大阪市が今月下旬にもテントの強制撤去に踏み切ろうとしている東住吉区の長居公園で、ホームレス生活をしている4人が10日、弁明書を同公園を管理する大阪市南部方面公園事務所に提出した。強制撤去をしないよう求めると同時に、現在の場所にこだわっているわけではないこと、撤去する場合には代替地を用意することなどを要請している。だが、市に応じる気配はなく、事態はこう着している。
この日、現場を訪れた、ホームレス問題に詳しい静岡大学の笹沼弘志教授(憲法学)に現状の分析と、法的な見解などを聞いた。
──長居公園での現状について
「市が行政代執行(強制撤去)をするには、公園の適正な利用を妨げられていることが大前提になければならないわけですが、見たところ広い公園の一角で少数の人たちが、しかも地域の人たちとも交流しながらひっそりと暮らしている様子を見ると、それ(公園の適正な利用の妨害)は、あてはまらないと思いますね。あえてテントを撤去する必要はないと思いますね」
──大阪市がやろうとしている強制排除の措置について
「2002年に制定されたホームレスの自立の支援等に関する特別措置法11条に基づいて進めようとしていますが、それには次の要件を満たしていなければなりません。1つは公園の適正な利用を妨げていること、2つ目は自立のための支援の連携策をとること、3つ目は必要最低限の措置でなければならない、ということです。しかし見たところ、撤去をしてバリケードを作ってしまうと、それこそ「適正な利用」ができなくなります。1996年に東京の新宿西口地下道でダンボールハウスの撤去が行われたのですが、この時は法律で必要な手続きが取られず、清掃作業という名目で撤去されました。こちらの場合は、当事者たちが他の場所に移ってもいいと言っているのに、それを市が受け入れないという形になってしまっています」
──手続きが進められていることについてのアドバイスを
「先ず当事者たちと話し合いの場を持つべきだと思います。公園の適正な利用を図るというのであれば、そのために公園の中の別の場所に移動するとか、もっと整理整頓してくれとか、幾つかの方法があると思います。昨年、東京の代々木公園でやはり撤去が行われましたが、この時は公園の中の目だたないところに代替地が用意されました。長居公園の場合、行政の側はベンチで寝ているような本当に援助の必要な人のためには何もせず、単なる排除のためにやろうとしているとしか思えません。本当に援助が必要な人たちには何もせず、排除だけをしようとしているのは、行政側の非常に差別的な扱いに見えます。行政側は当事者とじっくりと話し合って問題解決の方法を探るべきで、それがなされていないことについては、反省が求められると思いますね」
このように、笹沼教授は大阪市の手続きが法的要件を満たしていない可能性を指摘しており、強制撤去の法的な根拠が薄いことが浮かび上がってきた。また、昨年の代々木公園では代替地が用意されたという指摘は、大阪市との違いを際だたせている。
教授は、これまで「自立支援策により他の安定した居住の場所に移転する条件が整わない限り、必要な措置は取れないのであって、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法『適正な利用のために必要な措置』の規定は、強制排除を正当化したものというより、排除を原則禁止したものと言うべきである」(「賃金と社会保障」2006年4月下旬号より)と主張している。
【参考】ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法第11条 都市公園その他の公共の用に供する施設を管理する者は、当該施設をホームレスが起居の場所とすることによりその適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする。
参照サイト:ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法
(山本ケイ)
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