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牛肉の安全性を問う(1)宮崎県の取り組み

宮田新作2006/09/04
近代的、衛生的な加工場で素性のはっきりした牛を確実に処理する―――BSEに対する対処法はこれに尽きるのではないだろうか。
宮崎 食 NA_テーマ2
 BSE問題でアメリカ産牛肉の安全性について関心が高まっているが、国内産牛肉についてもさまざまな対策が進んでいる。我々の食の安全に関する意識の向上とIT技術の進歩によって日本の畜産業はいまどうなっているのかを追った。

 牛肉の生産量が北海道、鹿児島県に次いで全国で第3位を誇る宮崎県。現在、11,200戸の畜産農家が26万8千頭の肉用牛を飼育している。戦前・戦中は軍用馬の産地だった宮崎県にとって、牛や豚など畜産業は県の農業産出額の55%、肉用牛だけでも17%を占める基幹産業である。

 2000年春、宮崎県の畜産業に大きなダメージを与える出来事が起きた。悪性の家畜伝染病である「口締疫」が発生したのである。口締疫ウィルスはその感染だけで死に至るものではないが、強い感染力を持つためにその農場の肥育牛はすべて殺処分とされ、それ以上の被害拡大は防がれた。しかし県産牛肉は一時、出荷停止のダメージを受けた。畜産が県経済に大きな比重を占める宮崎県はこの出来事をきっかけに、肉用牛の安全対策に力を入れるようになった。

 その1つが「宮崎牛トレーサビリティシステム」の構築である。現在、政府も「牛個体識別情報伝達制度(牛トレーサビリティ制度)」を行っているが、ここでの情報に加えて同県では牛の生産者や飼料履歴などもわかるシステムを独自に作っている。(例:本日発売される牛(みやちく銀座店))

 宮崎県東京事務所の担当・後藤氏は「トレーサビリティシステムは消費者に安心を提供するばかりでなく、生産者にとっても大切に育てた牛がどこに運ばれてどんな品質の肉としてどこで売られたのかがすべて分かるようになる利点がある。生産者にとっての教育でもある」と述べている。

 BSEが広がった原因は肉骨粉などの飼料ではないかと考えられているが、国内でも海外でも現在のところBSEの伝播経路は解明されていない。世界中のどこかで発生したBSE感染牛が、処分され、肉骨粉という飼料の形で牛の食物連鎖サイクルに入り感染が広がった、というのが有力な説である。こうした原因物質の追跡には牛の血統情報や飼料履歴が欠かせない。宮崎牛はそうした洗いざらいをオープンにすることで、牛肉の安全性を消費者にアピールしている。

 宮崎県が行っているもう一つの安全対策が「ピッシング」の廃止である。(ピッシング“0”ゼロ 宣言(宮崎県))
 ピッシングとは、と畜場において行われる作業で、と殺銃で牛の頭を撃ち失神させたのち、その穴にワイヤー状の器具を挿入して脳や脊髄組織を破壊し牛が暴れるのを防ぐものである。国内の多くのと畜場では作業員の安全確保のためにピッシングが行われている。

 しかしこの作業に対しては、BSE感染牛の脳に蓄積した異常プリオンタンパク質が流出し施設が汚染される危険性が指摘されている。また使用するワイヤーの完全な洗浄・消毒が困難なことや、急激な心臓の伸縮によって中枢神経組織が血管を介して他の臓器に移行する可能性も考えられる。脳や脊髄に蓄積した異常プリオンタンパク質は加熱や薬剤に対して強い耐性をもち、ちょっとやそっとでは壊れない厄介な物質である。しかも種の壁を越えヒトにも伝播すると考えられている。ヒトのヤコブ病(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)はBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)と同じプリオンが原因であるとされる。

 アメリカやヨーロッパでは既に行われていないピッシングであるが、国内でピッシングを廃止している施設は4割ほどに過ぎない。(ピッシングに関する実態調査結果について(厚生労働省))
 そうした中で宮崎県は2005年「ピッシングゼロ宣言」を行うなど積極的な姿勢を示している自治体の1つである。

 最新のと畜場では牛の解体はあっという間の作業だという。前述の宮崎県の担当者は「銃を撃った30秒後には金具につるされ頭部は落とされ、2分後には皮が剥がされ、5分後には枝肉になっていますよ」という。(例:ミヤチク高崎工場
 牛は暴れる間もなく解体されていく。

 近代的、衛生的な加工場で素性のはっきりした牛を確実に処理する------BSEに対する対処法はこれに尽きるのではないだろうか。

 日本国内では全頭検査という言葉が先行している。食品衛生法上は21ヶ月齢以上についてのみ全頭検査が義務づけられている。ところが実際にはすべての都道府県で自主的に全頭検査が行われている。農水省の担当者によれば「検査には検出限界があり感染していても検査結果に引っかからないものがある」という。全頭検査も万能ではないのである。
 輸入再開にあたり日米間でもめている20ヶ月齢以下の牛に対して検査が必要か否かという議論ではなく、問題は、特定危険部位を確実に除去できているか否か、なのではないだろうか。これは輸入牛肉に限った話ではなく国内産についてもである。(つづく)
牛肉の安全性を問う(1)宮崎県の取り組み
「宮崎牛の牛丼定食」600円(東京・新宿みやざき館)
牛肉の安全性を問う(1)宮崎県の取り組み
宮崎県産品のアンテナショップ・新宿みやざき館
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