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東京都知事選挙の争点とされた築地市場の移転問題。移転先の豊洲(江東区)は東京ガスの都市ガス製造工場跡地で、環境基準を大幅に上回る毒性(ベンゼン、シアンなど)が土壌に含まれていることが明らかになっている。 豊洲への移転をかたくなに進める石原慎太郎知事が再選されたことで、「食の安全・安心」を心配されている向きは少なくないことだろう。 ところが国政の場でブレーキをかける手段がまだ残されていた。10日、衆議院環境委員会で民主党の川内博史議員が環境省と農林水産省を追及した。移転に反対する築地の仲卸業者で作る「市場を考える会」の幹部が同委員会を傍聴し審議の行方を見守った。筆者は同行取材した。 土壌の有害物質から国民の健康を守る法律として「土壌汚染対策防止法」がある。 「ベンゼンが環境基準の1500倍、シアンが490倍」(東京ガス発表の数値に基づく)も含まれている豊洲に鮮魚や野菜の市場を持っていくことは、法律の趣旨に反する。 ところがこの法律には抜け穴がある。豊洲を指定区域からはずすために抜け穴が設けられたのだ。「土壌汚染防止法・附則第3条」である。この条項は「法律の施行以前に使用が廃止された土地には同法を適用しない」というものだ。 土壌汚染防止法が施行されたのは2003年2月。東京ガスが豊洲の土壌汚染を発表したのは2001年1月のことだった。 環境庁(当時)は豊洲の土壌汚染を知りながら「附則3条」を制定したことになる(言い方を変えれば、知っていたから抜け道である「附則3条」を設けた)。川内議員はこの点を追及した。 環境省の寺田達志審議官は「法制上の整備だった」と説明した。 だが、川内議員は「附則3条は法制上の技術上の問題ではなく政策的(政治的な意図)に設けられた」とする内閣法制局の証言を突きつけた。 さらに立法化の過程で「環境庁と東京都の間で綿密なやりとりがあったのではないか」「文書があれば提出して下さい」と迫った。 寺田審議官は「豊洲のことを把握した中で立法がなされたことは事実」「立法にあたっては様々な地方自治体と意見交換し、東京都とも綿密な連絡をとっていた」と認めた。 川内議員の追及は農水省にも及んだ。食料(築地は魚に加え野菜・果物も取引されている)を扱う市場に関する問題なので農水省の管轄となる。 農水省が築地市場の豊洲への移転を定めた2005年の整備計画は、「食の安全・安心」が基本方針に盛り込まれている。 ところがこの整備計画を審議する「食糧総合分科会」のメンバーには、科学的知見を有するメンバーが入っていなかったのではないか、と川内議員が迫った。 農水省の佐藤和彦・総合食料局次長は「土壌汚染の専門家は入っていない」と認めた。 川内議員が農水大臣と石原都知事を環境委員会に招くことを要望して、10日の環境委員会は閉会した。 同委員会を傍聴した「市場を考える会」の山崎治雄代表は次のように感想を話した。 「『附則3条』は豊洲のために作ったような法律だ。寺田(環境省審議官)の答弁には怒りを通りこした。これが我々の生活を脅かしているのか。政府は食の安全・安心を考えているのか。他人事のように聞こえた。こんなもんが政府なのか」 日本の近海沿岸はもとより世界の海の魚が荷卸される築地市場。競り落とされた鮮魚は各地の魚屋、スーパーに並ぶ。そもそもが、築地移転問題は一自治体の東京都だけではなく、国政レベルの問題だったのだ。輪郭がはっきり見えてきた。 ◇ ◇ ◇
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