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飲酒運転に対する社会的な制裁が強まっているにもかかわらず、現在も警察官を含む公務員による飲酒運転が続々と報じられている。これらの報道は、JanJanでもきのうの不祥事・あしたの不安にまとめられている。 ただしこれらは、以前はマスコミ上で無視されていた事件が取り上げられることによる見かけ上の現象である可能性もあり、実数として増減しているのかどうかは、正確な統計を調査する必要がある。 これまでも公務員の飲酒運転が野放しであったわけではない。職員の懲戒処分を公開している某自治体のホームページによると、2002年に酒気帯び運転で検挙され、続いて翌年にも酒気帯び運転で検挙された職員が、実際の事故には至っていなくても懲戒免職に付されている。実名こそ表示されていないが、職務と年齢が明記されているから、地方都市では事実上の実名公開に等しい。このように、今になって急に処分強化が提唱されているわけではない。 筆者の民間企業での経験でも、飲酒運転で検挙されると、懲戒免職にはならないまでも、全社に実名が貼り出され、その後は一生窓際族と言われていた。ほかに実名が貼り出されたケースは、深夜に泥酔して会社に侵入し、窓ガラスを次々割る蛮行を演じた人くらいであったから、これと比較しても、飲酒運転に対する制裁はそれほど甘いとは言えない。それでも飲酒運転は後を絶たなかった。 最近、いくつかの報道で、呼気中のアルコール分を検知して自動車のエンジン始動を阻止する装置(イグニッション・インターロック)の取り付けが提唱されており、機器としてはすでに製造されている(写真)。しかし、ドライバー本人でなく同乗者が飲酒しているのを識別できるのか、香水や整髪料、あるいは車外から同様な反応を引き起こす有機物質の流入などにも反応する誤動作をどのように識別できるのか、などについて課題が多く、法的に義務化するとなると、かえって簡単にはできなくなる。 かりに誤動作を回避する機能が備わっているとすれば、悪意を持ったドライバーと協力者がいるかぎり、ただちに抜け穴として利用されるにすぎない。また機械というものは必ず故障時の対応を考慮しなければならず、修理・検査のために動作を止める操作も不可欠である。もちろん法律によって、装置を不正に操作したときは、別に罰則を設けるという対応が考えられるだろう。しかしこれでは、飲酒運転そのものの防止にはならず、法律を作る側の言いわけにすぎない。道路交通法や道路運送車両法がさらに分厚くなるか、「○○の△△を□□する法律」といった類の個別法が増殖するだけであろう。 これは、学校で刃物による事件が起きると、学校に刃物が持ち込まれないように児童・生徒の持ち物検査をする発想に似ている。そうではなく、交通事故そのものの発生要因を減らす対策が必要である。筆者の前記事(飲酒運転防止の本質的対策はあるか)に示したように、現状では自動車走行kmあたりの事故件数は一定値に収束し、自動車走行kmに比例して事故が起きる状態になっている。 マスコミはこうした構造的な要因には触れず、「自己責任説」に終始している。「便利だ」「必要だ」という、一般読者の“自動車は生活必需品”あるいは万能論に迎合しているのだろうか。また、マスコミは危険運転罪に該当するような、故意性の強い事故は取り上げるが、その他にたくさん起きている一般交通事故は、毎年の交通安全週間と、交通安全白書刊行時の「季節の話題」でしかない。 世界の情勢は、まったく別の方向に動いている。WHO(世界保健機構)でも交通事故を重要テーマとして捉えているように、交通事故はむしろ公衆衛生的な分析と対策で考えるべきであり、個人の問題ではなく、国家的・社会的な仕組みの問題であると認識されている。なおこの考え方は、交通事故にとどまらず家庭内事故についても同様である。 少なくとも欧米先進国では、学校教育で、地球温暖化や大気汚染の面などもあわせて、自動車に依存した社会の負の側面を教え、子どものころから自動車に依存することによる健康リスクの増加(肥満など)などまで教えるプログラムが導入されている国もある。 (1) 飲酒そのものは違法ではない。 (2) 免許さえ持っていれば、自動車の運転も違法ではない。 (3) 自動車以外に交通手段がない。あるいはそう思い込んでいる。 この三要素が存在すれば、いかに制裁を強化したところで飲酒運転の発生は確率的に不可避であり、現に飲酒運転が続々と報じられている。この三要因をいかにシステマティックに減らしてゆくかが、本質的な交通事故の防止対策である。しかし(1)と(2)に制限を加えることは、あまり現実的とは思われない。だとすれば(3)が重要である。 福岡市の事故現場の周辺は、地方都市としては意外にも鉄道とバスが利用できる地域である。鉄道は、かつては不便な国鉄ローカル線だったが、今は一日約40往復、バスも同程度あり、福岡都心から直通便もある。仕事には使えないとしても、レジャーでは分秒を争う移動は必要ないだろう。「出かける時に、車のキーを持たない」ことが、飲酒運転の最大の防止法である。飲酒運転に関する行政の本当の責任とは、飲酒運転の処分を強化することよりも、鉄道やバスをもっと便利にし、その利用を市民にアピールすることである。 ◇ ◇ ◇
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Smart Start社のホームページより
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