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自民党政務調査会は貸金業規制法の抜本改正の骨子を06年9月19日発表、自民党の合意を受け、臨時国会に金融庁は改正法案を提出する。自民党の合意内容は、当初、金融庁から提案されたものよりは改善されたが、利息制限法の金利見直しで債務者の負担増になり、出資法と利息制限法との上限金利の差グレーゾーンの矛盾は縮小されるだけとなった。 骨子の内容は、利息制限法の上限金利を適用した64年・68年の最高裁判決から消費者金融業者(債権者)を救済するために、83年に制定した貸金業規制法に第四十三条(みなし弁済)を組み入れた状況と似ている。 【貸金業規制法の抜本改正の骨子】 貸金業規制法の抜本改正の骨子の核心部は、 1.出資法の上限金利を20%に引下げ及び貸金業規制法上の「みなし弁済」制度(43条)を法の公布から概ね3年で廃止。 2.特例として、上限金利引下げ後、30万円以内・1年以内の個人向け貸付けの上限金利を25.5%にし、2年間、実施する。 3.利息制限法の上限金利を、貸し金元本額が50万円未満は20%、50万円以上500万円未満は18%、500万円以上は15%に変更。 4.法公布後の猶予期間3年、さらに特例金利2年、法の完全実施はおおむね5年後の11年ごろ。 【貸金業者は腹を括ろうとしていた】 今回の出資法の上限金利を引下げる大きな要因になったのは、最高裁が「みなし弁済」の適用条件を厳格にし、利息制限法を適用してグレーゾーン金利分の元金繰入れ及び過払い金の返還を認める判決を次々に下したことによる。その結果、05年度過払い請求返還金は消費者金融大手4社で合計758億6300万円になった。(下表参照) ●アイフル 05年度過払い請求返還金 131億800万円 05年度末利息返還損失引当金 210億7400万円 05年度末貸倒引当金 1717億1500万円 ●アコム 05年度過払い請求返還金 296億1600万円 05年度末利息返還損失引当金 237億円 05年度末貸倒引当金 1316億1900万円 ●武富士 05年度過払い請求返還金 186億9900万円 05年度末利息返還損失引当金 225億円 05年度末貸倒引当金 1504億3000万円 ●プロミス 05年度過払い請求返還金 144億4000万円 05年度末利息返還損失引当金 239億7000万円 05年度末貸倒引当金 1356億7200万円 ●合計 05年度過払い請求返還金 758億6300万円 05年度末利息返還損失引当金 912億4400万円 05年度末貸倒引当金 5894億3600万円 *レイクはアメリカ資本のため日本のWEBサイトでは決算書を確認することができない。 消費者金融は、さらに過払い金返還請求が増えることを見込んで、05年度末決算で「利息返還損失引当金」を新設し、消費者金融大手4社で合計約910億円(実績の20%増)、貸倒引当金は同約5900億円計上している。 しかし、自民党の「貸金業規制法の抜本改正の骨子」は、10万円以上50万円未満と100万円以上500万円未満の利息制限法の金利引き上げと施行後の特例措置(上限金利(25.5%・2年間)の引き上げ)は、貸し金業者の利益確保を保証するもので、裁判で過払金返還請求が出来なくなる(図の黄色とピンクの部分)。 さらに、利息制限法の貸付高100万円以上500万円未満の金利3%の引き上げは、アイフルの場合、同範囲の貸付残高は約8280億円(06年3月期)で、現行利息制限法金利と比べて248億円の利息収入増となり、大きな救済策となっていてる。 これらは、新たに「利息返還損失引当金」を計上し、腹を括ろうとしていた消費者金融(債権者)に救いの手を差し伸べることになる。 また、新たなグレーゾーン(図の青の部分)を残し、貸金業規制法43条の廃止により、1960年代と同様の裁判が起きる状況を残すことになる。 【グレーゾーン廃止の歩み】 54年制定された上限金利109.5%の出資法と同年制定された上限金利20%の利息制限法との金利差によるグレーゾーンは、社会問題化した60年〜70年代のサラ金問題、90年代の商工ローン問題、00年代のヤミ金融問題で、出資法の上限金利が引き下げられ、縮小してきた。 ●1954年度 出資法金利 109.5% ●1983.11.1〜 出資法金利 73% ●1986.11.1〜 出資法金利 54.75% ●1991.11.1〜 出資法金利 40.004% ●2000.6.1〜 出資法金利 29.2% グレーゾーンに対しての最高裁判決は、62年6月大法廷8対5で出資法上限金利を適用、その後は、利息制限法の立法趣旨をとるべきの意見が多数派になり、64年11月大法廷は9対4で、68年7月大法廷は8対5で利息制限法上限金利を適用した。 その結果、簡易裁判所でも、訴えれば利息制限法上限金利が適用され、返還請求が出来るようになった。 サラ金問題が社会問題になった70年後半、政府は貸金業規制法を制定し貸金業者を最高裁判例から救済しようとしたが、上記のように最高裁の判断が「利息制限法の上限金利適用が確定」した中で、政府提出議案とすことができず、82年に自民党などの議員提出議案で制定し「みなし弁済」制度を導入した。 これは、法案審議で、政府委員が「グレーゾーンの確保を認めるという法制度を採用しようということ」(参ー大蔵委員会:82年8月19日)と説明したことでも明らかなように、消費者金融業者(債権者)の利益を確保する法律だった。 83年11月の貸金業規制法施行後は、裁判で「みなし弁済」制度の適用要件の可否で争われ、最高裁判所は、99 年1月21 日、03 年7月18 日、04 年2月20 日、04 年2月20 日、05 年12 月15 日、06 年1月13 日)(同年1月19 日、1月24 日、3月17 日、3月30 日も同旨)と、貸金業規制法43条「みなし弁済」の適用要件を厳格に解釈すべきとし、利息制限法の上限金利を適用し「不当利得返還請求 」を認める判断を次々にくだした。 今回の自民党の抜本改正の内容は、貸金業規制法を制定した83年と同様に消費者金融(債権者)の利益を確保するためであり、三権分立の司法が判断したものを覆すための立法は許されるのか、疑問を持たざるを得ない。 【ここにもアメリカの影】 消費者金融の金利について、アメリカも大きな関心を寄せていた。 小泉内閣から始まった日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書(PDF)(2005年12月7日)で、『ノンバンク金融:消費者や小規模企業が利用できる貸付の供給を増やすため、債権の法的有効性の明快な根拠を示すノンバンク消費者金融や商業金融の法的枠組みを改正する。』と、初めて要望してきた。 また、在日米国商工会議所は、最高裁判決を貸金業者に不公平と訴え、『返済不能であることを表明した借り手に対して、いわゆる過剰利息(出資法に定める法定上限額まで)の無効請求を制限すること。』(PDF)やアメリカ資本のGEコンシューマー・ファイナンスの『本来、出資法上で認められた範囲内で、消費者に同意された利率を課すことは、適法とされるべき』。(PDF)と、金融庁の貸金業制度等に関する懇談会に意見書を提出した。 さらに、『米国の金融機関や投資家のロビイスト団体が貸付上限金利の引き下げに反対し、与謝野馨金融担当相らに書簡を送ったほか、米財務省も日本政府に非公式に見直しを打診しているという。』との報道(NIKKEI NET、06年8月26日、 神戸新聞06年8月24日)などから、アメリカの要求は、利息制限法の上限金利の引き上げである。 この背景には、大手消費者金融のレイクはGEコンシューマー・ファイナンスの傘下であり、他の大手消費者金融へも、アメリカなどの外国銀行や投資会社が株または貸付け等で出資している。 「グレーゾーン問題は自民党財政部長・責任者の一人としてさんざん議論した」と前置きして「貸す方も悪いけれども、借りる方も悪い」(参ー行政改革特別委員会:06年5月18日)と答弁した、前小泉首相の「置きみやげ」とならないように、出資法の上限金利を現行利息制限法の上限金利に引き下げることが重要である。 【貸金業者は資力がある】 自民党は、上限金利(25.5%)の特例と、利息制限法の上限金利見直しの根拠に、『貸金業者の経営基盤を確保する』をあげているが、消費者金融業者の役員報酬は高額で、例えば、アイフルの取締役17人の平均は約3570万円(合計6億円:役員賞与は16人に支給)。プロミスの平均は約3640万円(合計2億6000万円)。 