Gov=イーガブ) にもあります。 すなわち政策決定過程に市民の意見を反映(法では考慮としてある)するために法制化され義務付けられたもので、任意の意見聴取(パブコメ)とは決定的に異なります。原子力に限らず、食品であれ人権であれ、ありとあらゆる『命令』が対象となるので、これから述べることは、他のあらゆる分野においても共通の課題として、是非参考にしていただきたいと思い、記しておくことにします。 今回のパブコメは、原子力安全委員会としては同法施行後初の意見募集でした。対象は「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(案)」およびそれに関係する2文書です。改訂原案は、原子力安全委員会のもと、専門委員十数名で構成する耐震指針検討分科会(以下分科会と表記)で審議・作成してきたもので、パブコメへの対応もこの分科会で行うことになっていました。ところが―― ★反映すべき意見は、たった2箇所だけ! パブコメ終了後初めて分科会が開催されたのは7月4日。これだけの意見がどのように反映されるのかと、固唾を呑んで傍聴していました。ところが事務局が用意した事務局整理案 (当日配布資料震分第44−5号。URLは前回紹介済み)』なるものは、応募意見に対する回答案の作成を試みているのですが、いずれの意見も改訂原案内の文言等を引用した上で「分科会ではこのようになった。(従ってご意見を取り入れる必要はない。)」と門前払い。それはあたかも意見を求めたのではなくて、質問を受け付けたかと錯誤させるような代物です。それを延々と聞かされるのでした。傍聴していてあっけにとられ、「質問を出したわけじゃない。失礼な!」と、何度叫びそうになったことか。 しびれを切らしたS委員やI委員が進め方等について発言しました。すると、別の委員が『議論の蒸し返しは』などと牽制します。指針案やその経過を読んだ上で、落とされたもの、盛り込まれたものについて、異議を唱える意見が届いたのです。そうしたら「改めて再検討」するのが筋でしょう。それは蒸し返しではありません。 もっともこうした風景は、これまでのパブコメで少なからず目にして来たことです。昨秋の原子力長期計画(その後原子力政策大綱と名称替え)もまったくそうでした。しかし上に書いたようにこの4月からはわけが違うのです。これではのっけから違法行為です。 結局次回を7月19日に開催、それまでに委員から指針案への修正提案とパブコメへの回答意見案を出してもらい議論する、ということをようやく事務局がアナウンスして終わったのでした。実に3時間も無駄な時間を費やした後に。 ★仕切りなおしの分科会 いよいよ7月19日の第45回分科会。冒頭から石橋克彦委員(神戸大学教授)が、用意した会議資料『「提出意見」を十分に考慮する必要性と、改訂指針案とりまとめ後の状況の変化』(震分第45−5−1号)をもとに上記行政手続法の改正と同第42条を紹介、パブコメの扱いについてと島根の活断層に関して(後述)正論を展開されました。 http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/taisinbun/taisinbun045/siryo51.pdf まず前者については、『提出意見を十分考慮することが、過去43回の分科会の審議の結果と同等か同等以上に「重い」』『提出意見では、分科会で十分審議されなかった点や、異なる視点から、数多くの貴重な指摘がなされており、改訂指針案をよりよいものにしていくうえで、それらの考慮がきわめて重要』等々。さらには『公示した改訂指針案に改善すべき点はなく、意見に対してはQ&Aを示せばよいと考えるとしたら、それは行政手続法の趣旨を踏みにじり、それに違背する行為だということになってしまう。』と。 ★改訂原案修正の兆し こうした意見に誘発されてか、他の委員からも同様の趣旨やおおむね良識的な発言が続いたのです。現行指針でも『残余のリスク』は認めていた、とする奇妙な事務局回答案(前回記事参照)についても、現行との違いを明確にという意見が出てきました。それというのも、提出されたたくさんの真剣な意見に触れることで、改めて委員に多くの気付きをもたらしたということでしょう。早く新指針をと焦るばかりに、大部な意見を前に拙速を招きかねなかった原子力安全委員会は、さすがに軌道修正を図らざるを得なくなったのでした。 この日配布された当日資料の「提出意見と回答案」(震分第45-2-1〜9号)も、前回の事務局案より大分変わり、改訂原案に対する委員の修正案を待つ姿勢になってきました。 http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/taisinbun/taisinbun045/siryo2.pdf その後審議に入り、意見を取り入れたいくつかの修正案が具体的に提起されていきました。 石橋委員のもう一点の指摘は、『改訂原案策定後に活断層に関して大きな状況の変化があった。今回提出された意見には、この問題の重大性を指摘するものが多い。それらの意見を十分に考慮しつつ、関連規定を根本的に再検討する必要がある。』というものでした。これについても、活断層の専門家である衣笠委員が『非常に深刻な問題』であると認める発言をされたのです。 しかしとうてい1日で終わるわけもなく、時間切れとなって次回8月8日に持ち越されました。活断層を巡る再検討については、今後の最大の注目事項です。 ★インターネットでアクセスできる 今年7月は第1回分科会からちょうど5年目に入るのですが、これまでの記録はすべて原子力安全委員会のホームページで見ることができます。これは原子力委員会事務局の感心なところで、時折催促が必要なものの、ほぼ網羅されています。 ・これまでの会議資料は http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/taisinbun.htm ・これまでの会議速記録は http://www.nsc.go.jp/senmon/soki/taisinbun/taisinbun.htm にあります。上述の審議詳細は19日の速記録に見ることができます。 ・いずれも下記から入ることができます。 http://www.nsc.go.jp/siryo/siryo_f.htm また、安全委員会では質問・意見を常時受け付けており、これについても6月に制度化されたことから、このパブコメの取り扱いについて筆者は9つの意見を提出しました。安全委員会のホームページ『意見・質問箱』に掲載されています。 http://www.nsc.go.jp/taiwa/taiwa_f.htm こうした制度化と近年のインターネット環境のもとで、開かれた原子力行政に向けて、また悪評高き現行耐震指針の「改訂」に向けて、どこまで古い衣を脱ぎ捨てることができるのか、最後まで見届けご報告していきたいと思います。 |