さらに株主配当金は、アイフルは70億8千万円、プロミスは142億円(両社05年期)。 これらは、新たに「利息返還損失引当金」をアイフルは210億円、プロミスは237億円、積み立てても支払えた役員報酬であり株主配当金である。 また、アイフルの営業貸付け利息収益は4914億円で、その原価になる金融機関からの借り入れ金利は1.6%前後で377億円、したがって、粗利77%(4537億円)の高収益事業で、高額な役員報酬や株主配当を支えている。 新規参入の銀行系消費者金融(モビット、アットローン、キャッシュワンなど)は既に貸し付け金利を18%以下で営業しているところもあることからみて、貸金業者は、充分な資力があるといえる。 【上限金利の引下げは国民の願い】 県市町村からの「貸金業制度等についての意見書」は、3ケ月間(06年1月4日ー4月7日)で183自治体にのぼり、9月20現在、910自治体になっている。 意見書の内容は、 1.利息制限法の制限金利を、市場金利に見合った利率まで引下げ 2.出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで引下げ 3.貸金業規制法第43条(みなし弁済)規定の廃止 4.日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利の廃止 などを訴えている。 国民の願いは、貸金業者保護ではなく、債務者保護です。 【相談して下さい、必ず解決します】 全国クレジット・サラ金問題対策協議会の宇都宮健児弁護士は「相談して下さい」「ヤミ金に払う必要なし」「死なないで」「必ず解決します」と訴えています。一人で悩まず、まず相談しましょう。また、現在、生活資金や営業資金で悩んでいる方は、公的融資制度(PDF)を利用しましょう。知人で悩んでいる方に、以上のことを知らせて下さい。 利息制限法が1877年(明治10)制定され、1917年(大正8)に改正(利息は最高15%、最低10%:銀行貸出金利8%)、1954年に廃止、同年現行利息制限法(利息は最高20%、最低15%:銀行貸出金利9%)と出資法(利息は109.5%)が制定された。そして今、消費者金融業者への銀行貸出金利が1.6%の時に、利息制限法の金利区分を引上げようとしている。 今必要なのは、利息制限法の上限金利を引き下げて、出資法の上限金利を利息制限法に一致させるべきである。利息制限法制定時の「金融の面における経済的弱者を保護するための社会政策的立法 」の精神(54年3月26日、衆ー法務委員会)が名実とともに実現されるには、後、何年必要なのだろうか。 【サラ金返済解決のために】 クレジット・サラ金・商工ローンの高金利引き下げを求める全国連絡会 全国クレジット・サラ金被害者の会 夜明けの会 【公的資金の案内】 生活福祉資金(全国社会福祉協議会) 生活福祉資金の種類(総務省資料) 東京都中小企業従業員生活資金融資制度のご案内 中小企業制度融資概要 (埼玉県) 中小企業制度融資目的別適合資金検索のページ(埼玉県) 国民生活金融公庫 利息制限法で規定する利率を超えた借入金の返済費用の融資(越谷市) セーフティーネットとしての貸付制度(PDF) (金融庁の貸金業制度等に関する懇談会:資料) その他、各都道府県、市町村にご相談下さい。 【参考資料】 金融庁の貸金業制度等に関する懇談会報告資料 「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」と「座長としての中間整理」における各論点の対照表(PDF) 日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書(2005年12月7日)(PDF) 在日米国商工会議所意見書(PDF) アイフル:有価証券報告書 アコム:有価証券報告書 プロミス:有価証券報告書 武富士:有価証券報告書 レイク 裁判所判例 国会議事録 法令データ提供システム:利息制限法(54年5月15日) 法令データ提供システム:出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(54年6月23日)(出資法) 法令データ提供システム:貸金業の規制等に関する法律 (83年5月13日) 各新聞社のWEBサイト |